ブリオベッカ浦安 3 - 2 筑波大 サッカー天皇杯1回戦/13時KO 市原臨海競技場 2023.5/21(日) <得点者>  13分村越(ブリオベッカ浦安) 22分内野(筑波大学) 34分伊藤純也(ブリオベッカ浦安) 64分角(筑波大学)…

ブリオベッカ浦安 3 - 2 筑波大


サッカー天皇杯1回戦/13時KO 市原臨海競技場 2023.5/21(日)

<得点者> 
13分村越(ブリオベッカ浦安)
22分内野(筑波大学)
34分伊藤純也(ブリオベッカ浦安)
64分角(筑波大学)
79分林(ブリオベッカ浦安)

「(サッカー日本代表・伊東純也と同じ名前のサッカー選手って)もう聞かれすぎて、いつも。はい(笑)」

試合後のミックスゾーンで微笑ましいエピソードを披露してくれた社会人フットボーラー・伊藤純也。次節の意気込みを尋ねると「藤のほうの伊藤純也も覚えてもらえるように頑張りたい」と真っ直ぐに笑顔をみせた。

サッカー天皇杯1回戦が21日、千葉・市原臨海競技場で行われ、ジャイキリ常連チームとも言わしめた大学サッカー強豪・筑波大が1回戦で敗退し、JFLのブリオベッカ浦安が2回戦へ駒を進めている。

浦安・都並監督

スタジアムの場内インタビューで「雑草魂」を口にした浦安の都並監督は、ミックスゾーンに汗だくのジャージ姿で現れ「選手たちが良くやってくれた。ファン・サポーターの後押しもあった」とも語り、自身の采配ミスについて触れるなど人間味あふれる言葉で、ぶら下がり(囲み取材)メディアを沸かせるシーンも印象的だった。

改めてやっぱり天皇杯という大会には、独特の雰囲気がある。

昨年、ひたちなかで行われた天皇杯1回戦では、両チームとも僅かな明暗を分けた戦いで、筑波が延長PKの末に浦安から勝利をもぎ取った。しかし今年は臨海に乗り込んだ筑波が「筑波らしさ」を90分で表現しきれず、無残にも試合終了の笛がなってしまう。試合開始早々から浦安ペースで進み、固さが目立った筑波は幾度のチャンスを生かしつつも、らしさが出しきれないまま、切り替えや集中のチームワークが勝負の分かれ目となった。

浦安の都並監督は試合後の会見で選手たちを労い、スタジアムまで足を運んだファン・サポーター564人に感謝を述べた。そして、天皇杯2回戦・マリノス戦へ向けこんな言葉を残している。

「思いっきりぶつかって(マリノスから)少し痛い奴らだなと思って貰いたい。全力で頑張ります」

昨年のひたちなかでは「(私にとっての恩師)ネルシーニョさんとやりたかった。(天皇杯2回戦の相手になるはずだった)柏に(浦安のイレブンやファン・サポーターを)連れて行きたかった」と痛恨の想いを明かしていた都並監督。

もしもサッカーの神がいるのならば、サッカーの神はきっと気まぐれだ。1年前の浦安は、千葉県代表として90分、休む間も無く走り続け戦い抜いたが、勝利は掴めないまま次の試合に向けて歩き出さなければならなかった。1年の月日が経ち、メンバーもガラリと変わったチーム体制で、リーグ戦を苦戦するなかバッドコンディションで迎えた天皇杯。浦安は戦術も経験値も1年前と全く違う試合で挑んだゲームなのに、最後の最後でさらりと勝利をもぎ取ることができてしまう。都並監督は「(昨年と)同じ全員サッカーがしたい」のに「僕の伝え方が悪くて、同じ全員サッカーできない」と悔しがるものの、清々しい笑顔は溢れ出している。

一方、筑波・小井土監督はリーグ戦で負けなしの好調を天皇杯というたったひとつの大会で「リズムを崩されて」しまい、突然の切り替えが要求される事態で、チームへの危機感を感じさせる状態になってしまう。

小井土監督の表情はピッチ内外で固く、険しささえある。なんとなく、という表現でおこがましいが共にサッカーを知り尽くす指揮官・二人の表情は、対極だった。

筑波大・小井土監督

あっという間に今年もサッカー天皇杯・1回戦は幕を閉じた。最高に熱苦しくて、びっくりするほど泥臭くて、汗だくで大人達がまるでサッカー少年のように雄叫びをあげたり、子供のように肩を落としたり。面白過ぎるサッカードラマが目の前で体感できる天皇杯、今や当たり前の全試合ネット配信や中継やダイジェストがリアルタイムで無くとも、やっぱり今年も目が離せない大会だ。

天皇杯は色々なカテゴリーの蹴球人たちによるドラマが、最高に面白い。いや、極端な表現で言い換えるのならば、天皇杯はメディアにほとんど取り上げられない初戦が、最高にドラマチックでエキサイティングだ。一発勝負に賭けるプロ・アマ全てのフットボーラーとクラブ・地域、ファン・サポーターが一つになって、サッカーの聖地・国立を目指す戦いが全国のスタジアムで堪能できる。

次の戦いは、数週間後の2回戦。どのチーム・クラブも殆ど時間や戦力に余裕などない。明日からまた仕事や勉学と両立しながらサッカーに向き合う毎日が、当たり前の日常としてやって来る。サッカーの神は気まぐれだ、と誰もが天皇杯のピッチで体感しているはずだから。勝利の余韻に浸っているチームや選手などは存在しないだろう。

文/スポーツブル編集部