選抜大会決勝は神戸弘陵が優勝、岩手からは同校男子硬式野球部も応援 銀色のメダルとともに溢れ出た涙は、忘れない。2日に東京ドームで行われた第24回全国高等学校女子硬式野球選抜大会決勝。花巻東女子硬式野球部は、昨年の第13回全国高等学校女子硬式…

選抜大会決勝は神戸弘陵が優勝、岩手からは同校男子硬式野球部も応援

 銀色のメダルとともに溢れ出た涙は、忘れない。2日に東京ドームで行われた第24回全国高等学校女子硬式野球選抜大会決勝。花巻東女子硬式野球部は、昨年の第13回全国高等学校女子硬式野球ユース大会決勝でも苦汁を飲まされた神戸弘陵に、0-6で敗退。またしても強豪チームに屈した。

「まだまだ実力が足りない」

 そう言って唇を噛みしめたのは、決勝の先発マウンドを担って5回3失点で降板した右腕エースの関口瑞生(3年)だ。初めての東京ドームは「楽しく投げられた」。その一方で、ボール先行のピッチングが続いた内容には、反省の弁しか出てこない。

 打線も6回裏までノーヒットと、神戸弘陵の樫谷そら(3年)、伊藤まこと(2年)の左腕リレーの前に打ちあぐねる。成す術がない……。それでも、6点を追う7回裏。ともに3年生の3番・和久本結華がショートへの内野安打を放ち、代打の宮崎花梨が左前安打で続いて2死一、二塁。得点にこそ結びつかなかったが、土壇場で意地を見せた。三鬼賢常監督は言う。

「選手たちは最後まで一生懸命に、諦めずに必死にプレーした。心の部分は、100点をあげたい」

 初の選抜大会決勝進出とあって、岩手からは同校の男子硬式野球部を含めた多くの人たちが応援に駆けつけた。東京ドームに響き渡る声援を背に、花巻東らしさでもある「最後まで諦めない」姿は見せた。準決勝の戦いにこそ、チームの色と、今大会での強さがよく表れていただろうか。

 2017年大会優勝の履正社(大阪)を相手に、3回裏には2番・佐々木秋羽(2年)がタイムリーヒットを放って先制。延長戦に突入してタイブレークとなった10回裏に1死満塁からサヨナラで勝敗が決するのだが、最後の一打を放ったのは、またしても佐々木秋羽。打球は、相手投手の足元を抜けてセンター前へ。記録は投失となったが、勝利への渇望が詰まった一打が、サヨナラ勝利を呼び込んだのだ。

兄・佐々木麟太郎から「自分らしく楽しんでやれよ」とアドバイス

 秋羽の兄は、同校野球部で世代を代表するスラッガーの佐々木麟太郎(3年)。大会期間中には、左腕投手に対して体が開かないように意識することやメンタルについて、兄から電話でアドバイスを受けたという。その言葉もプラスにして、準決勝では適時打を含む3安打。躍動する秋羽の姿が、チームの勢いを象徴しているようだった。決勝前にも「雰囲気に飲み込まれないように、自分らしく楽しんでやれよ」と、妹は兄からエールを送られたのだが……。

「準決勝までは花巻東らしい野球ができたと思いますが、まだまだ力が及ばなかった。悔しい気持ちでいっぱいです。もっともっと練習をして、次こそは優勝したい」

 秋羽の言葉は、チームの総意だろう。ユース大会に続く全国準優勝は、創部4年目のチームにとって大きな足跡。心の底から溢れてきた悔しさこそ、進化の証だ。三鬼監督は言うのだ。

「今大会を通して、応援してくださる方々の声を数多く聞きました。『花巻東のファンになりました』とたくさん言ってもらえたことが、本当に嬉しかった。チームは今、一つ一つ、そして確実に歴史を作ってくれています。これからさらに、選手たちが良い歴史を作ってくれると信じています」

 粘り強く、最後まで諦めず――。その先に日本一があることを信じ続けて、花巻東女子硬式野球部は突き進む。(佐々木亨 / Toru Sasaki)