◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 最終日(13日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー70) 「入場無料」の効果は絶大だった。男子レギュラーツアーでは近年、同じく来場者をフリーで受け入れた大会があったが、1…

鈴なりの人…男子ツアーでは久々の光景だった

◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 最終日(13日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー70)

「入場無料」の効果は絶大だった。男子レギュラーツアーでは近年、同じく来場者をフリーで受け入れた大会があったが、1973年の初回大会から50年以上の歴史を誇り、77年から同一コースで開催してきた伝統のトーナメントでの実施は異例。50回目の記念大会での施策は、ここ数年では際立つ来場者数をたたき出した。

各日のギャラリー数は予選ラウンドが初日4170人、2日目に5131人。決勝ラウンドに入り3日目の1万67人はコロナ禍以降で最高、最終日は午後からの雨にもかかわらず7334人が白熱の優勝争いを見守った。

4日間合計2万6702人は、前年の8998人の約2.96倍。今季ここまでトップだった8月「Sansan KBCオーガスタ」の1万3187人の約2倍に上った。日米ツアー共催競技「ZOZOチャンピオンシップ」を除けば、2019年以降では同年5月の「中日クラウンズ」に次ぐ2番目に多い数字。今季の男女ツアーを通じては「日本女子オープン」の2万7271人に続いた。

大会運営をリードした三井住友カードの佐々木丈也常務執行役員は今回の試みについて「事務局でも議論を重ねてきました。50回にわたって大会を主催させていただいた節目で、社会的にどう貢献できるか。地元の御殿場市の皆さん、選手、男子ゴルフ界に恩返しをしたかった」と意図を説明。準備に奔走してきた。

「御殿場ラーメンフェスタ」も実施

前年実績で、大会の前売り券は平日で各日4000円、週末それぞれ6000円(いずれも税込)。例年チケット収入で得られる推定数千万円は同社の“持ち出し”で、選手に渡る2億円(優勝4000万円)の賞金総額を下げずにギャラリーを受け入れた。

日本屈指のトーナメントコースである太平洋クラブ御殿場コースは主要鉄道駅から遠く、アクセス面で恵まれた会場とは言い難い。駐車場の確保が命題となり、タイガー・ウッズが当地で出場した2001年「ワールドカップ」時の実績を参考に、同じ敷地を借りて5500台分を用意。さらに大会スタート後にも週末に備えて急きょ、1000台分のエリア確保を御殿場市に依頼し、追加した。

場内では新たなイベントとして、飲食スペースで「御殿場ラーメンフェスタ」なる企画を立ち上げた。三井住友カードが例年、東京・駒沢公園で実施し、延べ70万人を飲み込むラーメンフェスタをゴルフ場に移植し、全国から6店舗を招いた。「ラーメンは日本人にとって人気のコンテンツ。集客(材料)のひとつになり得る」とランチタイムをにぎわせた。

ルーキーの蝉川泰果も注目の的に

そうは言っても、一番のコンテンツはプロゴルフである。「普段、ゴルフ観戦に来ない方にとっては、プレーを生で見たり、(インパクトの)音を聞いたりすれば『男子の選手はすごいな』と感じていただけると思う」と佐々木常務は言う。

プロスポーツは選手がそのプレーを見せることで収入を得る興行であり、「入場無料」はその概念を覆すという見方もできる。「そういうお声があるのも認識しています。プロスポーツ自体がお金を取るものである、という声も否定しません」

しかし節目の今年については「大会を長く続けてきた主催者の思いとして、たくさんの人に来てもらいたかった。男子ツアーが盛り上がる、プラスに働く“きっかけ”になれば」という思いが実施を後押し。近年まれに見る大盛況の成果は今後、目に見える形で表れるだろうか。(静岡県御殿場市/桂川洋一)