昨年末に行なわれた2歳牝馬のGI、阪神ジュベナイルフィリーズ(12月11日/阪神・芝1600m)は、1番人気リバティアイランド(牝3歳/父ドゥラメンテ)が勝利。2馬身半差の完勝劇を披露した。同馬はデビュー当時から評判が高く、すでに今春の3…

 昨年末に行なわれた2歳牝馬のGI、阪神ジュベナイルフィリーズ(12月11日/阪神・芝1600m)は、1番人気リバティアイランド(牝3歳/父ドゥラメンテ)が勝利。2馬身半差の完勝劇を披露した。同馬はデビュー当時から評判が高く、すでに今春の3歳牝馬クラシックの最有力候補に挙げられている。

 とはいえ、クラシック本番までには、まだ時間がある。リバティアイランドをしのぐ新星の登場に期待する声も少なくない。そこで今回、スポーツ紙や専門紙記者などの5人の識者に、今春の牝馬クラシック、GI桜花賞(阪神・芝1600m)、GIオークス(東京・芝2400m)で頂点に立つと思う馬の名前を挙げてもらった――。



阪神ジュベナイルフィリーズを制して2歳女王に輝いたリバティアイランド

太田尚樹記者(日刊スポーツ)

◆桜花賞=リバティアイランド
◆オークス=リバティアイランド

 昨年のスターズオンアースに続いて、今春の牝馬クラシックはリバティアイランドの二冠達成が濃厚と見ています。素質馬がズラリとそろった前走の阪神JFは着差以上の完勝でした。

 当時の阪神芝はイン有利が顕著で、実際に2、3着に入ったのは内を突いた馬でしたが、そんな馬場でリバティアイランドは終始外を回って差し切り勝ち。破格のパフォーマンスを披露し、同じ舞台で行なわれる桜花賞では断然の存在と言っていいでしょう。

 前々走のGIIIアルテミスS(10月29日/東京・芝1600m)の2着敗戦も、その後に向けての糧となっていると思います。結果的には直線で馬群に包まれるロスが響きましたが、管理する中内田充正調教師は『(レース前から)ジョッキー(川田将雅騎手)と"馬群で競馬をしよう"と話していました。次(阪神JF)が多頭数なので、経験を積ませたくて。(終わってみれば)我慢が利いて、いい経験ができました』と評価。この経験は、馬群での我慢が要求されるオークスにもつながると思います。

 父は二冠馬ドゥラメンテ。母のヤンキーローズも、オーストラリアの芝2000mのGI戦を勝っていますから、距離延長も問題ないはずです。

坂本達洋記者(スポーツ報知)

◆桜花賞=モリアーナ(牝3歳/父エピファネイア)
◆オークス=リバティアイランド

 モリアーナは、昨年6月の世代最初の新馬戦が始まった開幕週で白星。その勝ちっぷりも、好位からメンバー最速の上がり33秒0のキレ味を発揮したもので、秘める能力の高さは非凡なものがあります。

 2戦目も、オープン特別のコスモス賞(8月13日/札幌・芝1800m)を快勝しましたが、同レースが9頭立てという少頭数の競馬で、フルゲート18頭のレースとなった続く阪神JFでは経験値の差が出てしまいました。しかも、一線級相手のタフな競馬となり、12着に敗れました。

 それでも、力があるのは確か。この春はGIIIクイーンC(2月11日/東京・芝1600m)から始動する予定ですが、マイル戦はベストと言える条件ですから、持ち前のスピードと勝負根性で巻き返しを図って、桜花賞へ向けて弾みをつけてほしいです。

 リバティアイランドは、上がり31秒4をマークした衝撃のデビュー戦(7月30日/新潟・芝1600m)からクラシック候補の呼び声が高い1頭。能力の高さは折り紙つきです。

 アルテミスSこそ、勝ち馬より追い出すタイミングがワンテンポ遅れた分、2着に終わりましたが、前走の阪神JFでは1頭だけ次元の脚色を披露。豪快な差し切り勝ちを収め、この世代における"1強ムード"を強く印象づけました。

