日本一の大きさを誇る湖、琵琶湖に突き出した草津市烏丸半島で11月20日、JCXシリーズ第5戦となる「関西シクロクロス琵琶湖グランプリ」が開催された。このレースはUCI(世界自転車競技連合)認定の国際レースであり、上位入賞者にはUCIポイント…

日本一の大きさを誇る湖、琵琶湖に突き出した草津市烏丸半島で11月20日、JCXシリーズ第5戦となる「関西シクロクロス琵琶湖グランプリ」が開催された。このレースはUCI(世界自転車競技連合)認定の国際レースであり、上位入賞者にはUCIポイントが付与される重要なレースとなる。



草津市烏丸半島で琵琶湖グランプリが開催された

琵琶湖を回るサイクリングルートは「ビワイチ」と呼ばれ愛されて来た。ナショナルサイクルルートに指定されており、琵琶湖に自転車のイメージが定着しつつある。実は、琵琶湖付近の会場でのシクロクロスのレースの歴史は古く、レース会場のロケーションのよさや、それぞれのコースの特徴が際立ち、観戦が楽しいことからも、毎年多くの参加者、観客を集めて開催されている。
この烏丸半島のコースのフルコースは2.9km。ほぼ平坦な芝生エリアに設営されるが、緩やかな起伏を活かし設定されたキャンバーと呼ばれる斜面がこのコースの大きな特徴だ。



このコースにはキャンバー(斜面)が多く設定されている

路面は、前夜の雨の影響で水を含んでおり、ドロドロではないにしても、やや滑りやすいコンディション。泥と草で覆われたキャンバーをいかにクリアするかが勝負の鍵を握ることになりそうだ。テクニックに加え、乗車と降車の判断力も求められるレースになることが予想された。



テクニックとパワーが求められる上りも含まれている

このレースは、日本でのシクロクロス人気の火付け役となった人気のリーグ「関西シクロクロス」の一戦として運営された。朝は、まず50代のカテゴリーからスタート。そこから男女のU17、U15と、30代、40代のマスターズ、ジュニア、未就学児のレースが午前中に開かれ、午後からUCIレースとなる男女エリートのレースが開催された。

女子エリートでは、日本人女子選手で唯一海外の最高峰のワールドツアーチームに所属する與那嶺恵理(Human Powered Health)が、パワーとテクニックのバランスの取れた走りで独走し、そのまま優勝を決めた。2位以下に2分半近い差を開けての勝利だった。



難コースをかろやかに独走する與那嶺恵理(Human Powered Health)



バイクのトラブルに見舞われ、押してピットまで走る小川咲絵(AX cyclocross team)

2位には、不運にもバイクにメカトラブルが起こり、対応での遅れから挽回できなかった小川咲絵(AX cyclocross team)が、3位には若手ながら健闘した石田唯(早稲田大学)が入っている。



難コースの中、3位に入る石田唯(早稲田大学)



女子エリートの上位3名。4年ぶりにシクロクロスでの優勝を決めた與那嶺、2位の小川、3位の石田唯

続く男子エリートには、強豪選手が揃った。MTBをメインに、ロード、シクロクロスを走る沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が久しぶりにエントリー。今年ロードレースで転倒、鎖骨を骨折して以来、まだ完全回復とは言えない状況にあるというが、1月中旬に開催されるシクロクロスの全日本選手権には意欲を持って準備をしているという。今季ここまでのレースで連勝を飾っている織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、全日本チャンピオンジャージを着る小坂光(宇都宮ブリッツェン)ら、近年トップを競い合っている主力選手が肩を並べるスタートとなった。

スタートの号砲が鳴り、最初に飛び出し、ホールショットを取ったのは沢田だった。小坂、織田が後に続く。この主力選手3名が集団を作り、レースの先頭を走る。



スタートで飛び出したのは沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)。すぐ後ろに小坂光(宇都宮ブリッツェン)が続く



巧みなテクニックでキャンバーを走る沢田。 1周目から沢田、小坂、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)の3名のトップグループが構成された

3名は互いの調子を探り合いながら2周目に入るが、沢田と少し距離が開いたタイミングで、織田がキレのよいアタックを繰り出した。後に「身体がキツかった」と語った沢田は、織田の加速に反応できず、織田はするすると先行していく。小坂もバイクコントロールに手間取り、差を詰めることができなかった。そのまま差は30秒程度まで開き、織田はこのレースでも今季の勝ちパターンである独走態勢に入ることになった。



織田がタイミングを見極め、キレのあるアタックを繰り出し、先頭に躍り出た

小坂はうまくリズムを掴めず、沢田からも遅れてしまう。織田、沢田、小坂と、単独で走り、それぞれの間におよそ30秒差を保ち、周回を重ねていく。



先行した織田を追う沢田。その差はなかなか詰まらず、周回を追うごとに開いて行った



小坂はこの日、リズムに乗って走ることができず、じわじわと遅れてしまった

先頭を行く織田が刻むラップタイムは、他の2名より速く、周回を重ねるごとに、その差は開いていった。
そして織田は、2位に1分30秒近い差を保ったまま、悠然とフィニッシュに飛び込み、連勝をまた一つ伸ばした。



両手を上げ、フィニッシュする織田。今季は負けなしの圧倒的な強さを見せている



冒頭に抜け出した先頭3名がそのままレースを走り抜き、表彰台となった

2位には沢田が、その30秒後に小坂が入り、表彰台を確定させた。織田は「落ち着いて、冷静に、攻めるところと行くところとでメリハリをつけて走り、独走優勝できた」と振り返る。
小坂は「後半は少しペースアップしてレースを終えることができたが、自分の中では納得できるレースではなかった」と反省の弁を述べつつ、全日本連覇への意欲もにじませた。
ここからJCXシリーズは1カ月ほど開き、次戦はUCIレースが2戦連戦で組み込まれた宇都宮シクロクロス。今季は開幕が早く、JCF(自転車競技連盟)のシリーズ戦の存在もあり、ロードやMTBレースと並行して参戦し、疲労の色が濃い選手たちだったが、ここで一息つくことになる。調整を終え、どんな形で参戦してくるのであろうか__。

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【JCXシリーズ第5戦】
【結果】関西シクロクロス琵琶湖グランプリ
UCI女子エリート

1位/與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス)44:15
2位/小川咲絵(AX cyclocross team)+2:28
3位/石田唯(早稲田大学)+4:23

男子エリート
1位/織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)1:00:14
2位/沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)+1:26
3位/小坂光(宇都宮ブリッツェン)+1:56
4位/堀川滉太(NEBcycling)+2:47
5位/加藤健悟(臼杵レーシング)+3:39

画像:Satoshi ODA

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