全日本バレーボール高等学校選手権大会第2日(5日、東京体育館)ジャパネット杯「春の高校バレー」第75回全日本バレーボール高等学校選手権大会は男女の2回戦計31試合が無観客で行われた。シード校が登場し、昨夏の高校総体を制した東山(京都)が酪農…

全日本バレーボール高等学校選手権大会第2日(5日、東京体育館)ジャパネット杯「春の高校バレー」第75回全日本バレーボール高等学校選手権大会は男女の2回戦計31試合が無観客で行われた。シード校が登場し、昨夏の高校総体を制した東山(京都)が酪農学園大とわの森三愛(北海道)にストレート勝ち。16強に進んだ。初戦の硬さで苦しむ場面もあったが、史上最年少で男子日本代表に登録されたミドルブロッカー(MB)の麻野堅斗(3年、18)の速攻などで流れを奪い、2冠への歩みを始めた。

最後は圧巻の勝利だ。競り合いとなった第1セットを、麻野のブロック得点でもぎ取った東山。第2セットは序盤、セッター当麻理人(3年)が麻野にトスを集めると、得意のDクイック(セッターが背面右側の遠くへ上げた速いトスを打つ速攻)が面白いように決まった。麻野の3連続得点などで流れを奪うと突き放し、12点差で決着をつけた。

「初戦は難しいというのは想定内。平常心でまとめようと思った」

第1セットで一時、20-21とリードされた苦戦を、麻野はそう振り返った。昨年は初戦の硬さがほぐれないまま1回戦で習志野(千葉)に敗れた。苦い経験は血肉となっていた。

1年時はチーム内で新型コロナウイルス感染者が出て3回戦で不戦敗。昨年は初戦敗退。春高への思いは強いが、元来「あまり感情を前に出すタイプじゃない」。

昨秋の国体では、MBより攻撃の中心となるオポジット(セッター対角)も経験したが、「あまり(点取り屋の)適性を感じなかった」と松永理生監督。「貪欲さが増え、決めたいという気持ちがより強くなると積極性が出てくるが…」と、得点への意欲に不満を表す。

2週間ほど前。練習で当麻とのコンビが合わなかったとき、淡泊な麻野を監督が叱咤(しった)した。「コンビの精度を上げないといけないんだから、お互いに(完成度を)求め合え」。それ以降、練習でコンビが合わないと、麻野から「もう一本!!」と声をかけるようになったという。

「(監督から)点を取る欲をどんどん出せといわれています」と苦笑する麻野。「欲はあるんです。今日のように仲間が焦っている場面では、自分が下級生を支える側として得点に絡みたい」。

昨年12月下旬にチーム内でインフルエンザが流行し、他校との練習試合など最後の調整ができなかっただけに、麻野の攻撃力は日本一への鍵だ。

6日の3回戦で県岐阜商と対戦する。「当麻には『もっと持ってきていいよ』と言っています」。精神面でさらにチームを引っ張れるかが問われる。(只木信昭)

★2人の元日本代表も高評価 麻野に対しては、かつての日本代表監督からも期待の声が聞こえた。

東京五輪で指揮を執った前監督の中垣内祐一氏は「大きいわりに機動力がある。ポテンシャルは疑いない」と評価。だからこそ注文も厳しい。「スパイクは速さを追求しているようだが、しっかり体を使って打つことにこだわって」と、まずは基本を求めた。

2008年北京五輪代表の監督を務めた植田辰哉氏も「将来性があり、楽しみな選手」。一方で「ブロックに当たらない打ち方や、バックアタックなどもマスターしたら幅広くなる。世界で戦う上で、やるべきことは多い。大学での4年間が重要」と成長を期待した。

来年のパリ五輪代表入りが可能か、中垣内氏は「正直、厳しいが、海外で鍛え上げれば間に合うかも」と含みを残した。

■麻野堅斗(あさの・けんと) 2004(平成16)年12月24日生まれ、18歳。滋賀・草津市出身。ミドルブロッカー(センター)。小学2年で競技を始め、大阪・昇陽中から京都・東山高。17歳だった22年4月に男子日本代表登録選手に。同年7月の全国高校総体で優勝し、大会ベスト6に選ばれた。姉は女子日本代表候補の七奈未(デンソー)。207センチ、最高到達点342センチ、靴のサイズ31センチ。4月から早大に進学予定。