一般社団法人ジャパンサイクルリーグ(以下、JCL)主催の「三菱地所 JCL プロロードレースツアー2022」の第10戦となる「那須塩原クリテリウム」が10月23日、栃木県那須塩原市にて開催された。このレースは、栃木県北部を舞台に行われるクリ…

一般社団法人ジャパンサイクルリーグ(以下、JCL)主催の「三菱地所 JCL プロロードレースツアー2022」の第10戦となる「那須塩原クリテリウム」が10月23日、栃木県那須塩原市にて開催された。
このレースは、栃木県北部を舞台に行われるクリテリウム連戦の2日目であったが、前日開催された「湧水の郷しおやクリテリウム」で多くの選手たちを巻き込む転倒事故が発生。負傷した選手の数も多く、初日は継続が不可能となり「レースキャンセル」となった。前日の転倒のダメージが残り、出走できない選手も少なくはなかったが、リーグ戦も終盤であり、走れない選手の志を受けた精鋭たちが闘志を胸に、スタートラインへと並んだ。



スタート前には地元の子ども達の太鼓のパフォーマンスが披露された

この日のレースには、人気観光地である那須のエリア玄関口であり、新幹線も停まる、JR那須塩原駅の西側大通りを大きく区画した特設周回コースが用いられた。 一周1.8kmと距離は短いが、カタカナの「ト」の形に設定されたコースには、ヘアピンコーナーが3つ、直角のコーナーが2つ含まれ、レースを走る選手は、コーナーを越えるごとに強制的なペースの上げ下げが入り、消耗されていく。レースは、コースを25周する45kmの設定となり、1時間程度の短い戦いとなるが、その分、めまぐるしい展開となることが予想された。



JR那須塩原駅前に設営された特設コース



コーナーが多く、いったんペースを緩めるコーナリングのたびに選手は体力を奪われていく

先頭に並ぶのは、個人総合首位の証であるイエローのリーダージャージを着た小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)。JCLの主催レースではないが、ポイント付与があるおおいた連戦の結果を受け、リーダーの座はチームメイトの増田成幸から、小野寺に移った。ブルーのスプリント賞リーダーも小野寺が保有する。U23の首位のホワイトジャージは渡邊諒⾺(VC福岡)、山岳賞首位のレッドジャージはネイサン・アール(チーム右京)が守っている。



各賞のリーダーとホストチーム那須ブラーゼンのメンバーを先頭にスタート

沿道に詰めかけた大勢のサポーターが見守る中レースはスタート。レーススタート同時にアタックと追走が繰り返され、激しい展開が始まった。ランキング上位の選手も自ら前方で果敢に仕掛けていく。序盤からスピードが速く、選手が顔を歪め、遅れないよう必死で食らいつく姿が見られた。



スタート早々からアタックの掛け合いとなる激しい展開に



スピードのアップダウンの影響を強く受ける後部の選手へのダメージが周回を追うごとに大きくなる

レースが動いたのは、スプリントポイントが設定された周回賞の初回の10周目だった。小野寺のブルージャージを確実するため、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)とともに仕掛けていくが、地元のこの2名の実力者の動きを見過ごすわけはなく、数名が反応した。



小野寺玲を連れ、阿部嵩之(共に宇都宮ブリッツェン)が飛び出すと、レイモンド・クレダー(チーム右京)、孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)らが反応



実力者を多く含む集団が形成された

前年のJCL個人総合優勝者である山本大喜(キナンレーシングチーム)、チーム右京からは小石祐馬と、スプリンターのレイモンド・クレダー、日本移籍までは最高峰のワールドチームで走っていたダイボール・ベンジャミン(チーム右京)、地元那須から西尾勇人(那須ブラーゼン)、スプリンターチームの中でいつも勝利を支える働きをしてきた孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)らが続き、8名が集団からの抜け出しに成功した。

※優勝争いは集団でのスプリント勝負へ!次ページ→

残りの周回賞も全てこのメンバーで争われ、2回目を山本大喜、3回目を西尾勇人が獲得している。一方、メイン集団も先頭8名を追い続けた。テクニカルなコースの中で消耗されたメンバーが脱落して行き、集団の人数は周回を経るごとに減っていった。



