野田浩司氏「2回スライドも関係ない投球はすごい」■ヤクルト 1ー0 阪神(9日・甲子園) 阪神の3年目右腕・村上頌樹投手が開幕からの連続イニング無失点のセ・リーグタイ記録をマークした。9日のヤクルト戦(甲子園)に先発して6回までゼロに封じて…
野田浩司氏「2回スライドも関係ない投球はすごい」
■ヤクルト 1ー0 阪神(9日・甲子園)
阪神の3年目右腕・村上頌樹投手が開幕からの連続イニング無失点のセ・リーグタイ記録をマークした。9日のヤクルト戦(甲子園)に先発して6回までゼロに封じて1963年の中井悦雄投手(阪神)の31回に到達した。しかし7回、サンタナに一発を浴びて、新記録はならず。味方打線の援護もなく7回1失点で敗戦投手になったものの、阪神、オリックスで活躍し、日本記録の1試合19奪三振も達成した野球評論家の野田浩司氏は「末恐ろしい投手」と断言した。
またも好投だった。プロでは2軍で経験していたものの、1軍公式戦では初の本拠地・甲子園登板。2016年、智弁学園3年春の選抜で優勝投手になった思い出の聖地で躍動した。7回を103球5安打1失点。8奪三振で、与えた四球は1だった。雨の影響で先発予定が2度流れ、連続スライドによる中9日での出番。難しい調整の中、きっちりゲームをつくった。
野田氏は「2回スライドでも全然関係ないピッチングだったのはすごい。これまでに経験がないピッチャーが監督の期待に応える内容を出すなんて簡単なことではない。3回続けて緊張しなければいけなかったわけですからね」と称賛する。さらに、ここまでの村上の登板舞台が京セラドーム、東京ドーム、バンテリンドーム、神宮、甲子園とすべて違う点にも着目した。
4月1日のDeNA戦(京セラドーム)は2番手で1回1安打無失点、4月12日の巨人戦(東京ドーム)は7回無安打無失点のパーフェクト投球。4月22日の中日戦(バンテリンドーム)は9回2安打無四球無失点でプロ初勝利を完封で飾り、4月29日のヤクルト戦(神宮)は8回2安打無失点で2勝目。そして、この日のヤクルト戦(甲子園)と「どの球場で投げても同じような結果を出している。これもすごいですよ」とうなった。
2回に村上、サンタナに連打を浴びて無死一、二塁となったが、慌てない。オスナをフォークで三振、長岡、古賀は連続で捕邪飛に封じた。3回も1死から塩見に四球を出したが、青木を遊ゴロ併殺打で切り抜けた。要所はピシャリと抑えた。
「今日は絶好調ではなかったと思う。普通にいいなぁぐらいだったけど、バッターはそれでも打ちにくそうにしている。全般的に真っ直ぐに差し込まれていた。やはりボールがスピードガン以上にきているんでしょう」と野田氏は話す。打席に立って初めてわかる村上のボールのキレと威力。それはバッターの反応でもうかがえたというのだ。
「本当に低い所にボールが集まってくる」
加えて「びっくりするようなスピードがあるわけじゃないけど、本当に低いところにボールが集まってくるんで、審判もコントロールがいいという印象で見ていけば、結構、腕もあがりやすくなる。審判だって、印象とか絶対あるんでね」と指摘。「今はみんながみんなアウトコース低めって言わない時代になってきたけど、アウトコース低めの本当の隅っこに放れれば有効な球には間違いないんでね」と改めて村上の魅力を口にした。
村上の制球力に関して、元広島の「精密機械」と呼ばれた北別府学氏と比較する声もあるが、野田氏は「今日の投球を見れば、北別府さんと比べたらまだまだとは思います。北別府さんはもうひとつ、さらに針の穴を通す感じでしたからね。でも、これから先、そうなる可能性がありますよね」という。
今後の課題としては「シーズンが進むにつれて、何回も対戦してバッターの方は慣れてきますからね。村上のほうはもう1個、細かいコントロールを求められるかもしれないし、もう1個左右高低の揺さぶりが必要になるかもしれない」と話したが、こちらも十分クリア可能とみている。
首位のDeNAを追う阪神。カード頭の火曜日に村上が先発して、このまま好投を続ければ、チームにさらなる勢いも与えることだろう。新人王の資格も有する右腕の今後がますます楽しみだ。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)