木村和久の「新・お気楽ゴルフ」連載◆第26回 最近の女子プロゴルフ界は、群雄割拠と申しましょうか、週替わり(トーナメントごと)で優勝者が異なり、そのなかにはツアー初優勝を飾るニューフェイスもいたりして、実にエキサイティングです。「大スター不…

木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第26回

 最近の女子プロゴルフ界は、群雄割拠と申しましょうか、週替わり(トーナメントごと)で優勝者が異なり、そのなかにはツアー初優勝を飾るニューフェイスもいたりして、実にエキサイティングです。「大スター不在」と言われながらも、海外で活躍する選手も多数おり、層の厚さは相当なものです。

 加えて最近は、トーナメントからこぼれた選手たちがBSやCSのゴルフ番組で存在感を示したり、はたまた大手ゴルフチェーンがプロと気軽にラウンドできるプログラムを組んだりして、今や女子ゴルフ界は百花繚乱、多様性に富んだ活躍を見せています。

 それにしてもなぜ、女子ゴルフ界はこれほど脚光を浴びているのか、多方面から検討してみましょう。

(1)女子ゴルフ界の"推し活"化
 4月末に行なわれたフジサンケイレディスでは、最終日に安田祐香選手が一時単独トップに立ちながら、17番、18番と連続ボギー。惜しくも2位タイに終わりました。

 あどけないルックスの安田選手は、細い腕に細い足、細いウエストで一生懸命ラウンド。その姿に、オジさんたちは感情移入してしまうんですね。

 安田選手のドライバーの平均飛距離は230ヤード前後。ツアープロのなかでは60位前後と、決して飛ぶほうではありません。だからといって、優勝を狙えない飛距離ではなく、マネジメントやさまざまな技術を駆使して奮闘。日本人は判官びいきですから、華奢ながらそうやって頑張っている選手を応援してしまうのでしょう。

 これぞ、オジさんの"推し活"化の現れです。

 翻って、オヤジ世代は「こういう子がうちの娘だったらな」みたいな視線で女子のスポーツを見たりしています。フィギュアスケートで言うと、"国民の娘"的な存在の浅田真央選手などがいい例でしょう。

 今のゴルフ界で、そんな将来の大物となる予感をひしひしと漂わせているのが、馬場咲希選手です。現在18歳の高校生。昨年、全米女子アマチュア選手権で優勝しており、すでにスーパースターの風格を醸し出しています。

 何を隠そう、その馬場選手見たさに、昨年トーナメント会場に押しかけました。身長175㎝という長身を生かしたドライバーショットは、270ヤード越え。とんでもないパワーとオーラに、オジさんは圧倒されまくり。「こんな子がうちの娘だったら、ほんと家計が助かんだけどな」......って、そっちかよ。

 プロゴルフのファンは、男子も女子も男性が多いです。つまり、ゴルフファンは自らラウンドする人が多数を占めています。だから、選手のミスは見ているほうにもしかと伝わって、気持ちを共有できるんですね。

 ラフにボールを食われれば、「今の時期のラフは長いから大変だ」と選手の心情を汲み取ることができます。また、女子の場合、自分と飛距離が近いから「そこは刻みだろう」とか、「そこは狙え」などと、胸の内を同一化できます。

 そうやって、オヤジのアマチュアゴルファーが日本の女子ツアーを支えている――そんな構造になっているのではないでしょうか。



女子プロゴルフツアーはアマチュアゴルファーのオジさんたちに支えられている面はあるかもしれませんね...。

(2)BS・CSで活躍する女子プロ
 華やかなプロの世界ですが、現実は厳しいものがあります。女子のプロテストの合格率は約3%で、毎年20人ほどしか受かりません。そのうえ、合格してからシード権を獲って、ツアーに参加できるのはほんのひと握りです。

 それでも近年は、下部ツアーとなるステップ・アップ・ツアーの試合数も増加。多くの選手が活躍できる場が増えているのは確かです。さらに、BS放送やローカルTVにはゴルフ番組がたくさんあって、そこで活躍の場を見出しているプロもいます。

