群馬県の群馬サイクルスポーツセンター(群馬CSC)で、JBCFロードシリーズの最上位に位置するJプロツアーの第6戦「東日本ロードクラシックDAY1」が4月29日、開催された。57回目の開催となる今年の「東日本ロードクラシック」は、週末の連戦…

群馬県の群馬サイクルスポーツセンター(群馬CSC)で、JBCFロードシリーズの最上位に位置するJプロツアーの第6戦「東日本ロードクラシックDAY1」が4月29日、開催された。57回目の開催となる今年の「東日本ロードクラシック」は、週末の連戦となり、初戦のこの日はDAY1にあたる。昨年の同大会は、日本サイクルスポーツセンターで開催されており、群馬CSCでの開催は2年ぶりだ。
「東日本ロードクラシック」は、前戦の「西日本ロードクラシック」同様、Jプロツアーの中でもステータスの高いレースレーティング「ゴールド」に指定されており、年間のシリーズ戦の中でも2番目にポイント配分が高い。群馬CSCの6kmサーキットは非常にメジャーな会場であり、走り慣れた選手が多いが、この日のレースは、サーキットを逆に回り、25周する150kmに設定された。今季最長距離となるロングレースだ。逆回りとすることで、群馬CSCの名物でもあり「仕掛けどころ」だった「心臓破りの坂」が下り区間と変わる。スタート後、軽く上り、下り基調へ。後半はゆるやかに上り、フィニッシュを迎えるというサーキットとなる。コースとしての難度は下がるが、勝つためには、いかに仕掛け、展開していくかを、選手サイドが作らなくてはならない難しいコースになったと言えるのかもしれない。





この日のレースでは6kmサーキットを逆回りで使用する

当日は初夏のような太陽が降り注ぐ、暑さを感じるほどの好天に恵まれた。
スタートラインの最前列には、個人総合成績首位の赤いリーダージャージを着た岡本隼(愛三工業レーシングチーム)と、U23首位の岡本勝哉(チームブリヂストンサイクリング)が並ぶ。そして、チーム総合首位のチームブリヂストンサイクリングのメンバーが、そのまわりを固めた。



岡本隼(愛三工業レーシングチーム)とU23首位の岡本勝哉(チームブリヂストンサイクリング)、チーム首位のチームブリヂストンサイクリングを先頭にスタート

スタート後は、選手が積極的に仕掛け合い、アタックと吸収を繰り返す。大きな動きが起こらないまま、5周回が流れて行った。
ようやく抜け出しが叶い、7名の先頭集団が生まれる。これまで何度もツアーの総合優勝を経験しているホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)や、若手の中でも勢いのある香山飛龍(シマノレーシング)、全日本優勝経験を持つ畑中勇介(キナンレーシングチーム)、今季好調のチームブリヂストンサイクリングから松田祥位、兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)、リーダーチームから渡邊翔太郎(愛三工業レーシングチーム)と実力者が揃っており、まだ序盤ではあるが、レースの行方を左右する重要な動きが起きた雰囲気が漂う。集団は順調に先行し、メイン集団との差を2分以上まで広げた。



7名が先行し、メイン集団との差を開く

この状況を見て、10周目に先頭6名への合流を図る追走が、メイン集団から飛び出した。ここには、重要な動きには必ず絡んで来る全日本タイトルホルダーの2名、入部正太朗(シマノレーシング)と山本元喜(キナンレーシングチーム)を筆頭に、佐藤健(愛三工業レーシングチーム)や加藤辰之介(イナーメ信濃山形)ら、計6名の選手が入っていた。



メイン集団から差を開く先頭集団の状況から、追走が生まれた

追走集団はきっちりとペースを刻み、13周目までに先頭集団に合流。この中から2名が遅れ、11名の先頭集団となった。結果、キナンレーシングチーム、愛三工業レーシングチーム、シマノレーシングが、それぞれ2名ずつを送り込む有利な展開に。



先頭集団とメイン集団の差は最大で2分40秒以上まで開いた

その後、今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)らが次なる追走集団を形成し、先頭集団を追った。1分を切る差まで追い上げたものの、その先を詰めることができなかった。



レース中盤、追走集団が形成された



メイン集団は愛三工業レーシングチームがコントロール

残り10周を切り、リーダーチームである愛三工業レーシングチームがメイン集団のコントロールを始め、渾身の力でペースアップを図る。主力チームが、戦えるメンバーを先頭に送り込んでおり、追い上げは厳しいという見方もあったが、追走集団を吸収、1分未満まで差を縮めた。



先頭を走り続ける11名の集団

「メイン集団による吸収と仕切り直し」というシナリオも見えてきたことを受け、先頭集団では次の動きが生まれた。

※レースはいよいよ終盤。次ページへ→

ラスト5周、キナンレーシングチームの山本と畑中が交互にアタックを始めた。足並みが揃わなくなった先頭集団は、ここから崩れはじめ、ペースが落ち、メイン集団との差が一気に縮まっていく。



