「20-73」。力の差を見せつけられての大敗だった──。 1月8日、東京・国立競技場でラグビー大学選手権の決勝戦が行なわれた。3大会ぶり17度目の優勝を狙う早稲田大(関東大学対抗戦3位)は、大学選手権2連覇に挑む帝京大(対抗戦1位)と激突し…

「20-73」。力の差を見せつけられての大敗だった──。

 1月8日、東京・国立競技場でラグビー大学選手権の決勝戦が行なわれた。3大会ぶり17度目の優勝を狙う早稲田大(関東大学対抗戦3位)は、大学選手権2連覇に挑む帝京大(対抗戦1位)と激突した。



早稲田大の相良主将は有終の美を飾れなかった

 下馬評は、圧倒的強さで関東対抗戦を全勝優勝した王者・帝京大。春季大会は52-26、夏の練習試合は35-28、そして対抗戦は49-17と、早稲田大に今季いずれも勝っている。

 ただ、早稲田大も対抗戦、大学選手権を通して成長してきた。昨季は後半で伸び悩んだ反省を踏まえて「あえてチームの成長を遅らせた」という大田尾竜彦監督のマネジメントもあり、東洋大(関東リーグ戦3位/3回戦34-19)、明治大(対抗戦2位/準々決勝27-21)、京都産業大(関西大学Aリーグ1位/準決勝34-33)を下し、右肩上がりに調子を上げて決勝に進出した。

 21000人を超えるファンが見守るなか、決勝戦は幕を開けた。早稲田大は前半2分、キャッチミスからいきなりトライを献上してしまう。しかし、大田尾監督いわく「相手のいろんなことを研究し、ゲームプランを変えて、自分たちでやりきるチーム」の言葉どおり、選手たちは自らの判断で勝利を模索していった。

 帝京大戦のプランは、FB(フルバック)小泉怜史(4年)らのキックでエリアマネジメントを行ないつつ、タイミングを図って攻めるというもの。ただ、キックでタッチに切ることなく、なるべくインプレーの時間を増やして、平均体重で4kgほど重い帝京大FWのフィットネスを奪うことも目的としていた。

 その狙いはピタリと当たる。前半11分、スクラムを起点としたアタックからWTB(ウィング)槇瑛人(4年)がトライ。さらに6分後にもラインアウトからボールを動かしてWTB松下怜央(4年)がトライを挙げて、12-7と逆転に成功する。

【後半は帝京大の独壇場】

 ところがその後、接点やスクラムで後手に回ると徐々に帝京大のペースとなり、2トライを奪われてしまう。ハーフタイムまで残り10分、早稲田大はディフェンスで粘りを見せてチャンスを待った。だが、前半終了間際にもトライを奪われ、12-28で折り返すことになった。

 なるべく僅差で試合を進め、相手にプレッシャーをかけていくはずのプランは、ここで崩れてしまう。大田尾監督は「前半最後のトライは痛かった。前半をもっとうまく戦えていたら、いろんな選択が変わっていた」と悔しそうに振り返った。

 後半は帝京大の、まさしく独壇場となる。

「ボールキープ力が違う。そこからオプションを持ったアタックをしてくる」と大田尾監督が脱帽したように、帝京大は強化を図ってきた接点を前面に押し出してきた。継続してくるアタックを止めることは難しく、ジャッカルやラックから相手ボールを奪うこともほとんどできなかった。

「(自らが仕掛けての)ターンオーバーは(前半の)1回のみだった。いいタックル、コリジョンがないと取り返す機会がなかった」と、キャプテンのFL(フランカー)相良昌彦(4年)も肩を落とすほどだった。

 結果、後半は帝京大の多彩な攻撃の前に7トライを献上し、早稲田大はインターセプトから槇が挙げた1本しか返せず20-73で大敗。73得点、得失点差53、11トライは決勝戦での大会新記録となる屈辱的な黒星となってしまった。

 その内容に、大田尾監督も相良主将も完敗を認めた。

「このチームが歩んだ道のりはすばらしいもので、僕自身が胸を張ることのできるチームだった。しかし、勝たせられなかった。こういう展開になってしまったのは全部、僕の責任です。力の差を感じました」(大田尾監督)

「今季、積み上げてきたはずの接点とかセットプレーが足りなかった。帝京大のほうが1枚も2枚も上手だった。接点でいかれる部分も大外でいかれる部分もあって、FWだけでなくBKもすごかった」(相良主将)

【『荒ぶる』を歌いたかった】

 早稲田大は昨季、帝京大や明治大に敗れた経験を糧に、春からポジションごとに体重を設定し増量し、フィジカル強化に取り組んだ。元日本代表PRの仲谷聖史コーチの下、じっくりとスクラムの強化も図った。

 だが、相良主将が「帝京大が頭ひとつ抜けていた。1年間ではまだ足りない、どうにもならない差があったのかな」と話すように、帝京大との力の差は埋まらなかった。また、相良主将やHO(フッカー)佐藤健次(2年)、SO(スタンドオフ)伊藤大祐(3年)といった主力がケガから癒えたばかりで、個で打開できる選手が少なかったことも大差につながった要因だろう。

 帝京大との差を埋めるために、どうすればいいのか──?

「この2年は攻撃に比重を置いて練習してきました。それをアタックかディフェンスに比重を振るなど、極端な何かをしないといけない。(この点差は)選手たちはショックだったと思う。だが、それでも何か得られるものを探して、いろんなことがダメだったかもしれないが、残したもの、手に入れたものにフォーカスしてやっていかないといけない」

 試合後に聞かれた大田尾監督は、声を絞り出すようにこう答えた。

「自分たちの代でも『荒ぶる』を歌いたかった」という相良主将は、ノーサイドの瞬間、「早稲田大のキャプテンとして、こんな大差で負けてしまい、申し訳なかった」と思ったという。

 そして最後に「昨季よりは成長したし、やってきた成果は確実に出ていると思う。1対1でしっかり止めきるコリジョンなど明確な課題はあると思うので、それを修正して頑張ってほしい」と、残された後輩たちにエールを送った。

 今季の大学ラグビーは、連覇を達成した帝京大の強さが際立ったシーズンだった。

「来季、決勝の舞台に戻ってやり返したい。(帝京大とは)フィジカルの差もあると思うので、もう一度、自分たちを見つめ直したい」

 来季3年生になる佐藤が語気を強めたように、早稲田大の後輩たちはリベンジを誓い、国立競技場を去った。