 今をときめく渋野日向子選手も『ゴルフサバイバル』(BS日テレ/毎週金曜日21時~)出場者ですから、"第二のシブコ"が今、BS番組に出ているかもしれない。そういう"青田買い"の意味で見るのも楽しいです。

 その他、ドラコン女王の高島早百合選手や、幼少の頃はタカラジェンヌ志望で、ド派手衣装&メイクで知られる臼井麗香選手など、個性的な選手たちがさまざまなゴルフ番組に出演。番組を盛り上げており、見ていて非常に楽しいです。

 キャラクターを確立すれば、ツアー以外のゴルフのお仕事もくる。それはそれですばらしいことですね。

(3)プロアマ体験が気軽に
 最近、プロゴルファーの仕事の裾野は一段と広がっています。そのひとつが、アマチュアゴルファーとのラウンドです。今やプロの選手と、ものすごく簡単に、それも格安料金で同伴プレーができるようになって、「びっくりしたなもう」の世界です。

 今から30年ぐらい前は、プロゴルファーはとても遠い存在でした。一緒にラウンドするなんて、トーナメント前日のプロアマ競技に呼ばれて参加するぐらいしかないと思っていました。

 念のために言っておきますが、練習場で教えていて一緒にラウンドしてくれるのは、レッスンプロです。ここで言っているのは、プロテストに合格したトーナメントプロのことです。

 かつて私は、1994年のアメリカン・エキスプレスグランドスラムというシニアトーナメントのプロアマに呼ばれて参加させていただきました。生まれて初めてのプロアマ戦で、ゲストプロはアーノルド・パーマーに、リー・トレビノ......って、歴史的な偉人じゃん!

 しかも、前の組にトレビノがいる組み合わせ。これ、どういうことかわかります? プロアマとはいえ、何千人もの人がコース脇に立って見ているわけですよ。「いや~、この人たちの前で打つのか」「群衆に打ち込んだら、どうしよう」と、ビビりまくりました。

 けど実際は、恐れていたことは起こりませんでした。トレビノが打つと、ギャラリーはそのままトレビノの組についていって......。残されたギャラリーは数十人もおらず、むしろポツンと取り残された感じでした。

 以降、地味に18ホールを回りましたが、同組で一緒に回ったプロがいろいろとアドバイスをしてくれて、楽しい一日を過ごすことができました。

 その後も何回かプロとラウンドする機会がありました。そのつど、すばらしい経験をさせてもらって、スコアメイクのヒントをたくさんいただきました。

 そんな遠い存在だった"プロアマ"が、近頃は全国津々浦々で気軽にできるのですから驚きです。

 現在、ネットでエントリーできるのがPGMの「withGolf」という企画です。先日、実際に参加したので、その内容を紹介します。

 PGMには全国に150名前後の契約プロがいて、所定の日程で各プロが担当するコースでのラウンドに誰でもエントリーできます。料金は約2万円~3万円。これは、プレーフィ込みですから、滅茶苦茶安い価格設定だと思います。

 内容は、プレー前に参加者とミーティング。問題点やクセなどをヒアリングして、ラウンドの際に軽くアドバイスをいただけます。

 もちろん、アドバイスなしでプロと回りたい、というのもありです。個人的にはいいアドバイスをいただいて、スランプを克服することができました。

 このプログラムに参加しているプロは男性もいますが、8割は女性プロ。私は女性プロと一緒にラウンドして、飛距離はどっこいどっこいだろうと思いきや、ともにナイスショットした時でも、おおよそ20ヤード先にプロのボールがありました。

 でも本当に違うのは、そこから先。そういったプロのショットを目の前で見るだけでも、すごく勉強になり、刺激を受けました。日頃は先輩や練習場のオヤジのアドバイスを聞いても無視していたのに、プロの話だと、素直に耳を傾けられますから、不思議です。

 はっきり言って、ふつうに10回ラウンドするなら、一度はプロと回ったほうがいいと思いますよ。10回のラウンド以上に得るものがありますから。

 とまあ、このようにプロも試合の合間にアマチュアとラウンドして、"アルバイト"ができる。双方、とてもいい関係が築けているのではないでしょうか。

 なんか、ゴルフ業界全体が円熟期を迎えているような気がします。いい時代にゴルフができて、幸せですね。