フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコーと)は大会11日目、男子シングルス準々決勝がすべて行われた。 前日に行われるはずだったドローのボトムハーフ、第2シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)と第…

 フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコーと)は大会11日目、男子シングルス準々決勝がすべて行われた。

 前日に行われるはずだったドローのボトムハーフ、第2シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)と第6シードのドミニク・ティーム(オーストリア)は、ティームが7-6(5) 6-3 6-0で勝利。第4シードのラファエル・ナダルと第20シードのパブロ・カレーニョ ブスタとのスペイン対決は、カレーニョ ブスタが腹筋を痛めて第2セットで途中棄権した。

 また、ドローのトップハーフは、第8シードの錦織圭(日清食品)が第1シードのアンディ・マレー(イギリス)に6-2 1-6 6-7(0) 1-6で敗れた。マレーは準決勝で、第7シードのマリン・チリッチ(スイス)を6-3 6-3 6-1で一蹴した第3シードのスタン・バブリンカ(スイス)と対戦する。◇     ◇     ◇

 贔屓目だろうか。明らかに、押していたのは錦織だったし、マレーは錦織のプレーを極端に嫌がっているように見えた。

 贔屓目ではないだろう。マレーもこう認めている。「スタートはケイのほうが僕よりいいプレーをしていたし、第2セットの初めもケイにチャンスがあった」。

 昨年3月のデビスカップ、9月の全米オープン、そして11月のツアーファイナルズと、最近対戦した試合はすべて大接戦になっている。過去の対戦の記憶と、錦織の立ち上がりがダブれば、相当のプレッシャーをマレーは感じていたはずだ。錦織自身も「これ以上ないくらいのいい内容だった」と振り返った。センターコートで対マレー。アドレナリンの噴出は無関係ではなかっただろう。

 2度のブレークに成功した錦織が第1セットを6-2と圧倒。第2セットも第3ゲームでブレークポイントこそなかったが、マレーの40-0から2度のデュースにまでもち込んだ。この2度目のデュースのあと、マレーはこの試合2度目のタイムバイオレーションをとられ、ペナルティとしてファーストサービスを失う。強い調子で抗議したが聞き入れられず、マレーは相当のダメージを受けたに違いなかったが、甘かった。錦織のリターンがベースラインを越えると、次はフォアハンドのダウン・ザ・ラインへのウィナー。試合中に起こるあらゆることは勝負の駆け引きになるのだろう。

 第3セット第4ゲーム、セカンドサービスでのエースでスタートすると、バックハンドのイージーなミスが2本続き、致命的だったのがそこからのスマッシュミスとダブルフォールトだ。このゲームをブレークされ、第5ゲームで2度ブレークバックのチャンスを握ったが、逃げられた。

 チャンスを逃したあとのピンチ、ピンチをしのいだあとのチャンス----勝負にありがちな展開を繰り返しながら、このセットはマレーのほうへ転がっていった。結局マレーが5ゲームを連取して6-1でセットを奪う。

「相手もレベルが上がっていったけど、どっちかというと自分に原因がある」と、のちに錦織は肩を落とし、マレーもまた「僕は特別何もしていない。あそこはケイのプレーがまずかった」と振り返った。

 第3セットも錦織には悔やまれるものだった。第5ゲームをブレークされてすぐにブレークバック、第11ゲームをブレークされるとまたすぐにブレークバックという展開で、タイブレークへ。最初のポイントで錦織はフォアハンドのアンフォーストエラーでミニブレークを許すと、1ポイントも奪えずにタイブレークを失った。

「タイブレークはもったいないミスばかりだった。自分のほうはいっぱいいっぱいで、タイブレークにもっていった感じ。あっちのほうが余裕はあったと思う」

 錦織がタイブレークで1ポイントも取れなかったことは過去にない。ネガティブな流れをそのまま第4セットにもち込んでしまった。

 体力は戻ってきていたというから、なおさら残念な敗戦だ。「この2週間、戦いながら回復することができた。体が強くなっている証拠。もし今日勝ったとしたら、あと2試合できたと思います」。

 十分な試合数をこなせず自信を失いかけたクレーシーズン。集中力の持続、あるいは集中力の波のつくり方というテーマは残ったが、錦織の"MAX"にはまだ先があると思える今年のロラン・ギャロスだった。(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)※写真は「全仏オープン」準々決勝で世界1位のアンディ・マレー(イギリス)に敗れた錦織圭(日本)(撮影◎毛受亮介/テニスマガジン)