11月6日に行なわれた全日本大学駅伝は、駒澤大が出雲駅伝に続いて大会新V。従来の記録を4分21秒更新し、後続を1km以上も引き離した。 来年正月の箱根駅伝も、悲願の3冠を目指す駒澤大が優勝候補の筆頭になるだろう。他大学では、前回覇者の青山…

 11月6日に行なわれた全日本大学駅伝は、駒澤大が出雲駅伝に続いて大会新V。従来の記録を4分21秒更新し、後続を1km以上も引き離した。

 来年正月の箱根駅伝も、悲願の3冠を目指す駒澤大が優勝候補の筆頭になるだろう。他大学では、前回覇者の青山学院大も戦力が充実しており、同2位の順天堂大も優勝を狙う。さらに、出雲と全日本で2位に食い込んだ國學院大、出雲3位の中央大、前々回の往路Vメンバーが3人残っている創価大も展開によっては優勝争いに絡んできそうだ。

 一方で、シード権争い(10位以内)はどうなるのか。出雲や全日本の結果などから探ってみたい。



全日本でエース・石原翔太郎の快走が光った東海大。箱根でシード獲得なるか

 近年の箱根は、予選会を突破した大学のシード権獲得が難しくなっている。前回は中央大と法政大が10位以内に入り、東海大や早稲田大がシード圏内から外れた。今回も予選会校とシード校の入れ替えは2校程度になるだろう。

 先ほど挙げた6校以外では、前回4位の東洋大がエース・松山和希(3年)を欠きながら全日本で8位。チームの足並みが揃えば上位争いに加わってくるはずだ。そうなると残りのシード権は「3枠」だが、ここからは大混戦になる。

 まず推したいのが東海大だ。箱根予選会は9位通過。全日本も10位に終わったが、本戦での期待値は十分だ。予選会で終盤失速したエース・石原翔太郎(3年)が全日本で快走。3区で涙の区間賞を獲得し、大舞台で完全復活を印象づけた。また、全日本にはエントリーしていなかったが、前回の箱根5区で区間2位と活躍した吉田響(2年)は予選会でチームトップ。6区には、前回区間6位の川上勇士(4年)が残っている。

 両角速駅伝監督も、予選会後に「箱根の本番では吉田が5区で使えるでしょうし、石原も2区か3区に起用できる。うまく選手を配置して上を目指したい」と話した。選手層も厚くスピードがある選手が多いだけに、エースと"山"で順位を上げることができれば、シード権獲得はもちろん、上位争いに切り込んでいく可能性もある。

 残りは2枠。前回5位の東京国際大は、今季はピリッとしない。昨年に初出場・初優勝を飾った出雲はイェゴン・ヴィンセント(4年)を欠いた影響もあって8位。全日本もヴィンセントが外れ、もうひとりの留学生ルカ・ムセンビ(4年)が8区を走って区間6位、チームは11位と振るわなかった。

 エース・丹所健(4年)は2区を希望しているが、前回1区で7位の山谷昌也(4年)は出雲と全日本を欠場。箱根2区と3区で区間記録を持つヴィンセントと、山谷の復帰がなければシード権獲得は危ういかもしれない。逆に2人が万全な状態で入れば、往路をかきまわす存在になるはずだ。

 法政大は出雲で7位に入ったが、5区終了時では5位につけていた。全日本は選考会で落選したが、出雲のレース運びは上々だった。出雲より箱根に適正があるチームだけに、今回も10位前後でうまくレースを進めそうだ。

 前回9位の帝京大は出雲で11位。関東勢では最下位で関西学院大にも先着を許した。全日本は選考会で敗退しており、6年連続で箱根のシードを確保するのは簡単ではないだろう。

 全日本は早大が6位に入り、箱根予選会校で唯一、全日本のシード権(8位以内)を獲得した。6月に就任した花田勝彦監督が「前半4人は理想どおりだった」というように、間瀬田純平(1年)、井川龍人(4年)、石塚陽士(2年)、山口智規(1年)とつなぎ、4区終了時で2位につけた。しかし、5区・小指卓也(4年)が区間11位、6区・菖蒲敦司(3年)が区間15位に沈み、8位まで順位を落としている。7区・伊藤大志(2年)、8区・佐藤航希(3年)が順位をひとつずつあげたが、箱根は全日本ほどスームズにいかないだろう。

 早大は箱根予選会で4位だったが選手層が薄く、前回に区間ひと桁順位で走って残っているメンバーは4区の石塚と7区の鈴木創士(4年)のみ。箱根予選会の走りを見れば、井川、佐藤、伊藤の3人も戦力として計算できるが、他は未知数だ。スピードのある選手が多いチームだけに、残り2カ月でどこまで"箱根仕様"に仕上げることができるか。

 明治大は箱根予選会を2位で通過。全日本は9位に終わり、3年連続を狙った全日本でのシードを逃している。予選会校のなかでは東海大と並ぶ戦力があるが、東海大と異なり、箱根駅伝では明確な"攻撃ポイント"がない。現状ではやや箱根のシードは厳しい状況か。

 予選会をトップで通過した大東文化大は、5年ぶりの全日本で14位。1区のピーター・ワンジル(2年)が区間トップで飛び出したものの、2区で10位、3区で14位まで転落。4~6区で少し盛り返すも、終盤2区間でまた順位を落とした。かつては"山の大東"と呼ばれていたが、箱根出場は4年ぶりとなるだけに5区と6区の準備も万全ではないだろう。明大と同じくシード権獲得は簡単ではないと予想する。

 大東大以外にも、城西大、山梨学院大、専修大、国士館大はケニア人留学生を擁するチーム。往路を10位以内で折り返してシード権争いに加わりたいところだ。日体大はエース・藤本珠輝(4年)の復帰がカギ。立教大は現状、シード権は難しいが、新風を吹かせてくれるはずだ。

 現状は上記のような勢力図だが、今後の10000mやハーフマラソンの結果でチームはまだまだ変わっていく。優勝、上位争いだけでなく、シード権をめぐる戦いも要注目だ。