11月6日、東京六大学野球秋季リーグの最終週2日目が行われ、両チーム合わせて計26安打15得点の乱打戦の末に早大が9対6で慶大に勝利。その結果、すでに全日程を終えた明大が優勝となり、早大が今カード2連勝で勝ち点を獲得して2位。敗れた慶大が…
11月6日、東京六大学野球秋季リーグの最終週2日目が行われ、両チーム合わせて計26安打15得点の乱打戦の末に早大が9対6で慶大に勝利。その結果、すでに全日程を終えた明大が優勝となり、早大が今カード2連勝で勝ち点を獲得して2位。敗れた慶大が3位で今季リーグ戦を終えた。
試合開始直後の1回表、早大の印出が満塁本塁打。いきなり4点のリードを奪った
前日の1回戦をサヨナラ勝ちで手にした早大は、今季4試合(先発1試合)に登板して2勝0敗、防御率2.57の鹿田泰生(2年・早稲田実)が先発。一方、優勝のためにはもう負けられない慶大は、今季4試合(先発4試合)に登板して1勝2敗、防御率2.95の外丸東眞(1年・前橋育英)が先発マウンドへ。秋晴れの空の下、連日の2万人超となる観衆がスタンドを埋め尽くした。
試合はいきなり大きく動いた。1回表、早大は1番・松木大芽(4年・金沢泉丘)と3番・熊田任洋(3年・東邦)のヒットに犠打と死球で1死満塁のチャンスを掴むと、5番・印出太一(2年・中京大中京)が1ストライクからの2球目、低めの変化球をすくい上げてレフトポール際へ放り込む満塁本塁打。早大が試合開始10分も経たないうちに大量4点のリードを奪い、前日の1回戦に続いて試合の主導権を握った。
満塁本塁打を放った早大の印出が歓声の中、渾身のガッツポーズでダイヤモンドを周る
その後も早大打線は攻撃の手を緩めなかった。2回裏に1点差に詰め寄られたが、直後の 3回表に前日今季1号弾を含む3安打を放った4番・蛭間拓哉(4年・浦和学院)のヒットから、5番・印出、6番・吉納翼(2年・東邦)、7番・生沼弥真人(3年・早稲田実)と4連打で2点を奪取。5回表には6番・吉納と8番・山縣秀(2年・早大学院)のヒットで2死二、三塁のチャンスを作ると、代打・森田朝陽(3年・高岡商業)が放ったショートへの難しい打球が相手のファンブルを誘って2者生還。5回までに計12安打で8点を奪った。
投手陣は我慢の継投。先発・鹿田は4回5安打4失点で降板した後、5回から齋藤正貴(3年・佐倉)2回1失点、佐竹洋政(4年・早大学院)が1回1/3を1失点と得点を奪われながらもアウトを一つずつ重ねると、打線が9回表に相手守備の乱れで貴重な追加点を奪って最終的に15安打で9得点。最後は5番手で8回途中からリリーフ登板した伊藤樹(1年・仙台育英)が1回2/3を1安打無失点4奪三振の好投で逃げ切った。
8回途中からリリーフ登板した早大・伊藤樹。最後の打者を見逃し三振に仕留めると全身で喜びを表現した
敗れた慶大は、いきなり4点のビハインドも2回裏に 1死一、三塁から7番・斎藤快太(2年・前橋)がレフト前タイムリーと1回途中からリリーフ登板した9番・森下祐樹(3年・米子東)の左中間を破る2点タイムリー二塁打で3点を返して1点差。しかし、2番手以降の投手も踏ん張り切れず、3回裏に5番・山本晃大(4年・浦和学院)のタイムリー内野安打、7回裏には8番・宮崎恭輔(3年・國學院久我山)のタイムリー二塁打で追い上げたが、あと一歩届かず。リーグ戦デビューとなった清原正吾(2年・慶應)は代打で凡退。4回裏2死満塁の場面で4番・萩尾匡也(4年・文徳)が見逃し三振、8回裏2死二、三塁では5番・山本が空振り三振に倒れたことも響いた。試合後、「正直、まだ負けを受け入れられないというか、受け入れられない気持ちです」と主将の下山悠介(4年・慶應)。優勝を逃した悔しさを後輩たちに託す形となった。
優勝を逃した慶大ナイン。最後まで諦めずに戦い抜いたが、あと一歩届かなかった
■早稲田大vs慶應義塾大2回戦
早大 402 020 001=9
慶大 031 010 100=6
【早】鹿田、○齋藤正、佐竹、原、伊藤樹-印出
【慶】●外丸、森下、前田晃、橋本達、渡部淳-宮崎
本塁打:早大・印出《1回満塁》
◎早稲田大・小宮山悟監督
