WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 今季メジャーの第2戦、全米オープン(6月15日~18日)が開幕した。今年は、ウィスコンシン州のミルウォーキーから北西に約50km行った、「エリン」という馴染みの薄い小さな町で行な…



WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 今季メジャーの第2戦、全米オープン(6月15日~18日)が開幕した。今年は、ウィスコンシン州のミルウォーキーから北西に約50km行った、「エリン」という馴染みの薄い小さな町で行なわれている。舞台となるのも「エリンヒルズ」という、これまた一般的にはほとんど知られていないコースだ。

 草原が果てしなく続くなか、突如「ここはスコットランドか?」と見間違うようなリンクスタイプのゴルフコースが出現する。それが、今回の会場となるエリンヒルズ。誕生したのは2006年で、地元のビジネスマンであるボブ・ラング氏によって創設された。

 ラング氏は、誕生日やクリスマスなどの際にアメリカで広く使われているグリーティングカードによって財を成した億万長者。そんな彼は大のゴルフ好きで、それが高じて「この町に大自然を生かした本物のリンクスコースを作りたい」と決意したという。そして、コース設計家のロン・ウィッテン、ダナ・フライ、マイケル・ハードザンを招聘し、3人のコラボによって誕生したのが、エリンヒルズである。

 大会を前にして公式練習が始まると、世界のトッププロたちがこぞってその難易度を口にした。非常に距離が長いコースだが、そこにはたった6本の木しかない。風が吹けば、遮るものがないゆえ、途端に難易度が増すのだ。さらに、長いフェスキューに打ち込んでしまうと、ほとんどボールは見つからないという。

 そもそも厳しいセッティングの全米オープンは、パー71、パー70で行なわれるのが最近の通例だった。それが今回は、全長7741ヤード、パー72。パー72で開催されるのは、1992年のペブルビーチ大会以来、実に25年ぶりとなる。

 それだけ距離もあって、難しいという証拠だろう。天候によって、今年の優勝スコアは”E(イーブン)”になるのでは? という予想も出ているほど。週の初めには大きなストームに見舞われたため、ボールが転がらずに距離は一層長く感じるというから、なおさらロースコアの争いになりそうだ。

 さて、全米オープンにおける日本勢の活躍はどうなのか。

 過去を振り返って、まず忘れられないのは、1980年。バルタスロール(ニュージャージー州)での、青木功とジャック・ニクラウス(アメリカ)が演じた死闘だ。

 両者が首位タイで迎えた最終日。ふたりは最終組で回って、まずはニクラウスが3番でバーディーを奪って、ボギーを喫した青木に2打差をつけた。その後も好調なニクラウスだったが、青木もカラーからのロングパットを決めるなど食い下がり、互いに一歩も譲らない展開が続いた。

 そうして迎えた終盤、17番でニクラウスがバーディーを決めると、青木もバーディー。”帝王”相手に青木も最後まで粘りを見せた。だが最終18番でも、ともにバーディーを奪って、結局2打差のままニクラウスが頂点に立った。ニクラウスにとっては、16回目のメジャー制覇となった。

 2位に甘んじた青木だったが、この戦いによって「世界の青木」と呼ばれるようになる。そして、その渋いパッティングスタイルで、アメリカでも一躍人気選手となった。ただ、のちに青木はこうした現象について、こう振り返っている。

「あれは、ジャックに挑んで負けたから人気者になれた。もし勝っていたら、きっとあんなに温かくは迎えられなかったかもしれない」

 アメリカでは、やはり日本勢というのは外国勢。つまり、日本勢とすれば”敵地”での戦いとなる。青木の言葉に、そのことを改めて痛感させられた。

 日本勢による全米オープン制覇の期待がかかった試合がもうひとつある。2004年、シネコックヒルズで戦った丸山茂樹だ。

 グリーンが恐ろしく硬く、かなりの難コースだった。そこで丸山は、初日、2日目と首位に立った。3日目に順位を落としたものの、最終日は首位と3打差の4位でスタート。逆転勝利への期待はまだまだ大きく残っていた。

 しかしながら、最終的にはレティーフ・グーセン(南アフリカ)が優勝。丸山は4位に終わった。それでも、メジャーでは自己最高の成績を残し、日本人がメジャータイトルを手にする可能性があることを証明した。そういう意味では、非常に価値のある一戦だった。

 そして、今年の全米オープンには、世界ランキング4位の松山英樹(25歳)をはじめ、谷原秀人(38歳)、宮里優作(36歳)、池田勇太(31歳)、小平智(27歳)、今平周吾(24歳)と、6人の日本勢が参戦する。


全米オープンでの活躍が期待される松山英樹

 無論、全員にメジャー初制覇のチャンスはあるけれども、現実的には松山が最もメジャータイトルに近い位置にいることは間違いないだろう。

「もちろん、全米オープンで勝ちたいという思いは強い。でも、あまり(優勝を)意識しないようにがんばりたい」

 大会を目前にして、そう話した松山。昨秋から続いていた絶好調な状態からは今、やや下降気味にある。とりわけ「自宅のコースでは絶好調なのに、(大会の)会場に来るとおかしくなる」というショットの不振が続いている。

 ただ、そうした状況にあっても、「(2週間前の)メモリアルトーナメントのときよりは、少しはいいのかな」と、上向きな状態にあるのは好材料だ。

「優勝を目指したいですけど、まあ4日間あるので、その一日、一日を大事にしていきたい。初日から出遅れないように、我慢強くやっていきたい」

 はたして、松山は悲願のメジャー制覇を実現できるのか。その奮闘ぶりに注目である。