(写真:徳丸篤史) 3月のUAE戦前のことだった。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督にこんな質問を投げかけた。「中東のアウェイ戦。暑さなどの環境を踏まえると、縦に速い攻撃をし続けることは厳しいのでは?」 すると、指揮官は質問の意図を見透かしたよ…


(写真:徳丸篤史)

 3月のUAE戦前のことだった。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督にこんな質問を投げかけた。

「中東のアウェイ戦。暑さなどの環境を踏まえると、縦に速い攻撃をし続けることは厳しいのでは?」

 すると、指揮官は質問の意図を見透かしたようにこう答えた。

「ポゼッションサッカーをやれ、ということですか。今回のアウェイ戦はそんなに自分たちがボールを持つ時間は多くならないと思う。前線にも相手と競り合いながら押し込める選手が必要だ」

 はたして、UAE戦はリアクションサッカーが奏功。指揮官の予測と準備が貴重な勝ち点3を呼び込んだ。

 そして再び迎える、中東での試合。ただ前回と違う点が存在する。3月のUAE戦は現地の気候が試合時でも20℃台と想定よりも涼しい環境だった。今回のイラク戦以上に絶対に負けられない試合と意気込み、さらに直前には主将の長谷部誠を欠く事態に。そのため、選手は余計に集中力と運動量を持続し、守備的なスタンスを貫き続けることができた。

 今回、日本の最大の敵となるのが暑さである。日中は40℃近くまで気温が上昇し、立っていても体の水分が蒸発していく感覚に襲われる。この環境で速攻をどこまでやり続けられるのか。相手ボールを追う展開にどこまで我慢強く耐えられるのか。

 現地でのミーティング。指揮官は案の定、UAE戦同様の指示を出した。しかし、選手側からも提案があった。「(暑さの中では)ゆっくりボールを動かす時間も必要という意見も出た」(槙野智章)、「今回は(ボール回しで)相手を走らせることも必要」(本田圭佑)。

 今回の試合会場であるイラン・テヘラン市内のPASスタジアム。奇しくもハリルホジッチ監督の強い要望により、芝の状況が改善されたという。チームのボスが自分のやり方に固執するのか、選手たちが示した柔軟性をピッチで表現するのか。試合の結果を占うキーポイントになりそうだ。

文・西川 結城