F1最終戦アブダビGPを走りきった角田裕毅(アルファタウリ)は、やりきった表情をしていた。「疲れましたね、すごく疲れました。自分にやれるだけのことはやりました。入賞圏目前までいったんですけど、ノーポイントで終わって、とても残念です。でも、…

 F1最終戦アブダビGPを走りきった角田裕毅(アルファタウリ)は、やりきった表情をしていた。

「疲れましたね、すごく疲れました。自分にやれるだけのことはやりました。入賞圏目前までいったんですけど、ノーポイントで終わって、とても残念です。でも、自分の全力を出し尽くすことはできたので、その点はすごく満足しています」



角田裕毅は今季ドライバーズランキング17位で終了

 11番グリッドからスタートし、コンストラクターズランキングでハースを捕らえて8位に浮上すべく、ポイント獲得を目指した。エステバン・オコン(アルピーヌ)を先頭とする8位集団のなかで走っていただけに、その可能性は十分にあった。

 しかし、最初のピットストップでランス・ストロール(アストンマーティン)に先を越されてアンダーカットを許し、フリー走行2回目で試して手応えを得ていたハードタイヤでのペースもそれほどよくはなかった。ハードタイヤのままステイアウトするバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)を抜くのに手間取り、ストロールについていくことはできなかった。

 そしてストレートが速いアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)にアンダーカットされないように、2回目は早めのピットストップを強いられ、残り20周をソフトで走る厳しい状況に追い込まれた。

「残り7周のところまではペースはすごくよくて、ポイント争いもできていたんですけど、ダーティエアを受ける距離に入った瞬間に急にペースを大きく落としてしまいました。ダウンフォースが必要なセクター3やターン2〜3では、かなりスライドしてタイヤがオーバーヒートしてしまっていて、トラクションが重要なバックストレート入口のターン5でそういう状況になってしまい、理想的なグリップが得られなかったからだと思います」

 予選でも、Q3には手が届きそうで届かなかった。

 ターン6でわずかにロックアップし、0.151秒差でQ3進出を逃した角田だったが、「Q3には行けるか行けないかギリギリのところでしたし、攻めないとQ3に行けないのがわかっていたなかで攻めた結果なので後悔はないです」と、マシンの全力を出しきった結果に満足するしかなかった。

12〜13kg重いクルマに苦戦

 アルファタウリAT03は、シーズンを通して空力性能不足に悩まされてきた。

 開幕戦の時点でダウンフォースが足りていないことは明らかだったが、細かなアップデートを断続的に投入するよりも大きなアップデートを投入し、確実に成功させるというアルファタウリの開発方針は、結果としてライバルたちに後れを取ることにつながった。開発が進まない間、性能の劣ったマシンで戦い続けなければならなかったからだ。

「今年はマシン開発競争のシーズンになると思っていたから、スタート地点は重要ではなくて、その後のマシン開発をいかに進められるかが勝負のカギになると思っていた。でも残念ながら、僕らはそれをうまくやり遂げることができなかった」

 そう語るピエール・ガスリーは、問題は空力面だけではなかったことを明かした。

 AT03は798kgの最低重量を大幅に超過しており、常にそのハンディを背負って戦わなければならなかったという。

「シーズンを通してずっと、僕らはアルファロメオよりも12〜13kg重いクルマで戦わなければならなかった。重量削減をまったく進めることができなかったんだ。これはつまり、1周あたり0.35秒くらいに相当する。0.1〜0.2秒差でQ3進出を逃した回数は10回くらいあったと思うし、この重量をずっと背負ってレースをするのは、重いバックパックを背負って走っているようなものだよ」

 それに加えて、タイヤの問題もあった。

 タイヤのデグラデーション(性能低下)が予想以上に激しかった今年のアブダビで、ライバルたちが2ストップ作戦を念頭にハードやミディアムを多く残していたなか、アルファタウリはハードとミディアムを1セットずつしか残しておらず、2ストップ作戦を採る場合は性能低下の激しいソフトを履かざるを得ない状況に追い込まれていた。決勝の戦略ミスと言うよりは、レース週末全体の戦略ミスだ。

 残念ながらこれは、今シーズン何度かアルファタウリが犯してきたミスの繰り返しだ。

ガスリーはアルピーヌに移籍

 ガスリーはソフトタイヤでスタートし、ハードタイヤに履き替えて最後まで走りきる戦略に切り替えたが、アルボンに抑え込まれて抜け出せないまま14位でレースを終えることになってしまった。

 そういった意味で、最終戦アブダビGPはアルファタウリにとって2022年シーズンのいいところも悪いところも象徴するようなレース週末になった。

 そんな苦しいなかで1年間を戦ってきた角田は、ドライバーとしても人間としても成長を遂げた。

「1戦1戦、自分なりにいろんな部分で成長できた1年だったかなと思います。シーズンを通して常に進歩することができたと思いますし、クルマに対する理解が深まりましたし、クルマを使いこなす感覚と自信が深まりました。もちろん、コンシステンシー(安定性)などまだ改善しなければならない点はありますけど、ここまでの進歩には満足しています」

 F1デビューから2年間をともに戦ってきたガスリーは、このレースを最後にアルピーヌへと移籍する。

 チームオーダーや同士討ちでギクシャクしたことはあっても、すぐに仲直りし、ドライバーとしてだけでなくコース外での友人としても良好な関係を築いてきた。1年目には明らかに差があったふたりも、今年は同等の走りをするようになり、ガスリーが角田の速さを認めた結果でもあった。

「この2年間でピエールからはたくさんのことを学びました。ドライビングだけじゃなくて、レースに向けてどんなふうに準備を整えるかなど、レースに対する姿勢ですね。チームとのコミュニケーションの仕方やフィードバックの仕方なども彼から学ばせてもらいました。彼がいなければ、ここまで成長できなかったと思いますし、彼にはすごく感謝しています」



アブダビGPはフェルスタッペンが今季15勝目をマーク

 こうしてアルファタウリと角田の2022年シーズンは終わった。しかし、アブダビではすでに来季に向けたテストが始まり、この結果を受けて新車の開発もいよいよ佳境を迎える。角田ももてぎでのイベント後はすぐにイタリアに戻り、チームとの準備やトレーニングに明け暮れるという。

 マシンよりも角田のほうが大きく成長した1年だった。2023年は両者の成長が一気に花開くシーズンになることを願いたい。そこに向けての助走はすでに始まっている。