夏から秋に季節が変わった南半球のメルボルンは、昼間は暖かい陽射しが降り注ぐものの、朝晩は上着がなければ肌寒い。 ヨーロッパからは20時間以上のフライトを経て、時差10時間──。レース週末に向けて体調を整えるために、角田裕毅は1週間前の日曜…
夏から秋に季節が変わった南半球のメルボルンは、昼間は暖かい陽射しが降り注ぐものの、朝晩は上着がなければ肌寒い。
ヨーロッパからは20時間以上のフライトを経て、時差10時間──。レース週末に向けて体調を整えるために、角田裕毅は1週間前の日曜日にメルボルン入りをした。
メルボルンのファンと交流する角田裕毅
「現状では9番手・10番手のチームだということは、チームもわかっています」
開幕から2戦連続でポイント争いを繰り広げ、入賞まであと一歩の11位でフィニッシュした角田とアルファタウリだが、予選や決勝の純粋なペースを分析すれば、今のAT04は9番目か10番目のマシンでしかないことは明らかだった。
その2戦で見せた角田のレースは、たとえノーポイントでも、これ以上ない出来であったこともチームはわかっているということだ。
「この2戦はクルマのポテンシャルを出しきった状態での11位というのはわかっています。あれで『これ以上、行けたよね』って言われたら僕は『うん!?』ってなりますけど、そんなことはなくてチームもよくわかっている。
そこを認めたうえで、クルマの100%を引き出すことを目標に現場のエンジニアたちは努力してくれています。それは僕自身の100%を引き出すという目標とも一致しているので、僕もエンジニアもチームも一丸となっていると言えます」
どんな状況であろうと自分自身とマシンの100%を出しきるというのは、開幕前から角田が口癖のように言い続けてきたことだ。
マシンのパフォーマンスが思わしくなく入賞のチャンスがなかったとしても、それにモチベーションを左右させられるのではなく、ドライバーとしてやれることをすべてやる。そうすることで、わずかでもチャンスが巡ってくる可能性を高めることができる。
「このクルマでこれだけの走りができているのは自分でもいいところだと思っていますし、ポジティブに捉えています。でも2戦とも何台かリタイアしていますし、それがなければ僕はもう少し後方でした。そう考えると、今のところ僕たちのクルマには常にポイント争いをするほどの速さはないと思います。
でも、今は中団グループがすごくタイトで、ワンミスで6個とか7個くらい大きくポジションを落としてしまったりするので、そういう意味でも僕らとしてはラッキーだと思っていますし、そこにモチベーションも感じます。予選で0.1〜0.2秒を見つけるのは簡単ではないんですけど、それができれば大きくポジションが上がる可能性があるのでワクワクしますね」
【AT04は最高速が伸びない】
オーストラリアGPの舞台アルバートパーク・サーキットは、公園の周遊路を利用した半公道サーキット。もともとは直線を低速コーナーでつないだストップ&ゴー的な性格のレイアウトだったが、昨年の改修でコーナーが緩やかな形状に改められ、中速コーナーが多くなった。
今のアルファタウリにとっては、厳しいコース特性だと言える。
「マシンバランス自体はそれほど悪くないんですけど、ただグリップが足りないんです。グリップが高くなればそのぶんセットアップの幅も広がりますし、コーナーごとのスライド量が減ればレースでのタイヤ消耗も抑えられます。クルマ全体のダウンフォース量を増やすことがまずは最優先です」
今年の角田裕毅は100%の走りを見せてくれる
AT04は最高速が伸びない。マシンそのものが持つダウンフォース量が少ないから、ウイングを寝かせて走ろうとするとマシンが大きくスライドしてしまうため、ウイングを立ててダウンフォースを稼ぐしかない。そうすると空気抵抗が大きくなり、最高速は伸びなくなる。
マシンが持つダウンフォース量が多ければ、ウイングを寝かせてストレート重視のセットアップもできるが、今のアルファタウリにはそれはできないというわけだ。
「できるだけウイングではなくフロアでダウンフォースを稼ぐことによって、ドラッグ(空気抵抗)を増やすことなくダウンフォースを上げられるので、フロアの開発が一番重要かなと思っています。同じパワーユニットを使っているレッドブルと比べてもストレートスピードが10km/hくらい違うので、ウチのドラッグが大きいのは明白。そこを下げていくことも重要です」
今週末のオーストラリアGPには、待望のアップグレードが入る。
まだマシンを根本的に変えられるようなものではない。だが、大きなアップグレードを確実に入れていこうとした結果、ライバルたちに大きく後れを取ってしまった昨年とは違い、小さなものでも次々と投入していくというアルファタウリの積極的な開発方針を反映したものとなっている。
【狙うは中団5チームのトップ】
「去年はシーズンを通して、ウチのアップグレードが一番少なかったんです。ライバルが3回アップグレードする間にウチは1回とかいう感じで、毎回後れを取っていました。そのアップグレードも大きく変わらなかったり......だったので、今年は少しでもいいから前進していくために、できるだけコンスタントにアップグレードを投入していくことを考えています」
今回のアップグレードでマシンの弱点が根本的に改善できるとは角田も考えていないが、タイトな中団グループのなかで0.1秒は大きな意味を持つ。上位5チームの誰かが崩れた時に、その空いた入賞圏に飛び込むためには、中団5チームのトップにいなければならない。
「過去2戦は本当にポイントに近いところで終わっているので、今回こそポイントを獲りたいですね。順位はともかく自分としても満足のいく力強い戦いはできているので、今回も自分のパフォーマンスを100%引き出せるようなレースをしたいと思います」