大分県大分市で開催された「OITAサイクルフェス!!! 2022」。2日目のロードレース「おおいたアーバンクラシック」は、大分スポーツ公園周辺の特設コースでUCI(世界自転車競技連合)認定の国際レースとして開催された。前日のクリテリウムに続…

大分県大分市で開催された「OITAサイクルフェス!!! 2022」。
2日目のロードレース「おおいたアーバンクラシック」は、大分スポーツ公園周辺の特設コースでUCI(世界自転車競技連合)認定の国際レースとして開催された。

前日のクリテリウムに続き、久しぶりに海外チームが参戦する国際レースとしての開催となる。欧米の街を思わせるような美しい住宅街を抜けることもあり、観戦するファンにも人気の高いレースだ。同時開催となった台湾の国際レースと2グループに分け、同時参戦したチームも少なくないが、上位10選手にUCIポイントが付与される国内の国際レースは、今季このレースと「ツール・ド・おきなわ」を残すのみ。臨む選手たちにも気合が入る。
コースは、昭和電工ドーム前をスタート/フィニッシュに設定した1周11.6km。これを13周する150.8kmのレースとして競われる。大分スポーツ公園内と周辺の公道を走るコース内には激坂と言えるような特徴的な上りはないものの、多くのアップダウンも含まれている。また、公園や一般市街地など、多様なエリアをつないで走るため、路面や道路幅などの変化も大きく、コーナーも多い。13周する中で、選手たちはじわじわと消耗されていくだろう。
この日は、朝から晴天に恵まれ、暑さすら感じる日となった。久しぶりに、多くの観衆に見守られながら、選手がスタートしていく。



地元のスパークルおおいたレーシングチームのメンバーを先頭にスタート

有力チームが前方を固め、レースを支配していくという気概を見せる中、早々に大きな動きが生まれた。2周目に「逃げ屋」とも言えるスペシャリスト阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が飛び出し、単独先行を始めたのだ。



阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が単独で飛び出した

小出樹(キナンレーシングチーム)、河野翔輝(チームブリヂストンサイクリング)、堀孝明(宇都宮ブリッツェン)の3名が追走を始め、3周目に合流。早々に4名の先頭集団が形成された。



小出樹(キナンレーシングチーム)、河野翔輝(チームブリヂストンサイクリング)が阿部を追う

4名の逃げは容認され、コントロールするチームが出てないまま、メイン集団とのタイム差は一気に1分30秒前後まで開いた。



4名の逃げ集団が形成された

ようやくマトリックスパワータグが先頭に集まり、ペースアップを始め、レース中盤までに30秒前後までタイム差が縮まった。このタイミングで、集団から数名が飛び出し、追走を開始した。



宇賀隆貴(チーム右京)が先頭4名に合流、5名の集団を形成する

この中から先頭への合流を果たしたのは宇賀隆貴(チーム右京)のみだった。5名となった先頭集団はペースを緩めることなく、逃げ切りに向けて走る追走の動きを経て、また、主要チームがメンバーを送り込んでいたこともあり、メイン集団を引き上げる動きは鈍くなり、いったん狭まった先頭集団とメイン集団との差は、ふたたび広がり始め、ついに1分以上の差が開いてしまった。



順調に周回をこなす先頭5名。逃げ切りが見えてきた

ラスト2周となったが、メイン集団は牽引するメンバーが揃わない。先頭5名の逃げ切りが、かなり濃厚になった。先頭5名の中では、ゴール勝負を意識した動きが生まれ始める。宇賀がキレのあるアタックを決め、阿部と小出が食らいつく。



宇賀が飛び出し、先頭5名に揺さぶりをかけた。この動きに反応できたのは阿部と小出のみだった

この揺さぶりが功を奏し、ペースアップに堪えきれなかった河野と堀が遅れ、先頭は3名に絞られた。唯一先頭に2名を送り込んでおり、有利かと見られていた宇都宮ブリッツェンも2周目から逃げ続けている阿部1名に絞られてしまう。

このまま負けるわけにはいかないと、昨年の優勝者フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)が先頭に立ち、マトリックスパワータグのメンバーらとメイン集団の引き上げを図るが、思うようなペースアップが叶わない。なんとか前に追いつこいうという動きがパラパラと生まれるが、集団からも抜け出せず、それらの力を束ねることもできなかった。



必死で集団の牽引を図るフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)

先頭3名とメイン集団との間にほぼ1分の差を残したまま、レースは最終周回に突入した。ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)が集団を飛び出し、単独で3名を追い始める。集団も追うように決死のペースアップを図るが、全力で先行する3名とのタイム差はあまりにも大きかった。
お互いの状況を見合っていた3名の中で、最初に仕掛けたのは宇賀だった。ラスト500m、緩い上り区間に入ったタイミングで、宇賀はぐんぐんとペースアップし、2名を引き離しにかかる。ここまで消耗されていた2名は食らいつくことができず、宇賀は独走状態に。両手を突き上げ、勝利を噛み締めるようにフィニッシュラインを越えた。2位には阿部、3位に小出が入った。



両手を突き上げ、宇賀がトップでフィニッシュ。自らの決断で掴んだ初勝利だった

追っていた集団は、この30秒後にフィニッシュしている。
宇賀にとってはこの勝利はプロ初勝利であり、もちろんUCIレースとしても初勝利。チームの主要メンバーが台湾遠征に出ている中で掴んだ大きな価値のある勝利だった。

この日は宇賀のコンディションはあまり優れず、あくまでアシストの一環のつもりで飛び出したのだという。自らの判断で動き、勝ち取った勝利が、まだ信じられないような様子だった。



表彰式。素晴らしい健闘を見せた3名に惜しみない拍手が送られた

大分市を大いに沸かせた2日間が幕を下ろした。今後を占うような、若手の活躍が多く見られた意義のある大会となった。来年の「OITAサイクルフェス!!!」は、海外勢もフルメンバーに戻して、さらに華やかな開催となることだろう。

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【結果】おおいたアーバンクラシック2022(150.8km)
1位/宇賀隆貴(チーム右京)3時間29分50秒
2位/阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)+3秒
3位/小出樹(キナンレーシングチーム)+8秒
4位/ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ、スペイン)+30秒
5位/小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)st

画像提供:JCL ロードレースツアー(株式会社ジャパンサイクルリーグ)