専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第111回 我々の世代にとっては”ゴルフの神様”であるタイガー・ウッズ(41歳/アメリカ)が、車の中で寝ていたとかで職務質問を受けて逮捕されました。その…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第111回

 我々の世代にとっては”ゴルフの神様”であるタイガー・ウッズ(41歳/アメリカ)が、車の中で寝ていたとかで職務質問を受けて逮捕されました。その際、ウッズの目はうつろで、足もともおぼつかない状態になっていて、「これは薬物か!? アルコールか!?」なんて、大騒ぎになりました。

 結果的には、アルコールも薬物も検出されず、大事には至らなかったので、少しホッとしております。それにしても、ウッズのだいぶやつれて、覇気のない姿には驚きを隠せませんでした。

 なんで、ウッズはこんなふうになってしまったのでしょうか?

 そもそも、セックス依存症になって、奥さんにアイアンでボコボコにされたから……って、そこですか? 思い返せば、そういう話もありましたなぁ。

 そんなプライベートのはしゃぎすぎもスランプの一因でしょうが、何度も手術を重ねるなど、もはや体がボロボロになってしまったのが致命的なように思います。まるで整形手術をやりすぎた、マイケル・ジャクソンのようです。

 全盛時のウッズの、神がかったミラクルショットは、相当無理をして、体に負担をかけまくって打っていたのです。そのツケが今、回ってきているのでしょう。

 あんなに頑丈に見える、一流のプロですら、体を痛める。いや、一流のアスリートだからこそ、体の限界にまで挑んでしまうのかも……。石川遼選手も腰痛で悩んでいるようだし、帝王ジャック・ニクラウスにしても腰が悪くて車に長時間乗れないので、日本に来たときはヘリコプターで各地を移動していたらしいです。

 このようなスーパースターのケガやトラブルから学ぶべきことは、アマチュアは決して無理をしてはいけない、ということです。

 だいたい我々アマチュアは、激しいトレーニングをする前から、すでに体を壊していますからね。個人的には、年明け早々に五十肩をやらかしました。カイロプラクティックに10回ほど通って、6月になってようやく8割程度回復し、ドライバーも打てるようになりました。

 昨年は6月から3カ月ほど、毎日ジョギングをしていたら膝を痛めて、一時は歩くこともつらい状態に。今は治りましたが、しばらくジョギングはしていません。駒沢公園のそばに住んでいながらジョギングができないというのは、キャバクラに行きながらお姉ちゃんがついてくれないようなもので、結構つらいですけどね。

 それはともかく、アマチュアゴルファーが体を痛める根本的な原因は、「飛ばそう!」という強い意思の実践です。

 ゴルフはそもそも、ハンディキャップがあるから、飛ばないとか、下手とかという部分はハンデ調整で補えるのです。「飛ばそう」という考えは、スキーで言えば「みんなで上級滑降コースを滑ろう」みたいな煽りじゃないですか。素人にとっては、とても危険なことですよ。

 だとすれば、「飛ばそう」思想は、極力やめたほうがいいでしょう。自分のドライバーの飛距離は220ヤードだから、220ヤードを常に曲げずに飛ばすようにしよう、そう心がけていくことでいいと思います。飛ばすことよりも、狭いホールや調子が悪いときでも安定した200ヤードのショットを打つ、むしろそういうことのほうが大事ですよね。

 もし、ゴルフを始めてまだ1年ぐらいで、毎回飛距離がアップして「自分の限界がまだ見えません」とかね、そういう方は一度限界まで試されても結構。翻(ひるがえ)って、ゴルフを2、3年以上やっている方は、もはや自らの最大飛距離の限界を悟っているでしょうから、自分の限られた飛距離で、いかにスコアメイクするか、そちらに関心が移っていいかと思います。

 よく雑誌で、「長年の飛ばない悩みが、このドリルで一気に解決しました!」とか、「目からウロコ! 飛距離に開眼し、プラス30ヤードも飛ぶようになった。なんで今まで気づかなかったんだ~」とかね、いろいろな煽りコメントが掲載されていますよね。

 そうした”煽り”に似た企画で、私もすでに何十回と、さまざまな”飛ばしの神様”とか”師匠”とか、”名人”に会って教えを請うてきています。仕事柄、そういう方々に会うチャンスがありますから。

 で、その結果、飛距離は伸びたのか?

 正直、ぜんぜん伸びていません。

 先生方は、別に嘘を言っているわけではないのです。でも、「はい、1時間のレッスンで驚くほど飛ぶようになったでしょ」的な現象は起きません。

 結局のところ、地道なトレーニングをしてエクササイズをこなし、先生方の理論を忠実に実践できるようになって、ようやく飛ぶのです。

 そもそも練習嫌いで、ゴルフにおいては努力も嫌い。そんなですから、「飛ばなくても結構」と思うようになったのです。いつの間にか歳をとって、「飛距離を伸ばす」という攻めの思想から、とりあえず「ゴルフのできる体を維持する」という守りを固める戦略が先決になった、とも言えますけど。

 さて、こんな状況で我々がやるべきことは何でしょうか?

 ゴルフの練習については回数を半分に減らして、その分、ストレッチや体操、ヨガみたいなのをやったほうがいいです。それほど練習場にはいかないと思いますが、仮に週1回は練習場に行くなら、それを隔週にしましょう。そうして、余った時間を健康維持、体質管理、ストレッチなどの時間に費やす。これが、正解だと思います。


これからもゴルフを長く楽しむためには、飛距離アップより、体のケアを大切にしましょう

 最近、五十肩をやらかしたおかげで、ストレッチはほぼ毎日欠かさずやっています。大したことではないのですが、肩の回転をよくする『コッドマン体操』をやっています。

 これは、ダンベルなどを握って、腕をぶらりと垂らす運動です。ダンベルの重みで肩の筋が伸びるという、簡単な原理の運動です。

 腕を垂らして、前後左右に揺らしたり、円を描いたり、それを50回くらいやって終わりですが、肩がギリギリと鳴るので驚きです。大丈夫か? 脱臼しないだろうな、と最初はびくびくものでした。要は、あまり使わない部分を緩やかに伸ばしているから、音が鳴るんですね。

 その後、前屈をやったり、素振り棒の短いやつをブランブラン振ったりしています。これは、スイング軌道を作るというより、腕の可動域を広げるための運動です。

 どうです? ボールを打つ前にやることがいっぱいありすぎて、なかなかラウンドまでたどりつけません。結果、無駄なお金を使わなくなった……って、そこか、メリットは!?

 何はともあれ、健康な体作りで必要なのは、ラウンドの回数を増やすより、日々のこまめな体操や運動の実践、それだったんですね。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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