3月12日に学生ハーフが終わり、今季のロードシーズンが終わった。906名の選手が参加し、ガチンコで勝負したわけだが、このレースでの結果が箱根駅伝をはじめ、秋の駅伝やレースにつながってくると言われている。箱根駅伝で優勝し大学駅伝3冠を達成し…

 3月12日に学生ハーフが終わり、今季のロードシーズンが終わった。906名の選手が参加し、ガチンコで勝負したわけだが、このレースでの結果が箱根駅伝をはじめ、秋の駅伝やレースにつながってくると言われている。箱根駅伝で優勝し大学駅伝3冠を達成した駒澤大、雪辱を期す青学大など、学生ハーフとロードレースの結果から各チームの現在地を探ってみた。

※  ※  ※  ※  ※



チームの看板になりそうな駒澤大・篠原倖太朗

 箱根の覇者である駒澤大は、篠原倖太朗(2年)が「勝負にこだわった」という走りで優勝を果たした。15キロの給水からスピードアップして後続を突き放した走りは圧巻で、今年は鈴木芽吹(3年)、佐藤圭汰(1年)とともに3枚看板でチームを引っ張るだろう。箱根を回避し、故障明けで参加した花尾恭輔(3年)も63分21秒(19位)で走り、「上々」と大八木弘明監督も笑みを見せた。「外さない男」は今年も駅伝で震えるような強さを見せてくれるだろう。

 山候補の金子伊吹(3年)は63分34秒(29位)でPB(自己ベスト)を出し、最終学年での箱根出走に向けてアピールした。また赤津勇進(3年)、初ハーフの篠川史隆(3年)が65分切りで存在感を示した。

 駒澤大は、この学生ハーフ以外のレースでも結果を残している。丸亀ハーフでは篠原が60分11秒(5位)でPBおよび駒澤大新記録を叩き出し、箱根5区4位と好走した山川拓馬(1年)も初ハーフながら61分36秒(12位)、箱根8区4位の赤星雄斗(3年)は62分29秒(38位)と好走した。唐津10マイルでは安原太陽(3年)が47分18秒で8位入賞、アジア室内陸上選手権の3000mでは佐藤が2位入賞を果たした。

 大エースの田澤廉、主将の山野力が卒業するが、エースが育ち、主力、中間層、さらにルーキーとして安原の弟の海晴(滋賀学園)ら5000m13分台が3名入部するなど、走力、選手層を含めた総合力は大学随一。故障者さえ出なければ今シーズンも「駒澤無双」になりそうだ。

 学生ハーフで強さと選手層の厚さを見せつけたのが箱根総合4位の國學院大だ。エースの平林清澄(2年)は前回覇者として臨み、9位。「自分が弱いだけ」と唇を嚙みしめたが故障明けという点を考えれば及第点と言える。

 その平林以上に目立ったのが箱根を沸かせたルーキーたちだった。箱根8区13位の高山豪起(1年)が63秒07(12位)、1区12位の青木瑠郁(1年)は途中でまで上位争いに喰らいついて63分11秒(15位)、箱根7区6位の上原琉翔(1年)が63分22秒(20位)と箱根組がすばらしい走りを見せた。春からのトラックで磨かれれば、もうワンランク強くなるだろう。

 さらに他大学を驚かせたのは、箱根組以外の選手たちの走りだった。木村文哉(2年)、松下裕介(3年)、瀬尾秀介(3年)が63分台で好走。鈴木景仁(3年)、青木洸生(2年)、嘉数純平(1年)は64分台。100位内に10人が入った。

 高山は丸亀ハーフで61分42秒のPBおよび國學院大記録歴代3位で走っており、青木瑠郁、嘉数も62分台を出し、非常に好調だった。課題だった中間層が確実にレベルを上げてきており、伊地知賢造(3年)、山本歩夢(2年)、平林の3本柱、主力組とかみ合えば、次回の箱根100回大会では悲願達成を実現できるかもしれない。来季の國學院大は、前回の箱根での中央大のような注目すべき存在になるはずだ。

 不気味な存在になりそうなのが、箱根総合8位の創価大だ。嶋津雄大、葛西潤、フィリップ・ムルワら主力が卒業し、戦力ダウンかと思いきや、学生ハーフでは選手が着実に成長してきていることを証明した。