 母はオーストラリアの芝2000mのGI戦を勝っているヤンキーローズ。その血筋や折り合い面にも不安がないことから、距離が延びても十分にこなせそう。桜花賞は立ち回りひとつで、モリアーナにチャンスがあっても......と思っていますが、実力を試されるオークスではリバティアイランドの優位は動かないと見ています。


小田哲也記者(スポーツニッポン)

◆桜花賞=ペリファーニア(牝3歳/父モーリス)
◆オークス=リバティアイランド

 半兄がエフフォーリアのペリファーニアは、有馬記念当日の新馬戦(12月25日/中山・芝1600m)を快勝。まだ1戦1勝馬ですが、背中のよさは兄譲りですし、新馬戦で見せた機動力はなかなかのものだと思います。モーリスの産駒がここにきて好調ですし、成長力があるのも武器です。

 クラシック出走には、一発で権利を獲る必要がありますが、おそらく出走予定のクイーンCできっちり賞金を加算できれば、それはクリアできそう。リバティアイランドは強力な存在となりますが、桜花賞ではかなり期待できると思います。

 リバティアイランドは、適性的には桜花賞向きかもしれませんが、ドゥラメンテ産駒ならマイル戦に特化しているとは思えません。総合力の高さからしても、オークスは確勝ではないかと見ています。

 レースぶりは危なげなく、馬格もしっかりしています。関東への輸送もすでに経験済み。また、終(しま)いの脚が注目されていますが、位置を取りにいける強さもあります。牡馬のなかに入っても、通用するのではないかと思っています。

木村拓人記者(デイリー馬三郎)

◆桜花賞=リバティアイランド
◆オークス=ラヴェル(牝3歳/父キタサンブラック)

 アルテミスS、阪神JFの内容から、桜花賞までは能力的にリバティアイランドが堅い存在であることは疑いようがないでしょう。現状の完成度から、二冠達成も十分に考えられるほどです。

 ただ、筋肉の発達からすると、馬体的にはマイラー色が強い感じがします。オークスよりは、桜花賞が勝負舞台になると踏んでいます。

 ひとつ上の半姉にナミュールがいるラヴェル。その半姉は続けてレースを使うとパフォーマンスを落とすタイプでしたが、同馬もアルテミスS1着から阪神JF11着と、極端にパフォーマンスを落としてしまったことを考えると、気性面に繊細な部分があるのかもしれません。

 ですが、アルテミスSを見た際、1着ラヴェルと2着リバティアイランドの2頭は、この世代で抜けた存在であると思いました。精神面さえ整っていれば、父キタサンブラック譲りの、いい意味での緩さが距離延長でプラスに働きそう。同じキタサンブラック産駒で"緩いのにキレる"イクイノックスに通じる部分もあって、オークスでは楽しみな1頭です。


土屋真光氏(フリーライター)

◆桜花賞=リバティアイランド
◆オークス=ドゥアイズ(牝3歳/父ルーラーシップ)

 阪神JFを完勝したリバティアイランド。そこで見せた走りは、文句のつけようのない、スケール感が大きいものでした。アルテミスSの2着は脚を測った感があり、それが本番できっちり生かされたように思います。

 また、強烈な末脚の印象が強いですが、荒れた阪神の馬場でも力強い伸びを見せた点から、舞台が同じ桜花賞で崩れる場面は考えにくいです。

 ドゥアイズは、前々走のGIII札幌2歳S(9月3日/札幌・芝1800m)では、スタートから4コーナーまで終始外を回らされ、道中はやや折り合いを欠いていました。ズルズルと後退してもおかしくない状況にありながら、2着に粘りました。

 続く前走の阪神JFでは、インを突いた直線半ばで前が壁になる不利を受けながら、そこから立て直してリバティアイランドよりもコンマ1秒速い上がりタイムをマークして3着。スムーズなら、もっと際どい勝負になったように思います。

 オークスなら、こうした不利も減りそうですし、距離が延びれば、リバティアイランドを逆転できると見ています。