現地で練習を行なった錦織圭。自己最高となるベスト8以上を目指す 錦織圭は3年連続で、フィジカル問題を抱えてのウインブルドン入りとなった。 6月22 日に、前哨戦のATPハレ大会2回戦で、腰を痛めて試合を途中棄権していた。突発的なケガの原…


現地で練習を行なった錦織圭。自己最高となるベスト8以上を目指す

 錦織圭は3年連続で、フィジカル問題を抱えてのウインブルドン入りとなった。

 6月22 日に、前哨戦のATPハレ大会2回戦で、腰を痛めて試合を途中棄権していた。突発的なケガの原因について「わからない」と、錦織は釈然としない表情を見せた。

 実はハレでは3年連続の棄権だった。2015年大会では、準々決勝で左ふくらはぎを痛めて棄権。2016年大会では、1回戦で左わき腹の腹筋を痛めて2回戦を棄権した。

 今年の棄権後、しばらく動けなかったという錦織は回復に努め、練習を再開したのは6月27日から。ゆっくり調整してきたが、幸い今のところ痛みによって動きが鈍るということはなく、テニスのプレー内容は決して悪くない。

「ほぼ治ってきている。多少の不安はもちろんありますけど、大丈夫だと思います」と、錦織は実戦に耐え得るプレーレベルであることを強調した。

 現地での練習を見守ったマイケル・チャンコーチが「よくなってきているので、あと数日で準備は整うと思う。フィジカルはとてもいい方向に向かっている」と語れば、ダンテ・ボッティーニコーチも「1時間の練習でも問題なかったので、あとは試合でもフルでプレーできるといいね」と1回戦に間に合うことを確信していた。

 ただし、錦織が背中から腰にかけてテーピングをしてのプレーであったことは指摘しておかなければならない。グラス(天然芝)コートでの試合では、プレー中にアクシデントで足が滑って転倒してしまうことがよくあるが、錦織は細心の注意を払って、突発的な痛みを再発させないようにしなければならない。

 今回のウインブルドンで錦織(ATPランキング9位、6月26日付、以下同)は第9シードになったが、グランドスラムで上位8シードに入れなかったのは、2014年のUS(全米)オープン以来となる。

「やっぱり8シード以内にいたい気持ちはあります。8シードから外れると、若干不安というか、ドロー運にもよってしまう。なるべく優位に進めるには、8位以内に入っておかないといけない。でも、第9シードでも戦うしかない。置かれた状況で頑張るしかない」

 そして、錦織は大会ドローのトップハーフに入り、1回戦の対戦相手はマルコ・チェッキナート(105位・イタリア)で、初対決となる。

「片手バックでフラットも打てる。どちらかというと、クレーコーター(クレーが得意な選手)ぽいイメージがある。僕もコーチも、そんなに直接見ていない。情報を集めながら、試合中に試行錯誤しなければいけない部分はあると思う」

 こう語る錦織が勝ち上がると、2回戦では、ジュリアン・ベネトー(81位、フランス)と予選勝者のセルゲイ・スタコフスキ(122位、ウクライナ)の勝者と対戦する。ベネトーとの対戦成績は錦織の4勝1敗で、スタコフスキとは錦織の5勝2敗だ。

 さらに順当にいった場合、3回戦からシード選手同士の対戦が始まり、想定される3回戦では、第18シードのロベルト・バウティスタ・アグート(19位、スペイン)で、錦織の4勝0敗。4回戦では、第7シードのマリン・チリッチ(6位、クロアチア)で、錦織の7勝6敗。チリッチは前哨戦のATPクィーンズ大会で準優勝して、自己最高の6位となり好調を維持している。

 ここまで突破した場合、順当なら準々決勝ではウインブルドンで2回優勝している第4シードのラファエル・ナダル(2位、スペイン)で、錦織の2勝9敗。ウインブルドンでは過去2年のグラス大会での成績を重視する独自のシード制を採用しているため、ナダルのシードは最新ランキングより下となった。

 グラスコートではボールが滑るようにしてバウンドし、フットワークもスリップする可能性があり、普段使わない筋肉を使うため疲労度が高いといわれる。しかし、ボッティーニコーチは、グラスでの錦織のフットワークに問題はないと太鼓判を押す。

「多くの選手がグラスコートよりハードコートやクレーコートでの動きの方がいい。でも、圭はグラスコートでも他のサーフェスと同じようにできる。圭ほど動きのいい選手は他にいないよ」

 これまで錦織はグランドスラム4大会の中で、ウインブルドンだけベスト8以上に進んだことがない。最高成績は2014年と2016年のベスト16だ。

「ウインブルドンでいい成績を残したいという気持ちは毎年ある。その気持ちを常に持って、タイミングが合えば、結果も出てくると思う。毎年チャレンジ精神を持ってやりたいです」

 錦織の1回戦は大会初日の7月3日に行なわれる予定だ。まずは、第9シードを守ってベスト16に進むことが、錦織の第一目標になるのではないだろうか。
 
 チャンコーチは「ここ(ウインブルドン)では不確定な要素をはらんでいるものの、圭が1試合ずつ戦っていく中で、いいプレーができれば、過去の成績を超えてステップを踏み出すことができるはず」と語る。ボッティーニコーチも、「健康さえ維持できれば、圭のポテンシャルが発揮されて、(ウインブルドンでの)ベスト8が見えてくる」と期待を寄せる。

 ふたりのコーチが話すように、試合の中でフィジカル問題が悪化せず、プレーを重ねながらテニスの内容が上向くならば、ウインブルドンで初のベスト8への扉が開かれていくはずだ。