花園開幕──。 今季も12月27日から全国高校ラグビー大会が東大阪市花園ラグビー場を中心に開催される(決勝は2023年1月7日)。昨年はコロナ禍で厳しい環境を強いられたが、102回目を迎える今大会は全日程、有観客で行なわれる予定だ。 花園…

 花園開幕──。

 今季も12月27日から全国高校ラグビー大会が東大阪市花園ラグビー場を中心に開催される(決勝は2023年1月7日)。昨年はコロナ禍で厳しい環境を強いられたが、102回目を迎える今大会は全日程、有観客で行なわれる予定だ。

 花園に出場するのは、都道府県の代表51校(東京と北海道は2校。大阪は開催地枠を含めて3校)。今回は優勝争いに絡んでくるであろう強豪5校を紹介したい。



花園で注目すべき報徳学園のSO伊藤利江人

 今季は「大本命がいない群雄割拠」と予想されているが、そのなかで最も注目を集めているチームは、Aシードで優勝候補の一角を占める報徳学園(兵庫/7大会連続48回目)だ。春の選抜大会では兵庫県勢初の高校日本一に輝き、夏の7人制大会も制覇。今大会では史上4校目の「高校3冠」、そして花園初制覇を狙っている。

 今季の報徳学園は1年生から花園に出場している選手が多い。高校日本代表候補に8人も選ばれるなど、将来有望な選手の揃った年代だ。

 司令塔として引っ張るのは7人制の大会MVPに輝いたSO(スタンドオフ)伊藤利江人(3年)。父は明治大のヘッドコーチを務める元日本代表SO伊藤宏明だ。息子の名前「りえと」は、父がイタリアでプレーしていたシーズンに生まれたため、イタリア語の「lieto(うれしい・幸せな)」に由来する。

「高校3冠を狙えるのは僕たちなので狙っていきたいです! まだ未熟なので、広い視野を持ってまわりと連係を取りながらやって、東海大仰星、東福岡に勝って優勝したい」(伊藤)

 FW陣にはPR(プロップ)木谷光(3年)や「リーチ2世」の呼び声高いNo.8(ナンバーエイト)石橋チューカ(3年)、BK陣にはSH(スクラムハーフ)村田大和(3年)や決定力の高いWTB(ウィング)海老澤琥珀(3年)、FB(フルバック)竹之下仁吾(3年)と実力派が揃っている。

 兵庫県予選決勝は関西学院に苦戦(21-17)したものの、どうにか逆転で勝利を収めて花園への切符を得た。スローガンは「ビッグインパクト」。伊藤がチームをコントロールしてFWとBKをうまく噛み合わせれば、初の頂点も見えてくる。

【対抗馬は九州の雄と前回覇者】

 その報徳学園が警戒する相手のひとつが、こちらも高校日本代表候補を8人擁するAシードの東福岡(福岡/23大会連続33回目)だ。過去6度の優勝を誇る全国屈指の強豪校だが、昨季まで5シーズン連続でベスト4に終わっている。藤田雄一郎監督は退任も考えたというが、選手や保護者の要望で続投を決意し再び花園を戦う。

 伝統的に優秀なランナーが多く、FWとBKが一体となってボールをワイドに展開する。「今季はディフェンスからチームを作り上げてきた」と藤田監督と話すように、練習の6~7割はタックルや組織ディフェンスに注力してきた。キャプテンFL(フランカー)大川虎拓郎(3年)、LO(ロック)舛尾緑(3年)、CTB(センター)西柊太郎(3年)、FB石原幹士(3年)とタレントも揃っている。

 春の選抜大会はコロナ禍の影響で決勝戦を辞退し、夏の7人制の大会は準優勝に終わった。今季こそは「フェニックス」の愛称で親しまれる東福岡が6シーズンぶりの復活優勝を果たすか。

 昨季、4大会ぶり6度目の花園優勝を果たした東海大大阪仰星(大阪第3/4大会連続22回目)も、当然ながら今大会の優勝候補だ。春の選抜大会はベスト8止まりだったが、5月のワールドユースは強豪校を抑えて優勝している。

 チームの中心は運動量の豊富なキャプテンFL松沼寛治(3年)、PR石原捷聖(3年)、FB増山将(3年)ら昨季の優勝を経験している選手たちだ。さらに183cmのSH高來亜(こう・らいあ/3年)や今年入学してきたCTB吉田琉生(1年)などメンバーは多士済々。

 選手・コーチ時代も含めて6度の優勝すべてに関わっている湯浅大智監督は「策士」として知られる。昨季はFWとBKが一体となった「スタンディングラグビー」を復活させて頂点に立った。地元で戦えるメリットも活かして連覇を目指す。

【五郎丸の母校はダークホース】

 その仰星に昨季の花園決勝で負けた國學院栃木(栃木/23大会連続28回目)も注目すべき高校のひとつだろう。昨季は高校代表候補0人ながら栃木初のファイナリストとなった。

 今季は準優勝を経験した選手も多い。チームの中軸は「之介コンビ」。視野が広くスキルに長けたキャプテンSO伊藤龍之介(3年)と、ランとスピードが武器のFB青栁潤之介(3年)だ。伊藤の兄・耕太郎は明治大3年のSOで、青栁の父・勝彦は埼玉ワイルドナイツのコーチを務めている。

 伝統的にスクラムやモールのセットプレーが強く、PR木村陽太(3年)を中心にFW陣はハードワークが身上。茨城県予選決勝では佐野日大を153-0で一蹴するなど、調子は上向きである。

 昨季決勝で仰星に敗れた経験を糧に、吉岡航太郎コーチは「(昨季の)花園ではディフェンスで勝ち上がったが、得点を取らないと勝てない。アタックを整備してきた」と話すように、得点力アップに努めてきた。「自分たちのできが優勝につながる」と話す伊藤主将を中心に、今季こそ日本一を目指す。

 そして5校目は、Bシードの佐賀工業(佐賀/41大会連続51回目)を挙げたい。元日本代表FB五郎丸歩の母校としても有名。昨季は10年ぶりにベスト8進出を果たし、今季は春の選抜でもベスト4に入るなど上昇気流に乗っている。

 昔から力強いFWを武器とするチームで、LO楠田祥大(3年)やLO岡亮太(3年)など190cmオーバーの選手を4人揃えてラインアウトに絶対の強さを見せる。また、SO服部亮太(2年)とFB井上達木(2年)のロングキッカーを活かして相手陣でプレッシャーを与えたい。そこから副将CTB後藤翔大(3年)やCTB大和哲将(2年)の高い得点力で勝機を見出す。

 チームが大事にしている言葉は「モメンタム(勢い)」。今季は縦にも横にも強くなっただけに、昨季のベスト4以上を狙う力は十分にある。

 優勝候補である東海大大阪仰星と國學院栃木のBシード同士が同じ山に入り、順調に勝ち上がればどちらかが元日の3回戦で姿を消す。花園は準々決勝・準決勝の前に抽選によって対戦カードが決まるため、抽選次第では準々決勝でAシード同士があたる可能性もある。

 優勝旗「飛球の旗」を掲げるのは、どの高校のキャプテンか。コロナ禍で3年間、努力を続けてきた高校ラガーマンの集大成がいよいよ始まる。