西村優菜インタビュー(前編)2020-2021年シーズンにツアー本格参戦を果たして以降、すでにツアー6勝を挙げている西村優菜。日本女子ツアーを代表するトップ選手のひとりだ。そんな彼女が、昨シーズン終了後に米ツアーの最終予選会に参加。今季は米…

西村優菜インタビュー(前編)

2020-2021年シーズンにツアー本格参戦を果たして以降、すでにツアー6勝を挙げている西村優菜。日本女子ツアーを代表するトップ選手のひとりだ。そんな彼女が、昨シーズン終了後に米ツアーの最終予選会に参加。今季は米ツアーに挑むという。そこで今回、米ツアー参戦への意気込みなどを聞いた――。


――一昨年、昨年とこの時期にインタビューをさせてもらいましたが、いずれも

「複数回優勝」と「メルセデス(賞金)ランキング5位以内」と公言し、見事に有言実行されました。2022年シーズンでは、30試合に出場して予選落ちはわずか1回。充実した一年だったのではないですか。

「もちろん、納得していない部分もありますが、デビューシーズンとなった2020-2021年シーズン、そして2022年シーズンと、いいシーズンを過ごしてきたと思います。特に昨年は毎試合、自分が感じたことを自分自身のゴルフにフィードバックして、頭を使いながら、試行錯誤しながら、戦えました」

――以前から飛距離で勝負するのは厳しいゆえ、「頭を使うゴルフが好き」と話していました。

「コースマネジメントの部分も、スイング的な部分も、"修正力"というのが上がったかなと思いますし、2020-2021シーズンよりも成長できたと実感しています」

――昨年のシーズン前のインタビューでは、「海外メジャーに積極的に参戦したい」と話されていました。そして実際、全米女子オープン(予選落ち)、エビアン選手権(15位タイ)、AIG女子オープン(予選落ち)と3試合に出場。さらに国内ツアー終了後には、シーズン前はまだ視野に入っていなかった米ツアーのQシリーズ(最終予選会)にも挑みました。まずはその、米ツアーに挑戦しようと思った経緯から教えてください。

「シーズンも後半にさしかかる10月だったでしょうか、それこそQシリーズの締め切りのギリギリぐらいまで悩んでいました。『海外メジャーで勝ちたい』という自分の一番大きな夢に対して、どういう道を歩むのが近道なのかとずっと考えていたんです。

(昨季も)スポット参戦という形でメジャー3試合に出場しましたが、そういう形で結果を残すにはやはり難しい部分があって、常に米ツアーのレベルの高い選手と戦う環境に身を置く経験も必要なのかな、と。そうして、いろいろと考えた末に、米ツアー挑戦を決断しました。最後は誰にも相談はせず、自分ひとりで決めました」

――現在22歳。米ツアーに挑戦するには、ベストのタイミングだと考えていますか。

「日本の試合もすごくレベルが上がっていて、これ以上ない環境ではあると思うんですけど、いろんな技術を身につけようと思うと、いろんなコースで戦って、さまざまな経験を積んでいくほうが(技術の)引き出しは増えるでしょうし、よりレベルアップできるのではないかな、と。そうしたことも、(昨季の)海外メジャー3試合に出場して痛感しました。

 それと、ぼんやりとした、漠然とした将来的なプランなんですけど、海外メジャーで勝ったあとに再び日本のツアーに戻ってプレーしたい、という目標があります。それを考えると、『今かな』と思いました」

――日本ツアーでの戦いも重要視されているのですね。

「コロナが少し落ち着いてきて、多くのギャラリーの方々が会場に来てくださって、応援していただけるようになりました。これだけのファンが足を運んでくださるのは、日本のツアーだけだと思いますし、そのなかで戦う楽しさがあります。こうした点は、Qシリーズ挑戦を最後まで悩んだ要因のひとつでもありました。

 たとえ日本を離れたとしても、活躍を信じて応援してくださる方がいらっしゃいますから、そういう方々のためにも海外で強くなって、帰国した時にはその姿を多くの方に見ていただきたい、という思いもあります」