全力で集団を引き上げるキナンレーシングチーム



逃げ続けた先頭集団だが、振り返ればメイン集団が迫っていた

先頭と最大約20秒開いていたタイム差は、3回目の中間スプリントが終わるころには、かなり小さくなり、ラスト3周回に差し掛かるころ、集団は再び一つになった。とはいえ、メイン集団でエースたちを引き上げるべく全力を尽くした選手たちは脱落しており、合流した集団のサイズはかなり小さくなっていた。



終盤の戦いを担う選手を引き上げる中で力尽きた選手たちが脱落し、小さくなった集団が、先頭と合流。混沌とした中でスプリント勝負への位置取りが始まる

残り距離は5km。優勝者はこの集団の中でのスプリント勝負で決まることになる。



再構成された集団の中でも、小野寺のために先頭を引き続ける阿部



先頭を全力で牽引するダイボール(チーム右京)

経験値の高い実力者を多く残したチーム右京がすばらしい連携を見せ、ゴールに向かう。ダイボールが最終周回をハイペースで牽引し、最終コーナーで、クレダーをベンジャミン・プラデス(チーム右京)へと託した。スプリンターである小野寺、孫崎が負けじと続くが、その背後から敏腕スプリンターであるクレダーが一気に加速。



先頭に立つレイモンド・クレダー(チーム右京)

クレダーはそのまま先頭へ躍り出ると力強く踏み切り、誰も寄せ付けないままトップでフィニッシュラインを通過。 狙ったレースは逃さない巧者が、得意のパターンでスプリント優勝を飾った。続く2位には小野寺が続き、表彰台を死守した。3位には、今季で引退を表明している中島康晴(キナンレーシングチーム)が入った。



クレダーがトップでフィニッシュ。2位にリーダーである小野寺が、3位に中島が入った

優勝したクレダーは、「簡単なレースにはならなかったが、望んでいた結果を得ることができて非常に嬉しい」と喜びを語った。 終盤の激しい展開について触れながらも「得意としている小集団でのスプリントだったので、自信を持ってスプリントをすることができた」と振り返る。終始よく動いてくれたチームメイトへの感謝を述べ、このレースが今季の最終戦になるというクレダーは「最後にいい結果を残すことができて本当に良かった」と、笑顔でインタビューを締めくくった。



上位3名と周回賞を受賞した選手

首位を守ってきた宇都宮ブリッツェンにとっては、前日のレースの影響で、出走できるメンバーが少ない厳しい条件下でのレースだった。戦術が限られる中で、小野寺は、「逃げ(集団からの抜け出しと先行)」にトライしてみたという。「去年と同じ2位となってしまった」と悔しさを語ったものの、地元ファンへの感謝を述べ「たくさんのファンの応援の中で走ることができて嬉しかった」と、ホッとした笑顔も見せた。前日のレースで骨盤を骨折し、今季の復帰は絶望となったエース増田成幸への思いと、地元の声援に応える走りだった。



今季の個人総合、スプリント賞の2枚のリーダージャージ獲得を確実にした小野寺。渡邊諒馬(VC福岡)もホワイトジャージを守った

残すレースは山口の2戦。ポイント付与が設定されているUCI(世界自転車競技連合)認定レースであるツール・ド・沖縄を終えた段階で、ランキングは最終決定。小野寺のダブルジャージが揺らぐことは、もうないだろうという状況となった。

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【結果】JCL第10戦・那須塩原クリテリウム
1位/クレダーレイモンド(チーム右京)1:02’40”
2位/小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)st
3位/中島康晴(KINAN Racing Team)+0’01”
4位/孫崎大樹(Sparkle Oita Racing Team)+0’01”
5位/西尾勇人(那須ブラーゼン)+0’02”

【JCL各賞リーダージャージ表彰】
イエロージャージ(個人ランキングトップ)
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)

ブルージャージ(スプリント賞)
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)

レッドジャージ(山岳賞)
ネイサン・アール(チーム右京)

ホワイトジャージ(新人賞)
渡邊諒馬(VC福岡)

画像提供: ジャパンサイクルリーグ(JCL)

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