「毎年、芝でプレーすることはチャレンジングなことだと思っていますし、このサーフェイスでどうやってプレーするのかを見出そうとトライしています。毎年改善されていると思いますし、最初の試合としては効果的にできました。すごくタフな試合でしたが、…

「毎年、芝でプレーすることはチャレンジングなことだと思っていますし、このサーフェイスでどうやってプレーするのかを見出そうとトライしています。毎年改善されていると思いますし、最初の試合としては効果的にできました。すごくタフな試合でしたが、これからよくなっていくと思います」

 今季、芝での初戦となったゲリー・ウェバー・オープン1回戦のフェルナンド・ベルダスコ(スペイン/世界ランク34位)戦を、錦織圭はこう振り返った。タイブレークにもつれ込んだ第1セットを落としながら、第2セット(6-3)、ファイナルセット(6-4)で立て直しての逆転勝ち。錦織は芝での初戦の感触を「まずまず」と語った。


ゲリー・ウェバー・オープン1回戦でベルダスコを下した錦織圭

 全仏オープンとともにクレーコートのシーズンが終わり、短い芝のシーズンに入った。四大大会の中で唯一、ウインブルドンで4回戦の壁を突破できていない錦織にとって、芝は苦手なサーフェイスだと言える。

 球が滑るように速く跳ねる芝は、サーブを得意とする選手に有利だとされている。対戦相手のベルダスコはビッグサーバーというわけではなく、実際、序盤のサーブはほとんど時速200kmを超えてこなかったが、「1セット目に関しては相手のサーブがよすぎた」(錦織)。

 錦織の戸惑いは、サーフェイスの感触の違いにもあった。「ここ(ゲリー・ウェバー・オープンのセンターコート)のサーフェイスが練習コートとも違って、ウインブルドンよりもちょっと(球足が)速いと思うので、動きづらさみたいなのはあった」と、より球足の速いコートへの対応にも迫られた。

 タイブレークで第1セットを落とした錦織だったが、集中力は切らさなかった。目立ったのは相手のブレークポイントでの勝負強さだ。この試合、錦織が許したブレークポイントは10で、ベルダスコの11とほとんど差はない。しかし、錦織はそのうち9回ブレークを阻み、相手に流れを渡さなかった。

 圧巻だったのはファイナルセットの第3ゲーム。自らのミスで0-40に追い込まれた錦織は、そこから5ポイント連続奪取で窮地を抜け出してみせた。だが錦織が振り返ったのは、ピンチを跳ね返したことではなく、チャンスを生かせなかったことだった。11回得たブレークポイントのうち、3回しかモノにできなかったからだ。

「あきらめずにプレーできたのは、特にファイナル(セット)で勝てた要因にはなりましたけど……。相手がいいプレーをしていたのもあったので何とも言えないですけど、もうちょっと早めに(こちらの)ブレークポイントを取りたかったですね。

 大事なポイントでアンフォースト・エラーが出てしまったり、集中力という面でもよくはなってきていますけど、大事なところで取り切るってところが、これからもうちょっと大事になってくる。芝では本当に少ないチャンスしか来ないので、集中力を磨いていきたいですね」

 やりにくい対戦相手だったのは間違いない。錦織とベルダスコは2週間前の全仏オープン4回戦で対戦したばかり。さらに、両者は3月下旬のマイアミ・オープンでも相まみえている(いずれも錦織が制している)。さらにベルダスコは、ゲリー・ウェバー・オープンでダブルスにも出場する錦織のパートナーでもある。

 試合後の錦織は「ダブルスパートナーと試合をするのはいつだって嫌です。僕たちは友達ですし、そんな相手とやるのは決して簡単ではないですから。今年はちょっと対戦しすぎなので、もう対戦したくないです(笑)」と、正直な気持ちを明かした。

 難しい試合を制し、初戦を突破した錦織。試合開始時点で気温は30度で、陽ざしの厳しさは、鼻の頭を赤くして会見場に現れた錦織の様子からもうかがえた。しかし、コンディションについては「全仏オープン後はいい感じですし、身体的にはOK」と言い切った。今季の芝シーズンではどんな戦いを見せてくれるのか、”本番”のウインブルドンへ向けて注目したい。