「片方だけじゃダメ」　甲子園、プロ入りした子を持つ親に聞く…“野球選手”の育て方

中学硬式「明石ボーイズ」の筧新吾監督の次男・裕次郎氏は明徳義塾で全国制覇

　プロ、アマ問わず“野球選手”を育てた保護者はどのような教育、指導をしてきたのか。甲子園に出場し、プロ野球選手になった息子を持つ、中学硬式野球「明石ボーイズ」の筧新吾監督は「親と子が同じ夢を追いかける。技術だけでなく出会いも必要」と自身の経験を振り返る。

　筧監督の次男・裕次郎氏は明徳義塾（高知）の副キャプテンとして2002年夏の甲子園で全国制覇を果たした。その後はドラフト3位で近鉄に入団し、オリックスを経て2008年に現役引退。現在は「明石ボーイズ」の兄弟チームである、軟式少年野球「明石ボーイズJr.」の総監督を務めている。

　名門校に進学し甲子園出場、そしてプロ野球選手へ――。誰もが羨むエリート街道を歩んできたように見えるが、その道のりは平坦ではなかった。筧監督は硬式野球の経験はなく、まずは独学で指導法を学び講習会にも積極的に参加。実績ある指導者に頭を下げ、自らの引き出しを増やしていった。

「親と子どもが同じ夢を追いかけることが必要。どちらか片方だけじゃ絶対にダメだと思います。本気で追いかけたら必ず近づく。息子は元々、プロを目指していたわけじゃなく、甲子園に行きたいという夢があった。じゃあそこに必要なことは何かを一緒になって考えていきました」

強豪の中学クラブチームを退部、中2で明徳義塾中に転校した

　小学校時代は自らが監督を務めるソフトボールチームに所属。卒業と同時に強豪の中学クラブチームを探し回った。一度は入部するも「野球観の違い」から退部し、中学2年で明徳義塾中に転校。高校卒業まで寮生活を送った。

　周囲からは家庭環境の違いなどから「誰もができることじゃない」との言葉を受けることもある。だが、筧監督は「支え方は色々ある」と語る。現在は保護者の負担が少ないなどといった、様々な特色を掲げるチームも多くなった。

　さらに、技術だけを求めるのではなく“出会い”も重要だという。たとえ目標が達成されなくても「人との出会いが将来を変えていく。現役時代は自らが決めた目標をやり遂げれば結果はついてくる。過去ではなく現在、未来をどう生きていくかが大事なのではないでしょうか」。

　目標設定ができれば、親子2人が一緒になって歩んでいく。社会人としても誇れる“野球人”になることが必要なのかもしれない。（橋本健吾 / Kengo Hashimoto）