国内女子プロゴルフツアーがまもなく開幕する。今季も白熱した戦いが期待されるが、今年はどういった選手たちがツアーを引っ張って、女王争いを演じるのか。昨季の実績や今オフでの情報をもとにして、永久シード保持者の森口祐子プロに期待度の高い順に名前を…

国内女子プロゴルフツアーがまもなく開幕する。今季も白熱した戦いが期待されるが、今年はどういった選手たちがツアーを引っ張って、女王争いを演じるのか。昨季の実績や今オフでの情報をもとにして、永久シード保持者の森口祐子プロに期待度の高い順に名前を挙げてもらった――。



今季ツアーでも上位争いを演じるであろう、左から稲見萌寧、山下美夢有、西郷真央

山下美夢有(21歳)
(2022年シーズン優勝5回。メルセデスランキング1位)
 昨年の平均ストローク60台(69.9714/1位)という実績を考えると、一度ランキングトップになったからといって、モチベーションが下がるタイプではないと思うので、今季も昨年並みの活躍が期待できると思われます。

 ショットの正確性と勝負どころの安定感は抜群。現在の国内ツアーでは、最も"心・技・体"が整っている選手と言えます。

 シーズン途中で低調な時期がきた時、調子のいいライバルのことや他の選手が使っているクラブが気になったりするなど、メンタル面での迷いが生じて、自ら負のスパイラルに陥ったりしない限り、今季もランキングトップ5は外さないのではないでしょうか。

稲見萌寧(23歳)
(2022年シーズン優勝2回。メルセデスランキング3位)
 今オフの前半はトレーニング中心のメニューをこなしていたそうですが、確かに昨シーズンの彼女からはなんとなく気だるさを感じることがありました。それは、オリンピック出場を含めて2020-2021シーズンで相当なエネルギーを使った影響があったのかな、と。

 そんな昨季を経て、2023年はフィジカルを再強化。シーズンを通して集中力を維持させていく取り組みを、このオフにしてきたのかなと思います。

 昨季、パーオン率は山下さんに次いで2位。ショット力は山下さんと双璧ですから、"心・技・体"の充実が図れれば、賞金女王に輝いた2020-2021シーズンのような活躍が見られるはず。山下さんとの熾烈なトップ争いが期待されます。

小祝さくら(24歳)
(2022年シーズン優勝2回。メルセデスランキング7位)
 小祝さんは昨年からコーチを代えてスイングを改造してきました。その完成度が高まる今シーズンは、まさしく新たな"小祝さくら"を見せてくれると思います。

 今の女子プロのなかでは、メンタルの強さはトップクラス。ゴルフでは、人に負けまいとする闘志のような強さより、人のことを気にしてもしょうがないというメンタリティの強さのほうが必要とされることが多く、小祝さんのプレーぶりからは、それが人一倍あることを思わせます。

 昨年は1ラウンドあたりの平均パット数が33位でした。ストロークが悪いというよりも、入らなかったあとの仕草を見ると、ラインを読めていないのかなという感じを受けました。上位進出のポイントは、今オフでそのあたりの改善にどう取り組んできたか、でしょうか。

吉田優利(22歳)
(2022年シーズン優勝0回。メルセデスランキング6位)
 昨年は優勝がありませんでしたが、優勝を逸した試合は自滅ではなく、相手にいいプレーをされて競り負けたような形でした。ですから、ゴルフの調子自体はよくて、今年もその状態をキープしていると思います。

 昨年は、バーディー数、サンドセーブ率が1位(リカバリー率、バウンスバック率も1位)でしたが、これは彼女がすごく魅力的なゴルフをしている証拠です。バーディー狙いの攻撃的なゴルフをしているからこそ、バンカーに入るリスクが多くなるわけですが、それをカバーするサンドセーブ率も1位ということは、サンドウェッジのうまさはもちろん、その技をギャラリーの前で見せる度胸のよさも持ち合わせている、ということです。

 そんな吉田さんには、今年はもっと欲を持って、さらに上を目指してほしい。下の世代の追い上げも激しいので、"今年が勝負"というくらいの意識でやってほしいと思います。

西郷真央(21歳)
(2022年シーズン優勝5回。メルセデスランキング2位)
 昨シーズンはツアー序盤で5勝を挙げる活躍を見せましたが、後半戦は低迷。最終戦のJLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップでのゴルフは、それを象徴するような結果(35オーバーで最下位)に終わってしまいました。