 小暮栄輝(2年)が62分55秒で5位、ルーキーで箱根5区13位の野沢悠真(1年)が62分58秒で7位とふたりが入賞を果たした。野沢は、ラストで平林(國學院大)や村松敬哲(東京国際大3年)をかわしてゴールし、粘り強い走りを見せた。

 また、全日本駅伝3区12位の吉田凌(2年)、吉田悠良(3年)はともに63分台で駆け、上杉祥大(3年)、竹田康之助(1年)、出雲5区5位の石井大揮(3年)は64分台。全18名が出走し、7名が65分切り、3名がPBを出すなど、上々の結果だった。

 ここに箱根3区14位の山森龍暁(3年)、8区9位の桑田大輔(3年)、10区15位の石丸惇那(1年)らが加わることになる。嶋津や葛西レベルに化けそうな選手もおり、箱根では上位校と勝負ができる編成が可能になりそうだ。

 箱根総合7位の法政大も強さを見せた。箱根1区3位の松永伶(3年)はラスト1キロでキレのあるスパートで並木寧音(東農大3年)をかわし、3位に入った。青木涼真(現Honda)、鎌田航生(現ヤクルト)に続くエースになるのは、松永だろう。

 箱根6区5位の武田和馬(2年)も62分57秒のPBで6位入賞を果たした。武田は、次回の箱根では往路の出走も狙えるのではないだろうか。稲毛崇斗(3年)が63分24秒(21位)、箱根5区10位の細迫海気(3年)が63分59秒(47位)でPB。安澤駿空(2年)、行天陽虹(1年)は64分台を出した。箱根8区区間賞の宗像直輝(3年)は65分台ともうひとつだったが、選手層が厚くなっている。

 法政大はこの3年間、箱根は17位、10位、今年は7位と着実に順位を上げてきた。山候補は健在でエースもいる。中間層が充実すれば総合5位以内は、射程圏内にあると言えよう。

 ちょっと心配なのは、順大、そして青学大だ。

 箱根総合5位の順大は、西澤郁真、伊豫田達弥、四釜峻佑、野村優作、平駿介ら主力がごそっと卒業し、チームは相当の危機感があるはず。そのなかで、誰が「次は自分だ」という存在感を示せるのか、重要なレースになった。

 まず、海老澤憲伸(2年)が63分10秒(14位)と好走した。丸亀ハーフでも63分33秒とロードでは安定した結果を残し、来年の箱根は故障さえなければ出走するだろう。服部壮馬(2年)、斎藤舜太(3年)はともに64分台でPBを出し、トラックシーズンに向けて弾みをつけた。ただ、主力の石井一希(3年)は65分08秒(123位)で、前回の箱根も4区15位に終わり、ちょっと心配だ。

 エースの三浦龍司(3年)を軸に春には5000m13分22秒99の高校記録を持つ吉岡大翔(佐久長聖)が入学する。箱根で勝つためには抜けた主力の穴を埋めるべく、全体の戦力アップが不可欠になるが、今回は63分台がひとりだけとパンチに欠ける結果に終わった。春からの個人種目での頑張りを、どう駅伝に結びつけていくのか楽しみだ。

 青学大は、出雲4位、全日本3位、箱根3位と今シーズンは無冠に終わった。順大と同じように、近藤幸太郎、岸本大紀、中村唯翔、目片将大、横田俊吾、中倉啓敦ら強い4年生が卒業した。学生ハーフは、主力の2年生、若林宏樹、太田蒼生、田中悠登らが出走しないなか、誰が表舞台に出てくるのか、期待が膨らんだが、部内トップは箱根7区7位の佐藤一世(3年)で63分05秒のPB、10位だった。

 20年の全日本のブレーキから駅伝の出場機会を得られない山内健登(3年)は63分45秒(39位)とまずまず。松並昂勢(3年)、新主将の志貴勇斗(3年)、倉本玄太(3年)、徳丸涼大(2年)が64分台。21名の選手が出走したが、65分切りは6名だった。

 主力不在もあるが、学生ハーフの結果は2018年大会で梶谷瑠哉(現SUBARU)が優勝して以来、8位入賞者はゼロ。ここ10年間で6回箱根で優勝している強豪チームとしては、少し物足りなさが残る。新入生も5000m13分台が熊井渓人(須磨学園)のみと例年よりややスケールダウンしている。

 駒澤大、國學院大、創価大などの充実ぶりが目立つが、ここから箱根まで青学大がどう巻き返していくのか。まずはトラックシーズンでの戦いに注目だ。