(写真:六川則夫) アウェイ(中立地)でイラクと1-1。“W杯アジア最終予選はここまでアウェイで負けなし”なのだから結果としては悪くはない。だが、内容はとても褒められたものではなかった。負傷者続出とい…


(写真:六川則夫)

 アウェイ(中立地)でイラクと1-1。“W杯アジア最終予選はここまでアウェイで負けなし”なのだから結果としては悪くはない。だが、内容はとても褒められたものではなかった。負傷者続出という状況やコンディションを考慮したとしても、だ。前半の内容は悪くなかった。良かったのは選手の距離感。前線の選手が戻って守備に加わり、最終予選初出場の遠藤航と日本代表初先発の井手口陽介が高い位置までボールを追ったおかげで前線と中盤の間に大きなギャップが生まれず、守備陣もうまくラインコントロールできていた。

 距離感さえ良ければ、ピッチが悪くてもパスを回せるし、本田圭佑、大迫勇也、原口元気、久保裕也はイラクの屈強なDFとも互角以上に戦える。連動して守備ができればイラクの個の力を封じることもできる。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督がようやく集団的サッカーに切り替えたのか、それとも選手たちがシリア戦の内容に危機感を抱いた結果なのか…。いずれにせよ、前半の戦い方は期待を抱かせるに十分だった。

 だが、後半に入るとそれがバラバラになってしまった。前線の欧州組はコンディション調整に失敗したようで立ち上がりから動きが落ち、MF陣は押し込まれて位置を下げてしまう。結果として、これまでの試合と同じように中盤に大きなスペースが生まれ、イラクにセカンドボールを拾いまくられてしまった。

 本当なら、前線3人全員を交代させたいところだったが、故障による交代が相次いで修正は不可能になってしまった。そして、最後は吉田麻也とGK川島永嗣の連係ミスで同点とされてしまったのだが、勝ち切れなかった根本的原因は“スペースを消しながら集団で戦う”という基本戦術が確立されていないことだ。

 欧州組のコンディションが悪かったこと(6月の戦いを何度も経験している本田はしっかり調整できていたようだ)。負傷者が相次いで新メンバーを使わざるを得なかったこと。ピッチコンディションや暑さなども含め、気の毒な状況ではあった。

 しかし、そんなことは事前に分かっていたことだ。コンディショニングに問題はなかったのか。2次予選の段階からもっと積極的に若手を試しておくべきだったのではないか。直前の準備試合を涼しい東京で戦ったのは正しい選択だったのか。苦境に追い込まれたのは、すべて自分たちの責任である。

文・後藤健生