宮城県蔵王町の蔵王町総合運動公園で1月22日、シクロクロスのシリーズ戦JCXの第8戦として「東北シクロクロス第4戦ざおうさまカップ」が開催された。過去にはUCI(世界自転車競技連合)認定の国際レースとしても開催されており、東北エリアではメジ…

宮城県蔵王町の蔵王町総合運動公園で1月22日、シクロクロスのシリーズ戦JCXの第8戦として「東北シクロクロス第4戦ざおうさまカップ」が開催された。過去にはUCI(世界自転車競技連合)認定の国際レースとしても開催されており、東北エリアではメジャーなコースである。

コースは1周2.6km。グラウンドや河川敷、調整池も含まれる公園の多彩なフィールドを活かし、設営された。キャンバーと呼ばれる難易度の高い斜面が多く含まれることも、このコースの特徴と言えよう。キャンバー上を上下に這うように設営されたコースを走るにはテクニックが必要で、多くの選手を苦しめるセクションとなる。「忍者返し」と呼ばれる急な上りや「蔵王のお釜」と名付けられた小山の周りを回るなど、遊びゴコロのある特徴的なセクションも設定された。



蔵王町総合運動公園の環境を上手く活かし設営された特設コース



コースにはテクニックを要するキャンバー(斜面)が多く含まれる



「忍者返し」など急な斜面も多く、いかにカラダをうまく使って走るかがキモとなる

このレースは、JCXのシリーズ戦としては1カ月ぶりの開催となる。前週に開催された全日本選手権で男子の王者となった織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は世界選手権前の調整レースのため、欧州に旅立ち、欠場したが、準優勝の沢田時(宇都宮ブリッツェン)らが参戦した。女子はチャンピオンとなった小川咲絵(AX cyclocross team)が、女王となって初のレースに臨んだ。
過去の蔵王でのレースは、雪の中の開催も少なくなかったが、今年は降雪がなく、曇り空の下での開催に。路面は完全なドライではないが、滑りやすいほどの水分も含んでおらず、過去の開催と比べると、かなり走りやすいコンディションとなった。

女子エリートは9名の選手が参戦。今年の全日本は4位で終えたものの、前年度のチャンピオンである渡部春雅(明治大学)らもスタートラインに並んだ。好スタートを切ったのは女王の小川。このまま行くかと思われたが、渡部が小川をかわし、先頭に躍り出た。渡部はミスなく力強く走り、小川との差を開きにかかった。



先行する渡部春雅(明治大学)に迫る小川咲絵(AX cyclocross team)

だが、小川もペースを取り戻し、じわじわと追い上げ、2周目には渡部に追いついた。小川と渡部、実力者2名が連れ立って、サーキットを走った。



独走態勢に入り、コースをひた走る小川

3周目、小川はテクニックを生かし、キャンバーの難セクションで加速、渡部を振り切りにかかる。渡部は食らいつこうとしたが、小川はそのまま独走態勢に入った。



単独3位で走り、表彰台を獲得した竹村舞葉(SHIDO-WORKS)

先頭で快調にラップを重ねる小川。渡部も堅実な走りで追い上げようとするが、差が埋まらない。小川は、最速のラップタイムを刻みながら最後まで走り切り、またもや独走でフィニッシュ。今シーズン13勝目となる勝利を挙げたのだった。



独走優勝した小川は、連勝記録を伸ばし、JCX首位も確実にした



女子3名の表彰台。完走したのも、この3名のみだった

基準となる先頭選手のスピードが速かったため、多くの選手がタイムアウトとなり、このレースの完走者は3名のみ。上位2名以外では唯一、最終周回まで走ることができた竹村舞葉(SHIDO-WORKS)が3位に入った。

※男子エリートのレポートは次のページへ→

続いては、男子エリートのレースが開催された。上腕骨の骨折を押して全日本を走った小坂光(宇都宮ブリッツェン)も欠場となり、今回の大本命は、沢田時だった。だが、ここまでのレースで常に上位に入っている加藤健悟(臼杵レーシング)ら実力者の姿も見える。31名がスタートラインについた。



