連覇を狙う「紅い王者」には、油断も隙もなかった──。 1月2日、東京・国立競技場でラグビー大学選手権・準決勝が行なわれ、ディフェンディングチャンピオンの帝京大(関東対抗戦1位)に、8シーズンぶりのベスト4進出を果たした「国立の雄」筑波大(…

 連覇を狙う「紅い王者」には、油断も隙もなかった──。

 1月2日、東京・国立競技場でラグビー大学選手権・準決勝が行なわれ、ディフェンディングチャンピオンの帝京大(関東対抗戦1位)に、8シーズンぶりのベスト4進出を果たした「国立の雄」筑波大(対抗戦5位)がチャレンジした。

 筑波大は準々決勝で関東リーグ戦王者・東海大に20-17で勝利し、勢いに乗っていた。対抗戦での帝京大戦でも接点の強みを生かし、後半12分まではリードする展開に持ち込めた。

 しかし、波乱は起きなかった。帝京大は試合序盤からセットプレー、フィジカルで筑波大を圧倒し、終わってみれば11トライを奪取して71-5で快勝。準決勝での66点差は59回の大会のなかで歴代最多点差記録となった。



相手タックルを跳ね返してトライを奪う奥井章仁

 帝京大のキャプテンCTB(センター)松山千大(4年)は、気持ちの油断から京都産業大に負けそうになった昨季の準決勝を猛省し、この試合に臨んだという。

「昨季の準決勝ではチーム全体に緩んだ部分が見られた。だから、隙を作らず気を抜かないことをチーム全員で徹底した。今日はチーム全体がそういう雰囲気だったので大丈夫でした」

 1年生の時からチームの中軸を担うFL(フランカー)奥井章仁(3年)も、メンタル面での課題をしっかり修正して臨めたことに胸を張る。

「昨季の準決勝は、心のどこかで先を見ていた自分たちがいた。今季は目の前の相手に80分間、ハードワークしようとチーム全員で声をかけていた。だからこそ、集中してファイトできた。いいゲームだった」

 松山いわく「フィジカル、コンタクト、セットプレーで相手にプレッシャーをかける」帝京大のラグビーが、筑波大戦ではしっかりと体現できた。

 特に、HO(フッカー)江良颯(3年)を中心にスクラムでプレッシャーをかけた前半34分から5分間で3トライを奪った怒涛の攻撃は見応え十分だった。

 1本目はボールを継続してFWとBKが一体となってトライ、2本目は相手のキックオフを起点に自陣からボールを動かしてトライ、そして3本目は相手のアタックを止めてターンオーバーからのトライ。この連続トライで勝負は決した。

【早稲田との最終決戦に向けて】

「東海大戦の疲労は回復できていたが(帝京大と)試合をやっていくなかで、こんなにつらいんだと思った。(前半途中から)受けはじめてしまった。(相手のフィジカルに押されて)前にボールを運べないもどかしさがあった」

 筑波大の中軸であるNo.8(ナンバーエイト)谷山隼大(3年)も完敗を認めた。

 帝京大の看板選手である主将・松山とSO(スタンドオフ)高本幹也(4年)に加え、1学年下の江良と奥井は、2018年度の「花園」全国高校ラグビー大会で大阪桐蔭が初優勝した時にメンバーだ。松山と高本は高校・大学合わせて7年間、同じチームで一緒にプレーしてきた。

 4年生の松山と高本は卒業後、リーグワンでは別々のチームに加入する。決勝戦が最後の試合となることについて、松山は「やっぱり寂しいですね......」と正直に吐露した。

 下級生ふたりも、彼ら先輩への想いは強い。江良は「(ふたりの先輩と)最後の試合が決勝なのはうれしくて光栄なことなので、もう1回、最後に笑えるように頑張りたい」と語気を強め、奥井は「松山主将は熱い漢で、信頼できるキャプテン。高本さんはゲームメイクしてくれるし、チームを支えている。高校でも日本一になったので、大学でもう一度、ふたりを日本一にしたい!」と意気込んだ。

 1月8日の決勝戦の相手は、準決勝で京都産業大(関西リーグ1位)との接戦(34-33)を制した早稲田大(対抗戦3位)。今季の対抗戦では、帝京大が49-17で早稲田大に快勝している。

 今季、コーチから指揮官に昇格した帝京大・相馬朋和監督は、最終決戦に向けてこう語る。

「試合を重ねるなかで、チームは成長すると思います。なので(対抗戦で対戦した)早稲田大とはまったく違う相手と思って対戦するつもりです。過去は過去のこと。目の前のことに全力を尽くしたい」

 今季無敗のまま決勝に駒を進めた帝京大。連覇に向けての気持ちを聞かれた松山主将は「自信はあります。やるしかない」とまっすぐ前を向いた。

 心身ともに充実した帝京大は、最高の準備を整えて決勝戦に臨む。