●宇野昌磨はSP好発進がカギ 3月23日にショートプログラム(SP)、25日にフリーが行なわれるフィギュアスケート世界選手権の男子シングル。 前回大会のメダリストのなかで、2位の鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)と3位のヴィンセント・ジ…

●宇野昌磨はSP好発進がカギ

 3月23日にショートプログラム(SP)、25日にフリーが行なわれるフィギュアスケート世界選手権の男子シングル。

 前回大会のメダリストのなかで、2位の鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)と3位のヴィンセント・ジョウ(アメリカ)は出場しない。優勝候補筆頭は、前回1位で連覇を狙う宇野昌磨(トヨタ自動車)だ。



宇野昌磨

 過去2回の五輪は銀(平昌大会)と銅(北京大会)で、2位2回だった世界選手権で宇野は昨季、"シルバーコレクター"から脱却して頂点を手にした。

 イリア・マリニン(アメリカ)が頭角をあらわし始めたとはいえ、宇野の今季は世界の男子を牽引する意識も持った戦いで、背負うものは大きかった。

 シーズン序盤はその重圧で空回りした感もあった。だが、グランプリ(GP)ファイナルのフリーでは自己最高の204.47点を出し、合計を304.46点にして圧勝した。

 SPは、練習で決められている4回転トーループ+3回転トーループがなかなか成功しないが、少しずつ手応えを感じてきて精神的にも落ち着きを見せている。この連続ジャンプを決めるのは時間の問題だろう。

 現時点での自己最高はSPで109.63点の高得点をたたき出した昨季の世界選手権の312.48点。今大会は国内開催(さいたま市)で準備もしっかりとできているだけに、SPで好発進できれば、自己最高を塗り替える可能性は高い。

●イリア・マリニンは高難度構成で挑む

 宇野に続く表彰台争いになると、310.05点のベストを持つ鍵山がいないなかでは、300点台にどれだけ肉薄してくるかがひとつのポイントになるだろう。

 その1番手となると、やはりマリニンということになる。フリーで4回転アクセルを含めた5本の4回転ジャンプに挑んでいる今季は、SPで出遅れてもフリーで挽回して結果を出している。



イニア・マリニン

 初挑戦だった昨季の世界選手権ではSPで100.16点を出している。また、今年1月の全米選手権はフリーで崩れてしまったが、SPは4回転ルッツ+3回転トーループと4回転トーループを入れた構成で完璧な滑りをして110.36点を記録した。

 まだ荒さもあってSPとフリーの両方をなかなかそろえられず、自己最高は280.37点にとどまっているが、強力な武器を持っているだけに歯車が合えば290点台は十分に可能だ。もし300点台に届けば、来季以降の飛躍の原動力にもなってくる。

 ただ、マリニンが自己ベスト前後の得点にとどまると、2位、3位争いは大混戦になりそうだ。

●2位、3位の表彰台争いは大混戦の様相

 自己最高で280点前後の選手は、北京五輪は282.38点で5位のチャ・ジュンファン(韓国)と、281.24点で6位のジェイソン・ブラウン(アメリカ)、278.07点で7位のダニエル・グラスル(イタリア)。

 だがチャとグラスルは、今季264点台が最高といまひとつ調子に乗りきれていない。

 GPシリーズに出場していなかったブラウンは、全米選手権では277.31点を出してマリニンに次ぐ2位になっているだけに侮れないが、フリーでは4回転がないため爆発力はない。SPで100点台に乗せフリーもノーミスで滑らなくてはいけないという条件だ。

 そんななかで浮上の可能性を秘めるのが、GPファイナルで自己最高の274.35点を出し、宇野に次ぐ2位になった山本草太(中京大)だ。

 そのあとの全日本選手権は245.41点で5位に沈んだ不安定さもあるが、今年1月のワールドユニバーシティゲームズでは非公認ながらSPで初の100点台となる101.32点をマークし合計274.86点で優勝。

 山本はハマれば280点台に迫れる力はつけてきた。SPをノーミスで滑って90点台後半の得点を出すことが、上位浮上へのカギになってくる。

 また、自己最高はGPシリーズフランス大会優勝時の268・98点だが、アダム・シャオ・イム・ファ(フランス)も面白い存在だ。

 SP、フリーともにブノワ・リショー氏の振り付けで面白い世界観を表現している選手。GPシリーズ・フランス大会のフリーでは4回転3本を入れた構成で180.98点を出して、SP3位から山本と友野一希を逆転して優勝した。

 優勝した1月のヨーロッパ選手権ではSPで96.53点を出しているだけに、うまくそろえられれば上位争いに食い込んできそうだ。

 また、友野は今季、得点が伸び悩んでいるが、SPで前回の世界選手権のように100点台に乗せられれば、勢いに乗って269.37点の自己最高の更新もあり得る。

 3月23日からの熱戦を楽しみに待とう。