富士スピードウェイでのスーパーGT第2戦はゴールデンウィーク中に開催されるのが恒例となっている。 ◆2023開幕戦 クラッシュ、トラブル続出のレインレース、ニスモZワンツーフィニッシュの奇跡 ■レース距離450kmの楽しみ コロナ禍による諸…

富士スピードウェイでのスーパーGT第2戦はゴールデンウィーク中に開催されるのが恒例となっている。

◆2023開幕戦 クラッシュ、トラブル続出のレインレース、ニスモZワンツーフィニッシュの奇跡

■レース距離450kmの楽しみ

コロナ禍による諸々の制限がなくなった今回は、2日間で8万200人ものファンがサーキットを訪れた。この大会はもともと、国内シリーズの中ではダントツの動員数を誇る大会。それは単に、日程やアクセスの良さだけが要因ではない。富士スピードウェイのコースは約1.5kmにも及ぶホームストレートを擁するため、最高速はGT500クラスの場合ほぼ300km/hに達する。それがレース距離450kmと、通常の1.5倍分楽しめる。ファンにとっては非常に価値の高い大会でもあるからだ。

その中で今回、特に素晴らしかったのが、フルコースイエローもセーフティカーも一度も導入されなかったスムーズなレースだったこと。かといってバトルが少なかったわけではなく、そこは他のサーキットよりもオーバーテイクチャンスの多い富士スピードウェイが舞台ということで、もちろんスタートからチェッカーまで、随所でバトル必至の展開。その上でレースがストップしなかったということは、それだけハイレベルな攻防だったということだ。さらに通常の1.5倍のレース距離に対し通常1回のピットインが倍の2回ということで戦略の幅は広くなり、今回も各チーム多彩な戦略で挑んできた。いつもにも増して見どころは多かったように思う。

またGT500クラスに参戦する国内3メーカーのマシンは従来、ストレートスピードはトヨタ、コーナリング性能はホンダ、そしてニッサンは万能型と、それぞれ強みとする部分がはっきりと分かれていたが、ここ数年それぞれ弱点を克服することを念頭に開発を進めてきたのか、その差はかなり小さくなってきた。

実際にトヨタ勢が有利とされていた富士で今回、ポールポジションを獲得したのはホンダ勢の#100チームクニミツ(山本尚貴/牧野任祐)。2位以下の上位も僅差の中に3メーカーがあらけることになった。決勝も6番手スタートから緻密な戦略に加え安定した速さを発揮したトヨタ勢の#36トムス(坪井翔/宮田莉朋)が優勝したものの、2位の100号車も予選同様強かった。3位はホンダ勢の#17リアルレーシング(塚越広大/松下信治)だったが、残り5周まで3位を走っていたのはニッサン勢の#24コンドーレーシング(佐々木大樹/平手晃平)だった。

鈴鹿サーキットで行われる第3戦でも、3メーカーは接戦を演じることになるだろう。

そんな価値あるスーパーGTの450kmレース開催数が今季は増えて、残り6戦中4戦も組み込まれているというのは楽しみでしかない。

鈴鹿サーキット、オートポリスは富士とはコース特性が異なるし、8月にもう一度開催される富士450kmレースも今回とはコンディションがかなり異なるゆえ、また違った展開になるだろう。価値の高い450kmレースのバリエーションがさらに豊富になった、魅力倍増の今季スーパーGTにはぜひ、多くの人に注目してもらいたい。

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター

2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。