(写真:六川 則夫) 酷暑と負傷者続出の中、1ポイントを持ち帰れたのは大きい。ゲームプランと試合展開を考えると1ポイントでも仕方がない。 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は運動量と守備力のある選手を多く招集していた。懸念していたほどピッチコン…


(写真:六川 則夫)

 酷暑と負傷者続出の中、1ポイントを持ち帰れたのは大きい。ゲームプランと試合展開を考えると1ポイントでも仕方がない。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は運動量と守備力のある選手を多く招集していた。懸念していたほどピッチコンディションは悪くなさそうだったが、予想どおりの展開で試合は進んでいたと思う。ただ、シリア戦で[4-3-3]が機能せず、負傷者やコンディションが整わない選手が続出したことで、ベースである[4-2-3-1]とミドルゾーンでのプレスとカウンターの組み合わせに回帰するのが精一杯だったという印象である。

 本来はベースに対戦相手に合わせた人選と作戦をプラスするのが得意な監督だが、今回はその余裕がなかった。1-0のまま試合を終えられれば、それでもプランどおりと言えたのだろうが、後半にミス絡みで追い付かれ、もう1点取るには攻撃力が貧弱だった。もともと守備的なプランの上、負傷者で交代カードを使ってしまい打つ手がなかった。

 イラクの同点ゴールは波状攻撃から生まれている。最終的には吉田麻也がGK川島永嗣に取らせようとしてボールを流したところで、イラクの選手につつかれ、こぼれ球を蹴り込まれた。吉田がしっかりと相手をブロックしてボールを守るか、クリアしてしまえばなかった失点だ。

 ただ、この失点は遠藤航が釣り出されたところから始まっている。ボールに食い付き過ぎるのは、このチームでときどき見られる悪癖だ。しかし、それ以前に押し込まれたままになっていて全体が引き過ぎだった。吉田、昌子源のコンビは空中戦に強くて引いた守備でも安定感があった。とはいえ、あれだけ相手を引き込んでしまえばミスもゴール前で起こってしまう。暑さでスタミナを奪われ、ラインを上げてブロックを押し出す“足”が残っていなかった。

 先発メンバーでゲームを作れる選手は本田圭佑しかおらず、しかも右サイド。相手にボールを持たせるプランだったわけだが、これでは手数が限られて当然である。カウンターで絶対的な優位性を示せるスピードのあるFWがいないので、アプローチはコンビネーション頼み。そこで軸になれる選手が少な過ぎた。もちろんそれを承知で守備優先にしているのだから2点目が取れなくても仕方がないとしか言いようがない。

 せめて原口元気を残し、足を痛めて走れなくなっていた久保裕也をアウトしたほうが良かったかもしれないが、これも結果論である。

文・西部謙司