Sportiva注目若手アスリート「2023年の顔」第4回:菅沼菜々(ゴルフ)/インタビュー前編2023年にさらなる活躍が期待される若手アスリートたち。どんなプレーで魅了してくれるのか。スポルティーバが注目する選手として紹介する。日本女子プ…

Sportiva注目若手アスリート「2023年の顔」
第4回:菅沼菜々(ゴルフ)/インタビュー前編



2023年にさらなる活躍が期待される若手アスリートたち。どんなプレーで魅了してくれるのか。スポルティーバが注目する選手として紹介する。

日本女子プロゴルフツアーでは、2022年シーズンも新たなヒロインが次々に登場した。そのひとりが、菅沼菜々だ。ツアー初優勝こそ叶わなかったが、メルセデス・ランキング8位と大いなる飛躍を果たした。2023年シーズンには悲願の優勝とともに、さらなる躍進が期待される彼女に話を聞いた――。

――ツアー本格参戦1年目の2019年シーズンは、メルセデス・ランキング72位(賞金ランキング62位)。続く2020-2021シーズンは、トップ10入り5回。メルセデス・ランキング45位(賞金ランキング47位)でした。そして2022年シーズンは、33試合に出場して2位2回、3位3回を含めてトップ10入り15回。メルセデス・ランキング8位(賞金ランキング9位)と、大きく飛躍した一年となりました。

「シーズンが始まる前に、メルセデス・ランキング15位以内を目標にしていたんです。メルセデス・ランキングは常に(トーナメントで)上位に顔を出していないと(ランキングが)上がっていかないので、その目標をクリアして、最終的に8位という順位で終われたことには満足しています。優勝こそできませんでしたが、優勝までの道のりはかなり経験できましたし」

――優勝へあと一歩届かったことは、やはり心残りですか。

「惜しい試合がいくつもありましたから。緊張感に飲まれるようなことはなかったんですけど、なかなか届きませんでしたね。

 3位タイだったヤマハレディースオープン葛城は、最終日に(上位の)みんなが崩しているなか、もう少し耐えられていたら勝てたかもしれない。反対に、2位タイだったスタンレーレディスホンダは、最終日に自分がもっと伸ばせていたら勝てたかもしれない。(勝てる)チャンスがあっただけに、本当に悔しいです。

 ただ、なかなか勝てないからといって、落ち込むことはなかったですね。いろいろな方が私に前向きな言葉をかけてくれて、励ましてくれました。『一発の優勝よりも、常に上位にいるほうが認知度につながるよ』と(笑)。私自身、常に上位で戦いながら、チャンスが訪れた時に勝ちをモノにする選手が一番強い選手だと思っているので、これからも常に上位で戦えるようにがんばって、チャンスがあれば(優勝も)と思っています」

――常に上位で戦えることは本当にすばらしいことですが、ゴルフという競技ほど、2位=準優勝の成績が評価されないスポーツはないかもしれませんね。

「そうですね。2位でもテレビにはたくさん映りますけど、2位はあくまでも2位。優勝を逃したことには変わりませんからね」

――優勝への道のりを何度も経験されてきたとおっしゃっていましたが、優勝へ何が足りなかったのか、というのはご自身でどう捉えていますか。

「樋口(久子/女子プロ協会元会長)さんや、戸張(捷/トーナメントプロデューサー、キャスター)さんなどにも指摘されたことですが、『勝負どころのパターを決めること』と、もう少し『ショット力を上げること』。それらが、新シーズンで優勝するためには大事になると思っています」

――優勝にはあと一歩届かなかったものの、2022年シーズンは最終日の平均ストロークが1位(69.7762)。上位争いを演じるなかでの勝負強さは光っていたように思います。

「(最終日のスコアについては)特に意識はしていなくて、たまたまよかったんですけど、2020-2021シーズンは最終日の平均ストロークがかなり悪くて(69位/73.1471)、ギャラリーの方々をはじめ、いろいろな方から『最終日に(スコアを)落とすとチャンスはないよね』と言われてしまうことが多かったんですよね。

 そういった声に対して、見返すではないですけど、最終日まで体力が保持できるように(オフに)体力作りに力を入れてきました。走り込みや体幹トレーニングを頑張ったことが、そういった成績につながってよかったです。さすがにツアー1位というのは、びっくりしましたけど(笑)」

――2020-2021シーズンと比べて、2022年シーズンで大きく変わったことはあったのでしょうか。

「やはり体力面ですよね。2021年は手首の傷みもあったし、腰痛で棄権する試合もあったほど。でも、2022年シーズンに関しては、体のどこかに痛みが出るようなことが一度もなかった。ケガへのケアも含めて、しっかりトレーニングしてきたことがよかったと思います」

――シーズン終盤になると、体重減少に悩む選手が多かったりしますが、菅沼プロの場合はいかがでしたか。

「私も(体重は)落ちました。痩せちゃうと、飛距離にも影響しますし、疲労にもつながるので気をつけてはいたんですけど、なかなか(体重の)維持は難しくて......。たくさん食べて、プロテインも飲んでいるんですけど、やっぱり痩せてしまう......」

――ツアーで全国各地を回っていると、各土地の美味しいものを食べる機会も多いとは思うのですが。

「私、意外と食に対する興味がなくて。ご当地ものを食べたい! という欲求があまりないというか......。あと、体調管理のために『生ものは一切食べない』という決まりを自分で設けているんです。それで、ご当地ものというと、お刺身とかお寿司とか、そういう生ものが多かったりするじゃないですか。そういうのもあって、なかなかその土地の名物を食す機会は少ないんですよね」

――生ものを避けるのは、体調を崩した経験があったのでしょうか。

「以前、生ものを食べて体調を崩して、試合を棄権したことがあったんです。それ以来、オフになるまでは『生ものは食べない』と決めています。焼肉を食べに行っても、ユッケとか馬刺しとか、そういったものは絶対に口にしません。魚はしっかり火を入れたものしか口にしませんし、お肉もしっかり焼きます」

――そうやって節制してきたことも、好成績につながった要因かもしれませんね。そして、トレーニングの成果もあって、2022年シーズンは獲得賞金(8619万8649円)も大きく増えました。生活が一変したりしたのでしょうか。

「まだオフに入ったばかりなので、何も変わっていません(笑)。逆に、何も変わらないことが大事かなと思っています」

――2023年シーズンに向けて、さらにはツアー初優勝のためにも、このオフにはどういった点に力を入れていく予定ですか。

「先ほども言ったように、勝負どころのパター。そして、アイアンのショットの精度を上げていきたいと思っています。2022年シーズンの成績におごることなく、今の自分に足りないもの、足りないところを、このオフに強化していきたいです」

――その他、何か具体的な課題があったりしますか。

「2022年シーズンを迎える前のオフには、30ヤードのバンカーショットをかなり練習して得意になりました。このオフには、50ヤードのバンカーショットと、苦手なフェアウェーバンカーからのショットの練習を重点的にやりたいと思っています」

――得意としているのは、アプローチとパター。

「私の生命線ですね。2022年シーズンも3パット率は1位だったので、そこは2023年シーズンも引き続き維持できたらと思っています。そうすれば、きっと優勝も見えてくるのかな、と」

(つづく)

菅沼菜々(すがぬま・なな)
2000年2月10日生まれ。東京都出身。身長158㎝。血液型AB。あいおいニッセイ同和損保所属。埼玉栄高卒業後、2018年にプロテスト合格。2022年シーズンは、多くの試合で上位争いを演じてメルセデス・ランキング8位とブレイクした。2023年シーズンでは、より一層の活躍が期待される。