――それにしても、Qシリーズ挑戦をギリギリまで悩んでいたとなると、そこに向けての"準備"という面では、かなり急ぎ足になってしまったのではないですか。

「いえ、気持ち的には迷っていましたけど、『準備だけはしておこう』と思って一年を過ごしていましたから、技術的な面での焦りはありませんでした」

――アメリカのQシリーズは、8日間にわたる熾烈なサバイバルレースです。8日間の戦いなんて、初めての経験ですよね。

「はい。(国内ツアー最終戦の)JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップが終わってから、『まだ残り2試合を戦うんだ』という気持ちで渡米しました。

 2020-2021年シーズンではシーズン終盤に体重が減ってしまって、昨季は体力的な面がひとつの課題となっていました。それで(昨季は)夏頃から体重を落とさないように補食を欠かさず、なんとか(体重を)キープして戦うことができました。Qシリーズに臨むうえで、コンディションに不安や問題はありませんでした」

――そのQシリーズの結果ですが、2023年シーズン前半戦で多くの出場機会を得られる20位以内には2打及ばず、出場機会がかなり限定される24位でフィニッシュ。米ツアーのメンバー資格こそ得られましたが、その結果を受けて悔し涙を流したと聞いています。

「やっぱり最終的には(8日間の戦いで)体力的にキツくなりましたね。また、自分ではそこまでプレッシャーを感じていないと思っていたんですけど、終わってみると、自分が自分自身にプレッシャーをかけていて、メンタル的には(今までで)一番苦しかった試合になりました。

 終わった時は、悔しいという気持ちの一方で、『やっと終わった』という......そんな感じもありました」

――自らかかけていたプレッシャーとはどういったものだったのでしょうか。

「まずは、20位以内に入らないといけないという重圧。これまで日本人のトップ選手たちは、Qシリーズを難なくクリアして米ツアーに参戦されています。自分も『失敗はできない』というプレッシャーがあったのだと思います。20位以内ということに対して、自分でバーを引きすぎちゃったな、と」

――「バー」というのは、どういったことでしょうか。

「20位以内までに絶対に入らないといけないと、自分のなかで(強く)線を引いてしまったんです。そこは、反省点でした」

――Qシリーズで西村プロを苦しめたのは、日本との芝質の違いでしょうか。それとも、飛距離でしょうか。

「苦しんだのは下(芝)がものすごくウェットで、キャリー勝負になったのもあります。今まで戦ってきたなかで、最も(海外の)他の選手との距離の差を痛感しましたし、コースが長く感じました。軽く50~60ヤード、オーバーされることもあって......。

 得意のショートゲームもなかなか生かせなくて。日本ツアーであれば、パー5でも3打目にはショートアイアンでしっかりチャンスにつけられればいいと考えてプレーできるんですけど、Qシリーズでは3打目でもウッドを持たされたり、ロングアイアンを持たざるを得なかったりすることが多くて......。自分の強みがまったく生かせませんでした。正直、『こんなところで戦っていけるのかな』と、思い始めてしまいました」

――西村プロにとって、Qシリーズの経験はゴルフ人生における"挫折"でしたか。

「終わった瞬間、『初めての挫折だ』と思いました。どう戦うことが正解だったのか、終わった瞬間はわかりませんでした。

 それでもう、帰国してからはスポンサーさんなどのお仕事を除いて、一切クラブを握りませんでした。Qシリーズが終わって、何もやりたくないというか、ちょっとした燃え尽き症候群みたいになってしまって......。

 そうして約2週間、ゴルフから離れる時間を過ごしていました。それは結果として、いろいろと考えるいい時間だったと思います。その期間に(前半戦の試合出場が限られたとしても)米ツアーに参戦する、という覚悟も決めました。(Qシリーズの挑戦も)当初は挫折だと思ったけれど、今から思えばいい経験だったのかな、と」

(つづく)

西村優菜(にしむら・ゆな)
2000年8月4日生まれ。大阪府出身。2019年にプロテストに合格。2020-2021シーズンからツアー本格参戦を果たし、いきなりツアー4勝をマーク。賞金ランキング5位という結果を残す。2022シーズンもツアー2勝を飾って、メルセデスランキング5位、賞金ランキング2位という好成績で終えた。同シーズン終了後、米ツアーの最終予選会に参戦。ツアーのメンバー資格を得て、今季は米ツアーに挑む。身長150cm。血液型O。