ロンドン、リオデジャネイロ、東京五輪と卓球女子団体で3大会連続メダルに輝いた卓球の石川佳純(全農)が、5月18日に都内で引退会見を行った。

会見では、23年間の競技人生を振り返り、今後の夢について語った。

また、会見の冒頭で引退を決意した理由について、「自分自身やり切ったと思えたからです。今日はとても晴れやかな気持ちです。こうして笑顔で今日を迎えられることをとても嬉しく、そしてありがたく思っています」と語った。

■石川佳純 引退会見

ーー「やり切った」という思いはいつ頃出てきた?

3月のWTTシンガポールスマッシュが終わった時点で、4月の中国でのWTT2大会に出場することが決まったんですが、その時に「次の2大会で最後にしよう」という決意を固めました。はっきりと引退を決意したのはその時で、それまでも今年に入ってからは毎試合「これが最後になるかもしれないな」という気持ちでプレーしてきました。

ーー引退発表時に「現役生活でたくさんの夢が叶えられた」と振り返っていたが、その夢とは?

まずは夢舞台であったオリンピックに3回出場できたこと。小学生の頃は夢だったオリンピックでのメダルが目の前の目標となってきて、それを一つ一つ必死で追いかけてクリアしていくという楽しさを卓球を通して学びました。

そして国際大会という世界の舞台で約10年間、世界のトップランカーと戦えたことは誇りに思います。

ーーこの3月での引退を決意した理由は?

今まではオリンピックが終わった時点ですぐに次のオリンピックというのを口に出して目標にしてきましたが、今回は東京オリンピックが終わって目の前の1試合1試合を目標にやってきたので、自分自身もいつが終わりになるのかが分からなくて、その中で5月の世界選手権(世界卓球)に出場できないことが決まって、自分としても良いタイミングなのかなと思いました。そこで現役引退を決意しました。

ーー後輩たちの突き上げがある中で、諦めずにやってこられた理由はどんなところにある?

常に自分自身に向き合うことを意識してきました。特に現役生活が長くなればなる程、苦しい時間が増えることも多かったんですが、「そこから逃げない」という自分なりのポリシーは持っていて、そこを最後まで果たせたことは嬉しく思います。

また、プロとして18歳、19歳の頃から活動させて頂いてたくさんの方々に応援して頂きました。その中で常に自分自身の100%を出すことは自分にとっての最低限の責任かなと思って頑張ってきました。

ーーオリンピック3大会を振り返って

ロンドンは日本卓球界初のメダル獲得をすることができた団体の銀メダル。リオは悔しい思い出の方が大きくてシングルス1回戦で負けてしまったんですが、でも最終的には女子団体で銅メダルを獲得することができたという思い出です。東京オリンピックでは団体戦で金メダルを目指してチーム一丸となって戦ったことがすごく思い出深いです。

ーー今後どういった活動をしていきたい?今後の夢は?

一つは、全国47都道府県のサンクスツアー(卓球教室)で全国各地を回ること。もう一つは練習や遠征で中々今まで勉強をする機会がなかったので、新しいチャレンジとして勉強もしてみたいです。

現役時代は1日のほとんどを練習の時間が占めていたので、これからはどんどん新しいことにチャレンジしていきたいです。

ーー子供たちへの指導は?

スポーツや卓球の楽しさは直接会って一緒に卓球をすることで伝わるかなと思うので、今まで以上にそういう活動はたくさんしていきたいです。

ーー卓球以外の競技の方達と関わっていくことは考えている?

それはやってみたいです。ありがたいことに卓球をやっていない子供たちでも私のことを知って下さる方々もいるので、それを活かしてスポーツの魅力を伝えていきたいなという気持ちを持っています。

ーー中国語も堪能だが、語学力を活かして何かやりたい思いはある?

中国語を覚えたことで中国のファンの方や選手とも交流することができて、経験の幅がすごく広がったなと感じています。

せっかく中国語を少し覚えることができたので、世界チャンピオンを目指している中国や日本、全世界の子供たちで練習試合や試合ができる機会が増えるとすごくいいなと思っています。

ーーアスリートとして、人として、心がけていたことは?

小さい頃に憧れていた選手がたくさんいたんですが、自分自身が大人になって日本代表としてプレーさせてもらうようになって、成績はもちろんそれ以外の場面でも「こういう選手になりたい」と思ってもらえるような自分でいたいなと思いました。

また、そういう気持ちが自分自身を成長させてくれました。苦しい時期や辛い時期はたくさんあったんですが、そういう場面が自分を人としても選手としても大きく成長させてもらえたかなと思います。

ーー苦しい時期から一歩踏み出す力は何だった?

「頑張って努力をした結果、良い成績が出る」という言葉があると思いますが、私自身は長い間やっていると中々そういう風に思えないこともあって、頑張って成績が出ていた時より頑張ってもそれ以上の結果が出なかったり。

でもそこからがスタートなのかなと思った時期もあって、その中で学んだことは続けることの大切さです。「どんなに失敗しても何回でもチャレンジ」という言葉に励まされました。それを大切に活動してきました。

ーー来年のパリ五輪に向けて後輩たちにどんな思いを託す?

今も日本代表選考会を選手たちが戦っていますが、精神的にも肉体的にもすごくハードだと思います。それを勝ち切った選手だけが立てるオリンピックという舞台、さらにそのオリンピックでもまた厳しい戦いが待っています。大変な時間ではあるんですが、今しかできない素晴らしい時間でもあると思うので、みんなには後悔のないように思う存分やり切って欲しいなと思っています。