フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコート)の大会14日目、女子シングルス決勝。 もし第3シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)との決勝戦がなければ、エレナ・オスタペンコ(ラトビア)はラトビアに戻り…

 フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコート)の大会14日目、女子シングルス決勝。

 もし第3シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)との決勝戦がなければ、エレナ・オスタペンコ(ラトビア)はラトビアに戻り、社交ダンスの大会に参加していたかもしれない。

 オスタペンコは、5歳から本格的にテニスを開始した12歳まで、ダンスとテニスの2つの趣味を持っていた。

 彼女は正しい選択をしたようだ。

 ラトビア出身の選手では初のグランドスラム大会決勝進出を果たしたオスタペンコは、今もなおダンスを満喫し、一週間に4度ダンスの練習を行っている。彼女はダンスがテニスのフットワークの効率性に役立っていると考えている。

「私はサンバが好きなの。テニスはフットワークの調節がとても重要なスポーツだから、ダンスで使う細かいステップが役立っていると思うわ」とオスタペンコは言った。

 かつてオスタペンコのダンスレッスンを観に行ったコーチのアナベル・メディナ ガリゲス(スペイン)は、次のように言っている。

「彼女は本当にダンスを楽しんでいるし、何か彼女に自信のようなものを与えていると思う。彼女は若いし、いつも笑顔よ」

 オスタペンコの気楽な態度は、テニスに対しても人生においても同じように思われる。どんな状況下でもハイリスク・ハイリターンのショットを繰り出したり、記者会見中も常に笑顔で答える、気楽に構える姿勢がそれを物語っている。

 準決勝で第30シードのティメア・バシンスキー(スイス)を7-6(4) 3-6 6-3で破ったその日に20歳になったオスタペンコは、2009年以降、もっとも若いグランドスラム大会決勝進出者となった。

「オスタペンコのように才能のある若い選手がこのように決勝に出てくることはいいことよね。彼女が勝てばそれはすごいことだし、負けても彼女にとっては次につながる試合になると思うわ。それに、テニスに対するモティベーションが上がると思うし、自信もつくと思う。ここから彼女は成長していくんじゃないかな。何よりも自信がつくってことが本当に大きいことよね」と言ったのはキム・クライシュテルス(ベルギー)だ。

 彼女は、2001年の全仏で初めてグランドスラム大会で決勝に進出し、そこでジェニファー・カプリアティ(アメリカ)に6-1 4-6 10-12で敗れた。

 その後、クライシュテルスは4度にわたりグランドスラム・タイトルを獲得している。

 オスタペンコとハレプのプレースタイルは様々な点で異なるが、速いテンポでライン際を攻撃していくオスタペンコに対し、ハレプは防御的なプレースタイルを好む。

 世界ランク47位のオスタペンコは、1983年以来のノーシードの全仏決勝進出者となった。

 一方、全仏オープン2度目の決勝進出となる25歳のハレプは、もしこの決勝に勝利すれば、週明けの月曜日に発表される最新ランキングで世界ランク1位になることが決まっている。

 ハレプは2014年の全仏決勝でマリア・シャラポワ(ロシア)に敗れ、準優勝に終わっている。グランドスラム大会では3度にわたり4強入りを果たしており、これまでツアー・タイトルは通算15勝を挙げている。

「今日はただリラックスするだけよ。もちろん緊張もしているけど、気分はいいわ。この決勝は本当に大事な試合だし、その重圧を隠すつもりはないわ」と、フィリップ・シャトリエ・コートで男子シングルス準決勝のアンディ・マレー(イギリス)対スタン・ワウリンカ(スイス)戦を観戦していたハレプは答えた。

 もしオスタペンコがこの決勝に勝てば、グランドスラム大会初優勝はもちろんのこと、ツアー初優勝でもある。彼女はこれまでグランドスラム大会では3回戦を突破したことがなく、2015年の全仏は予選で敗れ、2016年は1回戦で敗れていた。

「勝つ自信はあるけど、タフな試合になると思う。彼女には自信を持ってすべてを出し尽くしてほしい。私も自信はあるけどね」とハレプは言った。

 ハレプは先月、足首の故障により大会出場が危ぶまれていた。

「オスタペンコはいいプレーをしているし、危険な選手だと思うけど、私はハレプが勝つと思うわ」と言ったのは、準決勝でハレプに敗れた昨年の全米準優勝者で大会第2シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)だ。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は「全仏オープン」決勝で対戦する第3シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア/右)とノーシードのエレナ・オスタペンコ(ラトビア/左)(撮影◎毛受亮介/テニスマガジン)