 そこから、このオフの間にどこまで修正できるか。昨年の前半戦のようなゴルフに戻っているかどうかが、上昇へのカギとなりそうです。

 そして彼女は今季、国内ツアー開幕戦のダイキンオーキッドレディスを欠場。同週に行なわれる米ツアー、HSBC女子世界選手権(シンガポール)に出場するとのことです。

 私の経験上、海外の試合は自分のゴルフに集中し徹しきれる部分があるので、いいゴルフができることがあります。実際に西郷さんは、国内の試合で調子を崩し始めた昨年の夏場に、海外メジャーのアムンディ エビアン選手権に出場して、首位と2打差の3位タイという好成績を収めています。

 シーズン初戦を国内ではなく、海外の試合を選んだのは、昨季からの不安を残しているからか、あるいは、昨季終盤の不調は克服済みで、今季終了後に海外に挑戦する布石なのか。いずれにしても、今季初戦のプレーに注目したいと思います。

        ◆        ◆        ◆

森口プロにはここまで、今季ツアーで"女王争い"を演じそうな有力選手を挙げてもらったが、以降はそんな選手たちに対抗する選手、今季大いなる飛躍が見込まれる若手選手をピックアップしてもらった――。

川﨑春花(19歳)
(2022年シーズン優勝2回。メルセデスランキング15位)
 昨年の日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯でツアー初優勝を飾った時は、フロック的な見方もされていましたが、その後、4日間大会のNOBUTA GROUP マスターズGC レディースでも優勝。その実力の高さを証明しました。

 ツアー終了後の新人戦では、あるホールで、多くの選手が直接狙ってこれないピン位置に対して、彼女はピンをダイレクトに狙って攻めてきたんです。それを見た時に、『(他の若手とは)レベルが違うわ』といった衝撃を受けました。

 オフにインタビューをさせてもらったのですが、頭の回転が早く、何でも吸収したいという意識の高さには驚かされました。今年の目標を聞くと、「メルセデスランキング1位です」と言いきりましたから、本当に楽しみな存在です。

菅沼菜々(23歳)
(2022年シーズン優勝0回。メルセデスランキング8位)
 昨季、優勝はなかったものの、それでもメルセデスランキング8位というのはすごいですよね。アプローチが得意でチップインも多いのですが、そのアプローチが寄らなかった時に見せる物悲しげなが表情が印象的。また、ギャラリーの声援に応える姿も愛らしく、テレビ局の人から聞いた話では、このオフの出演オファーはトップクラスだったそうです。

 そうしたファンにとっては彼女の初優勝が待ち遠しいと思いますが、課題は試合を通じて安定したスコアをそろえることでしょう。彼女は大会期間中のどこか一日、スコアを崩すことがあって、結果的にそれで優勝できなかったということがありました。

 そういう意味ではこのオフ、3日間、4日間を通して安定して戦える体力とメンタル面の強化を図ることができたかどうか。その辺りがツアー初優勝へのポイントになるのかなと思います。

岩井千怜(20歳)
(2022年シーズン優勝2回。メルセデスランキング18位)
岩井明愛(20歳)
(2022年シーズン優勝0回。メルセデスランキング40位)
 昨季、ツアー本格参戦を果たした双子の岩井姉妹にも期待しています。NEC軽井沢72、CAT Ladiesと2週連続優勝を飾って一躍脚光を浴びた妹の千怜さんには、さらなる躍進が見込まれます。

 でも実は、当初は姉の明愛さんのほうが有望視されていたんです。最大の魅力は飛距離。昨年の住友生命Vitalityレディス 東海クラシックでの協会公認のドラコン大会では、穴井詩さんの302.3ヤードに次ぐ295ヤードで2位に入りました。

 その飛距離を武器に、世界でも通用する選手のひとり。来年にはパリ五輪も控えていますから、千怜さんともどもその存在を大いにアピールしてほしいと思います。

佐藤心結(19歳)
(2022年シーズン優勝0回。メルセデスランキング29位)
 ショット力や飛距離にアドバンテージを持つ選手。昨年はショートアイアンでグリーンを狙った時に、スピンバックしてグリーンからこぼれてしまうシーンが何度かありました。

 スイングスピードがあるからこその"ミス"で、裏を返せば、それだけアイアンのキレ味が強烈な証拠。女子でスピンコントロールを必要する選手が出てきたことに、ある種の驚きを覚えました。

 このオフ、スピンコントロールの練習をどれだけしてきたのか。その成果を見るのがとても楽しみです。