今年の全日本大学駅伝は駒澤大がとにかく強かった。出雲駅伝に続いての独走Vで、後続を1km以上も引き離した。追い風のコンディションになったこともあり、4位の順天堂大までが大会新。駒澤大は大会記録を4分21秒も更新するという"超高速レース"に…

 今年の全日本大学駅伝は駒澤大がとにかく強かった。出雲駅伝に続いての独走Vで、後続を1km以上も引き離した。追い風のコンディションになったこともあり、4位の順天堂大までが大会新。駒澤大は大会記録を4分21秒も更新するという"超高速レース"になった。



今年の全日本大学駅伝ではオレンジ色のナイキのシューズが目立ったが、他メーカーの着用者もいた

 近年、学生長距離界のレベルが高騰している。そのなかで大きな役割を果たしているのがシューズの進化だ。ナイキが2017年に厚底シューズを登場させてから、他社も続々とハイレベルのモデルを発売。学生駅伝で「シューズ大戦争」が起きている。

 シューズシェア率は1年単位で大きく変貌しているが、今季の戦いはどうなっているのか。全日本大学駅伝の着用シューズを調べてみた。

まず目立ったのがナイキ厚底の最新カラー「トータルオレンジ」のシューズだ。ユニフォーム契約をしている駒澤大、中央大、東洋大、東海大の選手たちを中心に着用。他のカラーを履いていた選手も多く、今回もナイキが一強だったと言えるだろう。

 昨年の大会は216人中177人がナイキを着用(シェア率は81.9%)。区間賞を獲得した選手は、8区間中6区間がナイキを履いていた。今年は、ナイキの着用率はザっと7~8割ほどか。区間賞獲得者、着用シューズメーカーは以下のとおりになる。

1区 ピーター・ワンジル(大東大2年)ナイキ

2区 葛西潤(創価大4年)アディダス

3区 石原翔太郎(東海大3年)ナイキ

4区 山川拓馬(駒澤大1年)ナイキ

5区 青木瑠郁(國學院大1年)プーマ

6区 吉居大和(中央大3年)ナイキ

7区 田澤廉(駒澤大4年)ナイキ

8区 花尾恭輔(駒澤大3年)アシックス

 最も多く区間賞を獲得したのはナイキだった。厚底レーシングモデルは主に2つ。『ヴェイパーフライ ネクスト% 2』と、前足部にエアが搭載された『エア ズーム アルファフライ ネクスト% 2』(もしくは『エア ズーム アルファフライ ネクスト%』)だ。

アディダスとアシックスも好結果に

 区間賞獲得者でいうと、4区の山川拓馬(駒澤大1年)が『エア ズーム アルファフライ ネクスト% 2』で、1区のピーター・ワンジル(大東大2年)、3区の石原翔太郎(東海大3年)、6区の吉居大和(中央大3年)、7区の田澤廉(駒澤大4年)の4人が『ヴェイパーフライ ネクスト% 2』だった。

 このなかで吉居は、全日本の2日前まで帯状疱疹で3日間完全休養したため、今回は出場を見送る予定だったという。しかし、前日の5km走を「14分19秒くらいで余裕を持ってできた」と出場を直訴。急遽、出走するかたちで区間記録を11秒も更新している。

 走りの衝撃度では田澤が一番だろう。トップを独走しながら10kmを27分台で通過。日大のパトリック・ワンブィが保持していた区間記録を43秒も塗り替えた。なお同区間で区間記録を29秒上回った青学大4年の近藤幸太郎は、昨年発売された『エア ズーム アルファフライ ネクスト%』を着用していた。

 今年の箱根駅伝で前年よりシェアを伸ばしたアディダスとアシックスもしっかりと区間賞を獲得した。

 アディダスは2区の葛西潤(創価大4年)が区間新の快走でトップ中継。ナイキを履く駒澤大・佐藤圭汰(1年)、順大・三浦龍司(3年)らを抑えて区間賞も獲得した。葛西が着用していたモデルは今年7月に発売された『アディゼロ アディオス プロ 3』。アディダス独自の5本指カーボンを搭載した厚底シューズになる。

 アシックスは8区の花尾恭輔(駒澤大3年)が日本人歴代4位となる57分30秒で区間賞。2年連続でアシックスのシューズを履いて、優勝ゴールに飛び込んだ。今回着用していたモデルは今年6月に発売された『METASPEED SKY+』だ。ストライド型ランナーがよりストライドを伸ばし、少ない歩数でゴールすることを追求したシューズになる。ピッチ型向けのモデル『METASPEED EDGE+』もあるが、レース用としては『SKY+』をチョイスしている選手が多いようだ。

プーマの躍進

 それから今大会、注目すべきはプーマの躍進だろう。5区の青木瑠郁(國學院大1年)が今年10月に発売された『FAST-R NITRO ELITE Fire Glow』という厚底モデルを履いて区間賞を獲得。昨季までナイキを着用していた丹所健(東京国際大4年)も2区で7人抜きを演じている。丹所は年明け発売予定の『FAST-FWD NITRO』を着用して結果を残した。同シューズは前足部のソールが薄い厚底モデル。どんな仕掛けがあるのか、公式発表が楽しみだ。

 なお、今年はプーマのユニフォームを着ている立教大が箱根駅伝予選会を突破。正月の晴れ舞台に55年ぶりに出場することになる。箱根予選会でプーマを履いていた立大の選手はいなかったが、ふだんの練習では多くの選手が同メーカーのシューズを活用しているという。前回の箱根駅伝はひとり(明大・加藤大誠)しかいなかったプーマが、正月決戦でどこまで数を増やすのか。

 今回は区間賞に届かなかったが、ミズノは創価大・嶋津雄大(4年)が着用しており、箱根駅伝での反撃が見どころ。ニューバランスは今夏のオレゴン世界選手権で中長距離3種目に出場した田中希実(豊田自動織機)が履いている。正月の箱根駅伝でもシューズのシェア争いが激化しそうだ。