世界選手権で連覇を目指す坂本花織 さいたまスーパーアリーナでフィギュアスケートの世界選手権が開幕する。フィギュア王国ロシア勢が不在の女子は、現世界女王の坂本花織やGPファイナル覇者の三原舞依、昨季世界選手権銀メダルのルナ・ヘンドリックス(ベ…



世界選手権で連覇を目指す坂本花織

 さいたまスーパーアリーナでフィギュアスケートの世界選手権が開幕する。フィギュア王国ロシア勢が不在の女子は、現世界女王の坂本花織やGPファイナル覇者の三原舞依、昨季世界選手権銀メダルのルナ・ヘンドリックス(ベルギー)らがメダル争いを展開するだろう。

 そこに対抗馬として四大陸選手権女王のイ・ヘインら韓国勢と、アメリカ期待の若手、16歳のイザボー・レヴィトが加わる。成長著しい韓国、アメリカの選手により、昨季とは少し勢力図が変わったと言えるだろう。

 さらに、今季のシンデレラガールでスケートカナダ初優勝、グランプリ(GP)ファイナルでは3位とわずか0.34点差の4位だった渡辺倫果が、上位争いにどう食い込んでくるか。武器のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)をショートプログラム(SP)から組み込んで、フリーと合わせて2本の大技ジャンプを完ぺきに跳べば、一気にメダル圏内に名を連ねる可能性がある。

 2022年北京五輪銅メダリストで、全日本女王でもある坂本は、世界選手権で日本人初の大会2連覇がかかっている。ダイナミックなジャンプと疾走感あふれるスピードを誇るスケーティングは、21日夜に行なわれた公式練習を見ると、さらに磨きが掛かっているようだ。スケーティングスピードが増しているのか、制御できないでつまずく場面も見られたほどだ。曲かけはSP『Rock with U/Feedback』でジャネット・ジャクソンメドレー。セクシーな振り付けは、シーズン最初はぎこちなさもあったが、回数を重ねることで、ずいぶんさまになってきた。

 今季は序盤でのミスが目立ち、成績もついてこなかったが、シーズン後半のGPファイナルで惨敗してからは目が覚めたように、昨年12月の全日本選手権では納得のいく演技を揃えて、2連覇を達成し、調子が上向いてきた。

「シーズン前半はSPもフリーも何もかも不安で、よくない演技が多かったんですけど、シーズン後半になって自分らしく滑れるようになってきて、よくなってきたと思います」

 4年前に今回と同じ会場で行なわれた世界選手権では、自信を持って臨みながら5位に終わった。そのことをいまも忘れていない。だからこそ、今大会までは練習もしっかりと取り組んできた。

【トリプルアクセルに挑む渡辺倫果】

「練習ではSPもフリーもノーミスする演技が多かったので、ノーミス演技を試合でもすることができたらいいです。4年前の世界選手権ですごく悔しい思いをしたので、同じ場所で同じ大会でリベンジをしたいです。とにかくSPもフリーもパーフェクトな演技をして、表彰台に乗ることが、リベンジになると思います」
 
 ひと皮むけた大人のスケーターに成長した22歳が、今季の集大成をどんな演技で見せてくれるか楽しみだ。

 その坂本と同門で、1歳上の三原は、持病から体調の回復が見られた今季、飛躍のシーズンを過ごしてきた。ただひとりGPシリーズで2連勝を挙げ、GPファイナルでは初出場初優勝を飾って、くすぶってきた真価がついに花開いた。2度の休養もあったが、たゆまぬ努力とスケートが好きという強い思いが競技復帰を実現させ、滑る喜びと感謝の気持ちで演技をする姿が印象的だった。シニアデビューした2017年大会以来、6年ぶり2度目の出場に向けて三原は、いつものように周囲への感謝を口にした。

「今シーズン戦ってきたプログラムの集大成になるシーズン後半の試合なので、今まで『こうしたい』という課題を全部克服して完成度を上げて練習してきました。自分らしく最初から最後まで集中して、世界選手権という舞台を全力で楽しんで笑顔で滑りたいです」
 
 今大会でトリプルアクセルを跳ぶのは、ここまで名前を挙げてきたトップ選手のなかでは渡辺ただひとり。ハイリスクハイリターンのジャンプであることは言うまでもないが、女子でこのジャンプを跳ぶ意味は大きい。プログラムに組み込むことで、演技内容が華やかになり、勝負の行方を左右する"起爆剤"になる。

「すごく楽しみな気持ちがほとんどですけど、そのなかでもしっかり緊張感を持って練習に取り組んできたと思っているので、この大会にこれた喜びをかみ締めつつ、落ち着いてできればいいんじゃないかなと思っています。トリプルアクセルにこだわり、他のジャンプでミスをしないことが目標です。特に、大技を組み込むSPではミスは許されないので、自分を見失わずに落ち着いて演技を揃えたいです」(渡辺)

 21日夜の練習では、曲かけでは転倒していたが、単発のトリプルアクセルは1本、鮮やかに決めていた。トリプルアクセルに挑戦するSP、フリーともにノーミス演技ができれば、初挑戦の世界選手権でもメダル獲得に大きく近づくはずだ。

 日本勢は三者三様のアプローチで表彰台を目指す。それだけの力があるだけに、SPの戦いから注目必至の一戦となるだろう。