フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日〜6月11日/クレーコート)の大会11日目、女子シングルス準々決勝。 セットを先取され、2ブレークを許して、敗戦まであと1ゲームと追い詰められたシモナ・ハレプ(ルーマニア)は、対戦…

 フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日〜6月11日/クレーコート)の大会11日目、女子シングルス準々決勝。

 セットを先取され、2ブレークを許して、敗戦まであと1ゲームと追い詰められたシモナ・ハレプ(ルーマニア)は、対戦相手が試合を終わらせるためにサービスに入る前のコートチェンジの間、必ずしもポジティブなことばかりを考えていたわけではなかった。

「『この試合は失われてしまった。これでもう終わりだわ』と私は頭の中で言っていた」とハレプは振り返る。「それから、よりリラックスした感じを覚え始めたの。もしかすると、もう終わったと思ったおかげなのかもしれない」。

 それは、うまく機能した。第3シードのハレプは、そこから挽回して長い距離を這い上がると、その過程でマッチポイントをしのぎつつ、第5シードのエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)を3-6 7-6(6) 6-0で倒し、キャリア2度目の全仏準決勝に進出したのである。

 2014年の全仏準優勝者であるハレプは、第2セット1-5とリードを奪われ、それからタイブレークでも5-6とされ、敗戦まであと1ポイントという窮地に立たされた。しかし彼女はそこからダウン・ザ・ラインへバックハンドのウィナーを叩き込み、試合を延長させたのだ。

 その時点では事態がどれだけ悲惨であるかの自覚もなかったのだという。ハレプは試合後にツイッターを調べていて、初めてスコアがどのような状態だったかに気づいた。

「彼女のマッチポイントだったの? という感じだった」とハレプ。「試合の最中には気づいていなかった」。

 本当に気づいていなかったのか? の問いに、彼女は「ええ」と保証した。「実際、そのほうがよかったわ」。

 木曜日の準決勝で、ハレプは第2シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)と対戦する。プリスコバは第28シードのカロリーヌ・ガルシア(フランス)を7-6(3) 6-4で下した。

 今、世界1位の座がきわどい状況にある。もしプリスコバが決勝に進出すれば、彼女は全仏で1回戦負けしたアンジェリック・ケルバー(ドイツ)に代わり、WTAランキングの1位に躍り出る。一方、もしハレプがプリスコバに勝って決勝に進出し、そこでタイトルを獲得すれば、ハレプが新しい世界1位となる。

 このもたらされ得る"賞"のせいで、追加的なプレッシャーを感じるかと聞かれたプリスコバは、笑みを浮かべ、「いいえ、そんなことはないわ。この大会に来た時点で、数人の人々が『ナンバーワンになるには決勝に進出しなければいけない』と言っていたから」と答えた。

「私はそのとき、『私がここで決勝に進出するなんて、そんなことあるわけないでしょ』という感じだった」とプリスコバは言った。「今、確かに近づいてきてはいるけど、近くて、同時に遠くもある。なぜって私はクレーで最強の選手のひとりとプレーすることになるのだから。それはタダでもらえるという類のものじゃない」。

 全仏決勝進出に関する、プリスコバのあえて自分を目立たなくさせるようなコメントは、筋が通ったものだった。彼女は昨年の全米オープン準決勝でセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)を倒し、決勝でケルバーに敗れて準優勝してはいたが、結局のところ、クレーコート上では大した成功をおさめてはいない。彼女はこれに先立つ5回の全仏出場で2試合にしか勝っていなかったのである。

「このサーフェスで私のベスト・テニスをプレーするのはおそらく難しいでしょうね」

 コツの要るクレーでのフットワークに苦労していること、クレーが自分の武器であるサービスの威力を鈍らせることを理由に挙げつつ、彼女はこう言った。

 もっとも、幸運のおまじないとして、白いリボンを結び付けてあるラケットから繰り出される彼女のパワフルなショットは、ガルシアを驚かせた。大会に勝ち残っていた最後のフランス人選手であるガルシアは、31本ものアンフォースドエラーを犯し、対するプリスコバは13本に抑えていた。

「でも、ベストが無理でも、私はよりよいテニスをプレーすることはできると思う」とプリスコバ。「おそらくそれがハレプに対する試合で必要となってくることなのよ」。

 先月、ハレプは、今季の獲得タイトル数と勝利数でツアー首位のスビトリーナに、ローマの決勝で敗れていた。ハレプにとってより悪いことに、彼女は右足首の腱を痛め、全仏に出場できるか否かも定かではなくなってしまった。

 とはいえ、この準々決勝でのハレプは、コート中を駆け回ってウィナーになるかに見えていたスビトリーナのショットを拾いまくり、その故障をうかがわせるものは何も見せなかった。大きな困難に陥ったあと、ハレプは回転をかけたボールをより深く入れるよう努力し、スビトリーナをより走らせるように努めることで、その苦境から這い上がった。

 自身4回戦で、第3セット2-5から挽回勝ちしていたスビトリーナは、この対ハレプ戦でややナーバスになってしまったことも、助けにならなかったと試合後に認めた。

「こうも大きな大会なのだから、そういうことも起きるわ」とスビトリーナはコメントした。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は「全仏オープン」準々決勝でエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)を破ったシモナ・ハレプ(ルーマニア)(撮影◎毛受亮介/テニスマガジン)