フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコート)は大会13日目、男子シングルスの準決勝などが行われた。 まずは第3シードで一昨年の覇者スタン・ワウリンカ(スイス)が第1シードで昨年の準優勝者アンディ・…

 フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコート)は大会13日目、男子シングルスの準決勝などが行われた。

 まずは第3シードで一昨年の覇者スタン・ワウリンカ(スイス)が第1シードで昨年の準優勝者アンディ・マレー(イギリス)を6-7(6) 6-3 5-7 7-6(3) 6-1で破り、試合時間は今大会最長の4時間34分を記録した。続いて第4シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第6シードのドミニク・ティーム(オーストリア)を6-3 6-4 6-0で一蹴。マレー対ワウリンカ戦の半分にも及ばない2時間7分で決着がついた。◇     ◇     ◇

 新チャンピオン誕生の可能性は潰え、〈ビッグ5〉の壁に挑む若い選手の夢の実現はまた先延ばしになった。

 今年のクレー・シーズン、ナダル以外でもっとも大きな存在感を示したのは23歳のティームだ。バルセロナとマドリッドで決勝に進出。いずれもナダルに敗れたが、そのクレーコート・キングをローマの準々決勝で倒し、準決勝でノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れた。そして今大会は順番が入れ替わり、準々決勝でジョコビッチをストレートセットで退け、ナダルに準決勝で敗れるという結果に終わった。

「トップの選手に勝った次の試合で、いつも調子が落ちてしまう。そこを改善したいと思う」

 ジョコビッチに勝ったあとそう話していたが、劇的な改善は叶わなかった。

 ナダルの立ち上がりのサービスゲームをいきなりブレーしたティーム。しかしすぐにナダルがブレークバックし、ティームはまたすぐにダブル・ブレークポイントでチャンスをつかむが、これを生かせず、次のゲームで逆にナダルがブレークに成功した。そのリードを守ってナダルの6-3。ドロップショットにドロップボレー......ティームの絶妙なタッチが光るポイントがいくつもあったが、"一打入魂"スタイルのティームが5セットをもたせるためには、今後、集中力の"出し入れ"が必要になってくるだろう。

 第2セットの第2、第3ゲームが勝負の行方を決めたといってもいい。第2ゲームでナダルは2つのブレークポイントをしのいでキープしたが、第3ゲームでティームは3度のデュースの末にブレークを許した。この第2ゲーム以降、ティームがブレークポイントを握ったのは第3セットの第6ゲームだったが、このときスコアはナダルの5-0。すでに勝負は決していた。

 ウィナーの数はナダルが23本でティームが21本。差はわずかだったが、フォーストエラー、つまり自分からのミスではなく、攻められてからのミスが37本あった。これはナダルからのプレッシャーという言葉で置き換えられる。

 ジョコビッチに勝ったあと、ティームはこう言っていた。

「グランドスラムで勝つたいへんさは、もうありえないよね。ジョコビッチに勝ったけど、次はナダル。もし勝ったとしても、また次のトップ選手(マレーかワウリンカ)が日曜日に待っている」

 ティームが指摘したことがどれだけ難しいことかというのは、これまでも証明されている。最近のグランドスラムで準決勝以上に進んで〈ビッグ5〉と連続して対戦している選手には、まず昨年の全米でベスト4の錦織圭(日清食品)がいる。しかし準々決勝でマレーに勝って準決勝でワウリンカに敗れた。ウィンブルドン準優勝のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)は、準決勝でロジャー・フェデラー(スイス)を破ったが、決勝でマレーに敗れている。

 ティームにはもう少し時間が必要のようにも見えるが、〈ビッグ5〉が皆30代になった今、世代交代の波に確実に乗る選手が現れたことは確か。昨年と同じベスト4でも、2年目の手応えはより大きいに違いない。(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)

※写真は「全仏オープン」準決勝でラファエル・ナダル(スペイン)に敗れたドミニク・ティーム(オーストリア)(撮影◎毛受亮介/テニスマガジン)