「得点板を見て、改めて『すごい試合をしたな』というふうに思います」 北海道稚内市で開催された第16回全農日本ミックスダブルスカーリング選手権。その決勝戦を振り返り、優勝した松村・谷田の松村千秋は笑顔を見せた。日本ミックスダブルス選手権を制し…

「得点板を見て、改めて『すごい試合をしたな』というふうに思います」

 北海道稚内市で開催された第16回全農日本ミックスダブルスカーリング選手権。その決勝戦を振り返り、優勝した松村・谷田の松村千秋は笑顔を見せた。



日本ミックスダブルス選手権を制した松村・谷田。左から松村千秋、谷田康真、清水絵美コーチ

 先手を奪ったのは、名勝負を繰り広げた対戦相手の小穴・青木だった。小穴桃里が正確なショットで大量得点の布石を作り、青木豪が持ち味である速いテイクで仕上げ、1エンドから4点を奪った。

 各エンド5投で8エンド制のミックスダブルス。松村・谷田にとっては、致命傷になりかねない失点だった。

 しかし今季、ミックスダブルスのペアとして日本で唯一、海外ツアーに参加した松村・谷田は冷静だった。遠征中、カナダやアメリカの初見のアイスに慣れないうちに大量リードを奪われたのは、一度や、二度ではない。

「私のミスで4点取られたところもあるので、『やっちゃったな~』と思ったんですけれど、そのあと『まだ7エンドある』と谷田選手に声がけしてもらって、気持ちを切り替えることができた」と松村。ペアを組む谷田も「相手に複数点を取られるのを恐れていては攻めきれずに終わってしまう」と、いきなりの大量失点に意気消沈せず、残り7エンドから逆算して攻めへとギアを切り替えた。

 2エンドに1点を返すと、3エンドにスチール。4エンドでは、相手のパワープレーをうまくいなして再度スチール。ハーフタイムまでにコツコツとビハインドを減らしてゆく。

 そして、5エンドには相手に1点を与えて後攻を得て、迎えた6エンドにパワープレーを選択した。その勝負の6エンドもどちらかと言えば、小穴と青木の巧みなハウスマネジメントの前に受け身を強いられる形となったが、松村が乾坤一擲の最終投で、鮮やかなダブルテイクアウトを決めた。

「谷田選手の言った(指示の)位置にしっかり投げるだけでした。今季、トップ(ウエイト)のショットは決まっている印象だったので、いいイメージで自信を持って投げることができた」

 会心の一投を松村はそう振り返ったが、これで大量4点を呼び込んで逆転に成功。ハウス内が混み合うことの多いミックスダブルスの醍醐味が凝縮されたショットだった。

 その後、続く7エンドに1点を返され、最終8エンドでも食い下がる小穴・青木にスチールを許して延長戦に突入するが、「エキストラ(延長)になって勝ち抜けるメンタルはあったので、焦ってはいなかった」と松村。戦いが終わるまで冷静さを失わずに最善を尽くし、最後にきっちり1点を奪って8-7のシーソーゲームを制した。

 試合後、「劣勢であっても、優勢であっても、大きくメンタルが上下しないっていうのは、ミックスダブルでは大事だと海外遠征で感じていた」と総括したのは、谷田だ。

「4点のリードで、少し緩みがあったかもしれない」(青木)
「(松村・谷田は)試合の経験があって、勝ち方を知っていた」(小穴)

 それら対戦相手のコメントと併せて、4点ビハインドでも、2点リードでも攻めの気持ちを忘れずに、よりよいポジションを確保する姿勢がブレなかったことが、松村・谷田の最大の勝因と言えるのではないだろうか。

 苦しみながらも、終わってみれば全勝優勝で2度目の栄冠を手にした松村・谷田は、4月に韓国・江陵市で開催される世界選手権に出場する。チームとしては昨年に続き、2度目の世界挑戦だ。

 ミックスダブルスでは、日本はいまだ五輪の舞台は未経験だ。2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ大会で初出場を果たすためには、世界選手権で安定した成績を求められる。

 日本の過去最高成績は、藤澤・山口(藤澤五月&山口剛史)が2018年と2019年に記録した5位。昨年の大会では9位に終わった松村・谷田だが、「まずはその(過去最高成績の)上を目指します」と谷田は力強く語った。