現在、関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCの選手兼コーチであり、東京大学運動会ア式蹴球部のコーチも務める岩…

 現在、関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCの選手兼コーチであり、東京大学運動会ア式蹴球部のコーチも務める岩政大樹氏。かつては鹿島アントラーズの主力ディフェンダーとして2007~2009年の3連覇に貢献。日本代表経験もあり、J2やタイでもプレーするなど様々な引き出しを持つ岩政氏が、自らの考えを表現するプレゼンテーションに挑戦した。


2010年のワールドカップ南アフリカ大会で日本代表に選出された岩政大樹氏

 岩政氏のプレゼンが行なわれたのは、スポーツを伝える”言葉”を探求するライブ・イベント『A.L.E.14(エイル・フォーティーン)』♯5(5月29日、東京・恵比寿のアクトスクエアにて開催)。『GET SPORTS』(テレビ朝日)や『筋肉番付』(TBS)など、数多くのスポーツ番組の企画・構成を手掛けてきた伊藤滋之氏が「あらゆるスポーツに共通する動きや思考を”言語化”し、スポーツを進化させたい」と構想し、これに共鳴した元プロサッカー選手で現在はスポーツジャーナリストとして活躍している中西哲生氏とともに立ち上げたイベントだ。

 東京学芸大学出身で、中学・高校の数学の教員免許を持つ岩政氏。プレゼンのテーマとして選んだのは、「勝てるチーム」についてと、「ディフェンダーとしてのプレーへのこだわり」だった。

“勝てるチーム”とそうでないチームとの違い

 自身が2004から2013年まで在籍した鹿島アントラーズを例にとり、「アントラーズには浮き沈みというものがありません。いつの時代も優勝し続けていた」と、”勝てるチーム”とそうでないチームの違いについて語った。

 岩政氏は、鹿島の戦いぶりを「勝つことからブレない。具体的には、ダメなら変えるということ」と振り返り、さらにこう力説する。

「強いチームには、相手や試合の状況によって、勝つための選択肢がいくつかあります。負けるチームというのは、一度傾いてしまうと、そこから戻ってこようとしません。最初から選択肢がないわけではありません。ただ、なんとなくあやふやになって、極端に振り切って可能性を狭めてしまうのです。『当たって砕けろ』ではなく、当たってダメだと思ったら、当たり方を変えてみたり、タイミングを変えてみたり……目の前の相手に勝つための方法を考えなければいけません。要するに、勝負事は一択になってしまったら勝てません。考えることをやめてしまったら、勝負に勝つことはできません。勝てるチームとそうでないチームの差は、選択肢があるか、ないかの違いです」

ディフェンダーの「切る」「滑る」「読む」についての考え方

 イベントの後半は、ディフェンダーとして「切る」「滑る」「読む」という3つのキーワードを元にプレゼンを行なった。

 まず、「切る」というのは相手の”障害物”になることだという。

「うまいディフェンダーはゴールキーパーと連携します。ゴールキーパーが、右側の方が防ぎやすいなと思っているときは、あえて逆側(左側)に立ちます。むやみに、ただ相手選手の正面に立とうとすると、コースを空けてしまうと同時に、ゴールキーパーの目線からボールを隠してしまう状況になってしまう。それによって、ゴールを奪われる確率が上がってしまうんです」

 ゴールキーパーが防ぎづらい方をディフェンダーが「切る」。この判断こそがディフェンダーに求められる能力なのだ。

「滑る」は、スライディングについての捉え方だ。

「相手のシュートやクロスに対して、スライディングで防ぐシーンがあります。ただやみくもにスライディングしてしまうと後戻りできません。スライディングは最後の手段だと思ってください」

 日本では「滑る=頑張る」という認識を持たれがちだが、岩政氏は最後まで滑らないことが重要だと伝えた。

 最後は「読む」について。はたして、読みは重要なのかということについて、岩政氏はこう断言する。

「読みでプレーするのは並みのディフェンダー。判断して対応するのが一流のディフェンダーと言えます」

 なぜなら、自分よりレベルの高い一流選手と対峙する際、読みを外されることがよくある。だからこそ、プレーを読むのではなく、ロジカルに考えて、最後に判断して対応すべきだと岩政氏は言うのだ。

 また、セットプレーにおけるヘディングでゴールを奪う極意についても語られた。

「ひと言でいうと駆け引きです。相手が考えている方の逆をとればいいんです。ひとつ前のセットプレーで相手がどういう動きをしていたかなどを振り返って、たとえば前に行くことを警戒していると思ったら、あえて『前に飛び込みますよ』という顔をして、最後の瞬間に変えるとか、ちょっとした駆け引きをするんです。速さや高さというものがクローズアップされがちなディフェンダーですが、奥深さを知ってもらうことでサッカーの面白さも変わってくると思います」

“強いチーム”のあり方についても、ディフェンスについても、セットプレーから得点を狙うシーンでも、いずれも共通しているのは柔軟な対応力。この柔軟さこそが、岩政氏が長年、様々な環境に身を投じてもプレーを続けられる理由なのだろう。岩政氏はこのようなプレゼンに臨んだのは初めてのことだが、今後も自らの経験をアウトプットして多くの人に伝えることを期待したい。

次回の『ALE14』は6月20日(火)開催。競泳の元日本代表・伊藤華英氏がプレゼンターとして登壇する(東京・恵比寿アクトスクエアにて開催)。

『ALE14』

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