スペイン・バルセロナで開催されている「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月18~24日/賞金総額 215万2690ユーロ/クレーコート)の3回戦で、第2シードの錦織圭(6位/日清食品)がジェレミー・シャルディ(33…
スペイン・バルセロナで開催されている「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月18~24日/賞金総額 215万2690ユーロ/クレーコート)の3回戦で、第2シードの錦織圭(6位/日清食品)がジェレミー・シャルディ(33位/フランス)を6-3 7-5のストレートで下し、準々決勝に駒を進めた。
「シャルディは非常にアグレッシブな選手で簡単な試合ではなかったが、特に今日はリターンがよかったので数回サービスをブレークすることができ、いいリズムをつくれたと思う。最後の数ゲームには少し苦しんだが、全体的に見て自分のテニスに満足している」と錦織。
やるべきことをきっちりこなし、ことを自分のコントロール下においた理想的な第1セット。厳しくなりかかったところで悪い流れを押し返し、きっちり締めた第2セット。この日、陽が差し始めた雨上がりのコートの上で、錦織は自分がトップ10選手となった理由を慎ましやかに示して見せた。
錦織とシャルディの過去の対戦成績は、錦織が3勝2敗とリードしていたが、敗れた2試合はともにクレーコートでのものだった(2012年当時のアカプルコと2013年ローマ)。それだけに「クレーでは彼に強打するための時間的余裕があるので、対策が必要」と警戒心も促した対戦だったが、錦織は当時より格段に成長してもいたのだ。
「彼はフォアハンドが武器だから、なるべくバックハンドにボールを集めるということは意識していた。その上でチャンスがあればフォアハンドにも打ち、両サイドに振るようにもした」という作戦の説明は、コートで実践されたことよりもシンプルだった。フォアハンドのハードヒットを繰り出すシャルディに対し、錦織はバックハンドを狙うだけでなく、動きの逆をつくショットや長短も織り交ぜた頭脳的な配球で揺さぶりをかける。
第1セットは、3-2から迎えたシャルディのサービスゲームで勝負に出た。ストロークでの揺さぶりや深いリターンで相手にミスを強い、0-40と3ブレークポイントをつかんだ錦織は、セカンドサービスを叩いてフォアハンドのリターンエースを奪い、ブレークチャンスを一発でものにする。結局このワンブレークのおかげで、錦織は第1セットを6-3で取った。
「打ち合いになれば彼のいいショットもたまには出るが、ミスも同じくらいあった。落ち着いて無理し過ぎず、たまには彼のミスを待ったりという攻守のバランスをしっかり意識してやっていた」と後に本人が振り返った通り、スコア以上に錦織のゲーム運びの賢明さが目立ったセットでもあった。
一方、第2セットはいくつものブレークが交差する、やや奇妙な展開となる。錦織はまず第3ゲームで相手のミスによってもたらされたチャンスを逃さずつかみ、このセット最初のブレークに成功するが、続く第4ゲームでは自らのアンフォーストエラーがたたって、たちまちブレークバックされることに。第5ゲームでは錦織のリターンの深さとシャルディの自滅行為が合いまって、錦織がふたたびブレークしたが、勝負はそこでは終わらなかった。
シェルディは続く自分のサービスゲームをラブゲームで取ると、5-4からの錦織のサービスゲームで強気のストローク戦を演じてブレークバックに成功。5-5となったときには錦織に嫌な空気が漂い始めていた。
しかし錦織の殊勲はそこからすぐに奮起し、自ら打っていくプレーでブレークバックに成功したことだ。 「あの5-4からのゲームで、シャルディはいいプレーをしたと思う。たぶん僕の最大のミスはダブルフォールトだった。でももっとも重要なのは、あのゲームのあとに挫けることなく集中し、5-5からふたたび彼のサービスをブレークしたこと。難しい心境になっていたところで奮起して集中し直し、リターンをしっかり入れてまた巻き返すことができた」と錦織は振り返る。フォアハンドのクロスリターンを叩き、押されたシャルディのショットがラインを割って6-5となったときには、思わず声も出た。
錦織は22日午後、センターコートで準々決勝に挑む。次の相手は、ジュニア時代からの友人だというアレクサンドル・ドルゴポロフ(30位/ウクライナ)だ。 「彼はトリッキーなプレーヤーで多くのスライスを使い、サービスもいい。僕らはジュニア時代から知る仲で、よくダブルスも組んでいたし、ここに来てからいっしょに練習もした。ジュニア時代に一度優勝したこともある」
錦織は、親愛の情を込めてこう言ってから、表情を引き締め、次のように続けた。 「お互いにプレー内容もスタイルもよく知っているし、いい友達同士でもあるから、彼と相対するのは簡単なことじゃないけれど、コーチと話して作戦を立て、明日の試合に向けてしっかり準備したい」
(テニスマガジン/ライター◎木村かや子、構成◎編集部)