(写真:六川 則夫) 試合後の光景は、アウェイの豪州戦とはあまりにも対照的だった。豪州戦では、先制しながら引き分けに持ち込まれたが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、わざわざサポーターの前まで来て、手を挙げて応援に応えていた。このイラク戦も…


(写真:六川 則夫)

 試合後の光景は、アウェイの豪州戦とはあまりにも対照的だった。豪州戦では、先制しながら引き分けに持ち込まれたが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、わざわざサポーターの前まで来て、手を挙げて応援に応えていた。このイラク戦も、先制しながら追い付かれるという同じ展開だった。しかし、闘将はしばらくベンチにつくばって、立ち上がることができなかった。同じ勝ち点1に変わりないが、すでに予選敗退が決まっているイラクからの勝ち点1は、想定外だったのだろう。首位に立っているとはいえ、このあと続く豪州、サウジアラビアとの対戦を考えると、正直不安感はぬぐえない。

 シリア戦、イラク戦と続く吉田麻也の不安定なプレー、判断力の甘さが、いまの日本代表のチーム状況を象徴している。6月の2戦で、香川真司、山口蛍、井手口陽介、酒井宏樹、久保裕也と、チームはさながら野戦病院化してしまった。イラク戦で積み上げた勝ち点1は良しとしても、監督と選手たちは己のメンタル、フィジカルを、ホームの豪州戦に向けて、どれだけ上げていけるのか—。現時点では先行き不透明である。

 イラク戦では原口元気をトップ下に置き、本田圭佑を右、久保を左に配置したが、本来のポジションではなかった原口と久保は、精彩を欠いていた。ゴール裏から見ていても、この二人のプレーに怖さは感じられなかった。本田を右に置いたのは、イラクの左サイドをケアする意図があったのかもしれないが、大迫勇也に加えて、原口と久保の良さを、指揮官は自らの采配で消してしまった。策士が、策に溺れてしまったのだ。

 この試合で収穫を挙げるとしたら、勝ち点1に加えて、井手口と遠藤航の安定したプレーぶりだろう。遠藤は所属する浦和では、ボランチのポジションでプレーしていないが、イラク戦での速攻を摘む守備のスキルと判断力の高さは、ポジティブな驚きだった。

 8月31日に行われるホームの豪州戦は、日本サッカーの現在(いま)、そして、未来が問われる大一番となる。両者の勝ち点差は『1』。豪州は当然順位逆転を狙ってくるだろう。日本はそれまでにどうチームを再構成するのか期待したい。ブラジルW杯のアジア最終予選に続いて、豪州戦でロシア行きを手繰り寄せるゴールを決めるのは、この男しかいない。もちろん本田圭祐である。

文・六川則夫