12月10日、箱根駅伝のエントリーメンバー16名が発表され、ここから本番までは少数精鋭で合宿などをこなし、調整を続けていくことになる。一方で、ここに名前が残らなかった選手は、この時点で出走はなくなり、駅伝シーズンを終えることになる。今回、…

 12月10日、箱根駅伝のエントリーメンバー16名が発表され、ここから本番までは少数精鋭で合宿などをこなし、調整を続けていくことになる。一方で、ここに名前が残らなかった選手は、この時点で出走はなくなり、駅伝シーズンを終えることになる。今回、エントリーリストからは何人かの力のある選手の名前が消えている。彼らの不在は、チームにどのような影響を及ぼすことになるのだろうか。

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前回の箱根駅伝1区で区間2位だった唐澤拓海(駒澤大)がメンバーから外れた(写真中央)

【駒澤大は

「3本柱」のひとりが欠ける】

 優勝候補の筆頭である駒澤大だが、唐澤拓海(3年)、白鳥哲汰(3年)、東山静也(4年)がエントリ―から漏れた。唐澤は、昨年は田澤廉、鈴木芽吹とともに3本柱と言われた実力派選手。前回の箱根1区では区間2位でレースを作るなど、今シーズンもスピードランナーとして期待されたが、体調面の問題等があり、今シーズンはレースに出場していない。

 白鳥は、前回は箱根7区10位ともうひとつで、今年は出雲、全日本ともにエントリーすらされていなかった。東山は今年の全日本大学駅伝で8区にエントリーされ、当日変更で補欠に回ったが、箱根は生き残れなかった。

 本来の力があれば、出走に絡んでくる選手ばかりだが、今シーズンは、ルーキーの佐藤圭汰(1年)、山川拓馬(1年)の台頭や上尾ハーフで61分51秒と好走した円健介(4年)の開眼もあり、分厚い選手層で彼らの不在を補っていけそうだ。

 万全の唐澤がいれば、まさに隙なしの区間配置が実現できたが、それでもエントリーメンバーが故障なく本番に臨めば、これまでの大会記録を大幅に更新するタイムでの総合優勝と悲願の3冠が見えてきそうだ。

【青学大はキャプテンがメンバー漏れ】

 青学大からは、前回の箱根駅伝1区、そして今年の出雲駅伝4区に出走した志貴勇斗(3年)、そしてキャプテンの宮坂大器(4年)が漏れた。キャプテンがエントリーメンバーから落選したことは、ここ数年なかったが、宮坂は春先に故障をして、夏合宿も選抜チームでの練習に参加しなかった。出遅れた感がやや否めず、また全日本大学駅伝ではアンカーで出走したが最後に國學院大にかわされて勝負弱さも露呈し、その結果を受けての原晋監督の判断ということだろう。

 また、宮坂と同じく全日本大学駅伝2区でブレーキになった白石光星(2年)もエントリー漏れしている。駅伝の1発目に失敗すると、監督は次の起用に慎重にならざるをえない。山内健登(3年)が1年の時、全日本大学駅伝に初出走し、6区9位と落ち込み、それ以来なかなか駅伝を走れないでいるが、白石は、ここからどのように這い上がっていくのか。

 ただ、この3人が外れたことでのチームへの打撃はさほど深刻ではないだろう。それほど今の青学大は選手層が厚い。前回、志貴が担った箱根1区は今や中央大の吉居大和(3年)と並び、1区のスペシャリストになりつつ目片将大(4年)がいる。出雲、全日本ともに1区で出走しており、次回の箱根も順当なら彼が1番手を担うだろう。キャプテンは裏方に回り、全力でフォローすればチームはグっと引き締まるはずだ。

【東洋大はエース松山和希がケガで落選】

 東洋大は、前回箱根2区5位でエースの松山和希(3年)、さらに奥山輝(3年)、甲木康博(2年)、吉田周(2年)と今年の駅伝を駆けた選手たちが落選している。

 松山は、3月の学生ハーフで3位に入った以降、調子が上がらず、今回はケガによる落選とのことだが、彼の欠場はチームにとって大きな痛手だ。エースとは替えが利かない選手のことで、その選手を軸に区間配置を決めていく。酒井俊幸監督は松山がいないことも想定して準備はしてきているだろうが、現実的に誰が2区を走ってまとめられるのか。

 また中間層の底上げをテーマにしていたが、出雲2区7位の甲木、出雲6区8位の吉田、さらに全日本1区15位の奥山は全日本出場組の唯一の落選となり、出てきてほしい中間レベルの選手の突き上げも足りていない。「今年はエースを欠いているので一人ひとりの粘りの走りが必要になる」と酒井監督は語るが、2年ぶりのトップ3を目指すチームにとって、エースの不在はどのくらいレースに影響するか。往路はかなり苦しい戦いになりそうだ。

【東京国際大は中間層を支えていた2年生が選ばれず】

 前回の箱根で5位と躍進した東京国際大は、夏から不調を訴え、出雲、全日本を回避していた山谷昌也(4年)が無事にエントリーされ、イェゴン・ヴィンセント(4年)も調子を取り戻し、丹所健(4年)と3本柱が揃った。

 東京国際大が箱根を制するには、その3本柱以外の成長が必須なのだが、前回の箱根5区14位、全日本は3区でエントリーされながら当日補欠に回った倉掛響(2年)、夏はまずまずの調子で箱根に意欲を見せていた牛誠偉(2年)、さらに昨年の出雲2区4位でデビューを飾った佐藤榛紀(2年)が落選した。

 佐藤は、故障からようやく復帰した夏に「箱根を目標に調子を取り戻して行きたい」と語ったが、間に合わなかった。白井勇佑(2年)、冨永昌輝(2年)、木村海斗(2年)の2年生が、落選した同期のぶんまでどれだけ意地を見せて走ることができるか。往路は優勝を狙えそうだが、復路は我慢の展開になりそうな気配が漂う。

【東海大は5区の候補だった選手が外れる】

 東海大は、前回の箱根駅伝11位でシード権を失った。今回の箱根は復活をテーマにシード権の確保を目標にしてきたが、重要な選手がエントリーから漏れた。

 まず、前回の箱根5区2位と気を吐き、今年の全日本大学駅伝の予選会では1組目でトップと見事な走りを見せ、箱根駅伝の予選会でもチームトップの26位で駆けた吉田響(2年)の名前が消えた。チームの元気印で、かつ勝敗を分ける5区担当で、「山の神」を目指していた吉田の不在は、チームにとって非常に痛手だ。エースの石原翔太郎(3年)こそいるが、吉田の不在で山での優位性を失い、往路は厳しい戦いになることが予想される。

 さらに前回の箱根8区9位の入田優希(3年)、今年の箱根駅伝予選会でチーム4位に入り、両角速監督も「粘り強く走れる逸材」と語っていた鈴木天智(1年)も故障の影響があり外れている。山のエースと勢いのあるルーキーを欠き、区間配置の変更を余儀なくされていることだろうが、果たして本番ではシード権を獲得することができるだろうか。

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 各チームにエースや山の特殊区間の選手の欠場が出ているなか、順天堂大、國學院大、中央大、早稲田大は、出雲、全日本に出走したメンバーがほぼ全員、箱根のエントリーリストに入っている。区間配置は2区のエース区間や山の5区6区をはじめ、80%ぐらいは目星がついているだろうが、1区で迷っている監督は多いだろう。ここから誰を、どこの区間に起用するのか、見極める重要期間になる。