スタートラインに並ぶ男子エリートカテゴリーの選手

加藤が好スタートを切り、第1コーナーに先頭で飛び込んだ。だが、沢田はちょっとした隙を見逃さず、落ち着いて加藤をかわすと、すぐに先頭を奪取する。



ポールポジションを確保した加藤健悟(臼杵レーシング)



加藤をかわし、先頭に出た沢田時(宇都宮ブリッツェン)

1周目を最速のラップタイムで終えた沢田は、そのまま無駄のない走りで先頭を独走した。3周目には沢田と後続選手とのタイム差は14秒にまで開いた。大きなミスもなく、ペースが落ちることもない。沢田はこの日はバニーホップでシケイン(障害物)を跳び、ほぼ全周回において最速のラップタイムを刻み続けた。



沢田を追う追走集団が形成される



バニーホップでシケインを跳ぶ沢田

2位争いには6名の集団が形成され、混沌とした状況に。難コースに選手のミスも散発し、1人、また1人と脱落して行った。
終盤まで追走グループに残れたのは、加藤と舟山祥弘、積田連(ともにSNEL CYCLOCROSS TEAM)の3名のみだった。



加藤と舟山祥弘、積田連(ともにSNEL CYCLOCROSS TEAM )が熾烈な2位争いを繰り広げた

沢田はこの第2グループの追走もものともせず、終盤に向け、ペースアップする余裕すら見せる。まさに盤石な走りで、悠々と両手を挙げてフィニッシュ。後続に1分以上の差をつけての勝利だった。今季はロードレースでの骨折からの復活に苦しんだが、今季初のJCXシリーズ戦優勝とともに、宇都宮ブリッツェンへの移籍後、初優勝を挙げた。



独走でフィニッシュに飛び込んだ沢田。移籍後初優勝を決めた

SNELの2名対加藤の戦いとなった2位争いは、決着がつかないまま最終周回へ。加藤は絶妙なタイミングに抜け出し、舟山と積田を置き去りにすると、そのままフィニッシュまで逃げ切り、2位の座を獲得。3位には加藤を追って、わずかに先行した舟山が入った。



男子上位3名。熾烈な戦いを経て表彰台を勝ち取った選手にも大きな拍手が送られた

初めて走るコースながら、貪欲に勝ちを狙った沢田。ライバル不在のレースではあったが「自分の走りで勝つことを目標にしてきた」と語る。「ミスなく、踏むところは踏んで、しっかり走ることができた」とレースを振り返った。全日本では、シケインをバニーホップで跳ぶ織田に敗れたことを受け、沢田はこのレースの前にバニーホップの精度を上げるトレーニングに挑んできた。努力の甲斐あって、完璧に近い形で勝利することができたのだろう。移籍先の宇都宮ブリッツェンにとっても、今シーズンの初勝利を挙げることになり、幸先のよいスタートになった。
女子王者の小川は、このレースの勝利で、早くも今シーズンのJCXシリーズの総合優勝を確定させることができ、ほっとした笑顔を浮かべていた。
シーズンも終盤となり、アグレッシブに戦うシクロクロッサーたちが、今季の最後にどんな走りを見せるのか、さらなる注目を集めた__。

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【JCXシリーズ第8戦】
【結果】東北シクロクロス第4戦ざおうさまカップ
男子エリート

1位/沢田時(宇都宮ブリッツェン)57分55秒
2位/加藤健悟(臼杵レーシング)+1分3秒
3位/舟山祥弘(SNEL CYCLOCROSS TEAM)+1分8秒
4位/積田連(SNEL CYCLOCROSS TEAM)+1分10秒
5位/松田賢太郎 +1分26秒

女子エリート
1位/小川咲絵(AX cyclocross team)42分8秒
2位/渡部春雅(明治大学)+1分7秒
3位/竹村舞葉(SHIDO-WORKS)+7分2秒

画像:Satoshi ODA

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