後半から出場の乾貴士は存在感をアピール(写真:徳丸篤史) 約10日間の合宿を積んできた海外組が主体となったシリア戦。相手は試合開始からアグレッシブに球際を襲い、ボールを奪えばフィジカルとスピードを生かして前にどんどん攻めてくる。長い期間トレ…


後半から出場の乾貴士は存在感をアピール(写真:徳丸篤史)

 約10日間の合宿を積んできた海外組が主体となったシリア戦。相手は試合開始からアグレッシブに球際を襲い、ボールを奪えばフィジカルとスピードを生かして前にどんどん攻めてくる。長い期間トレーニングを行ってきた日本の選手たちは、疲労感と集団的なマンネリ感が顕著に表れ、ハツラツとしたプレーを展開する敵に圧倒されていく。

 7分には香川真司が中盤で一度相手にかわされながらも、並走しタックル。そこで左肩を脱臼してしまった。受け身に回った結果、痛手を被ったこのプレーこそ、日本の前半を象徴するような場面だった。その後も攻撃は単発。一人気を吐いた原口元気が3本のシュートを放ったが決められず。前半ロスタイムには3月シリーズで大活躍した久保裕也が右足を振り抜くも、これもポスト左へと外れていった。

 すると後半開始早々の48分、シリアのショートコーナーから最後はゴール前でヘディングシュートを決められ先制点を献上。マークに付いていたのは、CBに抜擢された昌子源。期待されながらも前半からバタつく場面が多かったが、失点に絡んでしまった。

 しかしここから日本もリズムをつかんでいく。後半開始からピッチに入り、途中からインサイドハーフにポジションを変えた本田圭佑、アンカーの山口蛍に代わって登場した井手口陽介、そして左ウイングに投入された乾貴士ら、途中出場の選手たちが攻撃を活性化させていく。「前半は一人ひとりの距離が遠かった。そこの間に本田さんと井手口が入ってくれて、(倉田)秋もうまくリズムをつかんでくれた。後半は選手間の距離は良かった」と後方からボールを送った吉田麻也も振り返る。すると58分、左サイドを連係で突破した長友佑都の折り返しを押し込んだのは、今野泰幸。3月のW杯アジア最終予選・UAE戦に続いて、目に見える形でチームに貢献した。

 その後は好機を重ねたが決め手を欠いた日本。イラク戦を見据えると、不安の募る前半と収穫のあった後半というコントラストが描かれた試合だった。

文・西川 結城