山本元喜(キナンレーシングチーム)が飛び出す



畑中勇介(キナンレーシングチーム)がアタック。キナンの波状攻撃に先頭集団の均衡が崩れていく

残り4周。先頭集団から山本、トリビオ、加藤の3名が先行した。スプリント勝負に持ち込みたいチームブリヂストンサイクリングが、新たにメイン集団のコントロールを担い始め、集団を引き上げる。



先頭集団から山本元喜、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)、加藤辰之介(イナーメ信濃山形)の3名が先行

ペースアップした集団は、ついに先頭集団から遅れたメンバーを吸収、その前方で先行する3名を追った。



チームブリヂストンサイクリングがメイン集団の引き上げを図る

このままレースは、最終周回に突入する。先頭3名を追う集団の中では、各チームが、それぞれの思惑に基づき、次の展開に向けた準備も行っていた。加藤が遅れ、2名になってもなお、山本とトリビオは、逃げ切りをかけてゴールを目指した。
残り3kmを切ったところで、ついに先行する選手たちがすべて吸収され、ひとつの集団に。レースは振り出しに戻ったかに見えた。



逃げた山本元喜、トリビオの背後に集団が迫る

だが、その直後、トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)が狙いすましたアタックを繰り出した。ここに同チームのスプリンター孫崎大樹(キナンレーシングチーム)が、ぴたりと付き、ベテラン フランシスコ・マンセボ・ペレス(マトリックスパワータグ)も反応。この危険な動きを封じようと食らいつく。



カウンターアタックで飛び出したトマ・ルバ、孫崎大樹(ともにキナンレーシングチーム)とフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)

数名が反応。3名を追うが、追いついた後の展開が気になるのか、一瞬、けん制モードが生まれ、速やかなペースアップへの協調が図れない。この間に、3名はマンセボを先頭に最後の上りを駆け上がる。



渾身の走りで孫崎大樹をゴール前まで引き上げるトマ・ルバ(ともにキナンレーシングチーム)

ラスト200mで、ここまで孫崎を引き上げてきたトマが離れ、マンセボが先行。そして、ラスト100m。孫崎が加速を始めた。



孫崎とマンセボのマッチスプリントへ。後方には集団から追いついてきた選手が追い上げる

後方に迫るスプリンターたちも全力で駆け上がり、2名に迫るが、孫崎は一気にスピードに乗り、マンセボを引き離し、余裕のガッツポーズでフィニッシュラインを越えた。



スプリントで競り勝った孫崎。移籍後初勝利となった

今季の移籍後、期待されながらも、なかなか白星が上げられず、辛い時期が続いた孫崎にとっては、嬉しい初勝利。さらにJプロツアーとしても初勝利となった。
2位にマンセボが、3位には、後方から素晴らしいスピードで迫った岡本隼が入った。

序盤から連携したチームメイトから最後のタスキを受け取り、きっちりと役目を果たし、勝利を収めた孫崎は、喜びと安堵、達成感に満ちた明るい表情でインタビューに応じた。「チームメンバーがそれぞれの仕事をし、その中で脚力を貯めることができ、最後にしっかりと(勝利を)決めることができてよかった」と笑顔で語った。「時間はかかってしまったけど、最高の報告ができてうれしい。ここから勝利を積み重ねて、チームの強さを証明していきたい」と表彰台を締めくくった。
Jプロツアーリーダーは変わらず、この日、3位に入った岡本隼がキープ。U23のリーダーも岡本勝哉が守っている。



ジャージをキープした岡本隼(愛三工業レーシングチーム)と岡本勝哉(チームブリヂストンサイクリング)

翌日は、同会場でDAY2が開催される。同コースであっても、10周回60kmの短いレースとなり、異なる展開が見られることが予想された。

***************
【結果】
Jプロツアー第6戦 東日本ロードクラシックDAY1(150km)

1位/孫崎大樹(キナンレーシングチーム)3時間43分16秒
2位/フランシスコ・マンセボ・ペレス(マトリックスパワータグ)+0秒
3位/岡本隼(愛三工業レーシングチーム)+0秒
4位/中井唯晶(シマノレーシング)+1秒
5位/石原悠希(シマノレーシング)+1秒

【Jプロツアーリーダー】
岡本隼(愛三工業レーシングチーム)

【U23リーダー】
岡本勝哉(チームブリヂストンサイクリング)

画像提供:JBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)

***************
【Jプロツアー2023・レポート】
Jプロツアー第5戦・西日本ロードレースクラシック
Jプロツアー第4戦・第1回袋井・掛川ロードレースDAY2
Jプロツアー第3戦・第1回袋井・掛川ロードレースDAY1
Jプロツアー第2戦・第1回志布志クリテリウム
Jプロツアー開幕戦!鹿屋・肝付ロードレース