「早稲田も慶應も、この早慶戦には特別な想いがある。意地と意地のぶつかり合い。彼らの胴上げを見るものかと、そういうつもりで戦って、それを達成できて良かったです。最初に明治に2連敗した時に、残りを6連勝したら奇跡が起きる可能性があると話をした。そこを目指して一つ一つ勝ちを拾って、最後は本当にいい形で終われた。あと1勝届きませんでしたけど、優勝と同じくらいの価値がある。(早慶戦で)勝ち点をただ獲るだけでなく連勝して終えたということは本当に誇らしい。監督を4年やって8シーズン、8勝というのは一番勝っている。いいチームが最後に出来上がったなと思います」
◎早稲田大・中川卓也(4年・大阪桐蔭)
「キャプテンとしていろんな失敗をして、試行錯誤しながらやってきて、最後にこういう結果を手にして、周りから『キャプテンありがとう』と言われた。しんどいことや悩むことはたくさんあったんですけど、最後にいいチームができたと思いますし、監督からもそういう言葉をもらえて嬉しく思います。自分が入学した時に思い描いていた4年間とは180度違う、かけ離れたものでしたけど、だからこそいろんな経験をできましたし、培ったものがあると思う。野球人としても1人の人間としても大学4年間で成長させてもらった。悔しさもそうですけど、その経験を社会人野球で活かして行けたらと思います」
◎早稲田大・蛭間拓哉(4年・浦和学院)
「個人の結果としては苦しかったんですけど、チームとしては春5位の悔しい思いからチームが一つになってここまで来れたので、監督さんをはじめ、ベンチの選手たち、周りで支えてくれた方々に感謝したい。早稲田に入って様々なことを学んで、監督さんからは1球の大切さ、準備の大切さを学ぶことができた。早稲田大学野球部を出たということを自分は誇りに思うので、ここで学んだことをプロの世界でも活かして行きたい」
◎早稲田大・印出太一(中京大中京・2年)
「(初回の満塁本塁打は)打ったのはスライダー。スライダーがいいピッチャーなので前日からしっかりと準備していた。カウント的にも(スライダーに)張ってはいました。4年生の方々とは、今日勝てば最後の試合になるので、何とか2連勝していい形で引退してもらいたいと思っていましたし、そこでああいう1本が打ててホッとしましたし、最後に4年生とこういう試合ができて本当に嬉しいです。これから4年生の方々が残してくださったものをムダにしないようにやって行きたい」
◎慶應義塾大・堀井哲也監督
「追い上げる展開になった中で何とか1点ずつ積み重ねて行ったんですけど、どうしても失点の方が先行してしまって追いつかなかった。(優勝を逃して)このカードで勝ち点を取るか取らないかで、まさに天国か地獄でした。とにかく選手たちはよく頑張ったけども、結果は残念だったということです。(初回4失点の展開は)重い4点でしたけど初回でしたし、しかも2回に3点取った。その時点では振り出しかなと思いましたけど、その後が後手後手の展開になってしまった」
◎慶應義塾大・萩尾匡也(4年・文徳)
「(優勝を逃して)今は言葉にするのは難しい。でも最後の1球まで諦めないという気持ちは貫き通した。僕個人としては最後の2戦でチームに迷惑をかけてしまって申し訳ない気持ちです。それでもみんなと戦えましたし、後輩たちがまたこの想いを背負って戦ってくれると思います。でもやっぱり、スタンドのみんなと喜ぶということをイメージしてこの1週間やってきていたので、それができなくて申し訳ないという気持ちです。(戦後16人目の三冠王獲得に)春に二冠だったので、この秋が始まる前に三冠を獲りたいということを周りには言っていなかったですけど、自分の心の中では思っていた。それが達成できたことは良かったですけど、それ以上に勝ちに繋がる一打を打ちたいと思ってこの1年やってきたので、それが最後にできなかった。(4年間を振り返って)先輩、後輩、本当に周りに恵まれてここまで成長できた。監督にも頭が上がらないですし、最後に胴上げしたかった。(来年はプロ選手)最後の2戦でも課題が出ましたし、得意のピッチャーと苦手なピッチャーがある。プロに入ってからも課題をしっかり見つめながら成長して行きたい」
◎慶應義塾大・清原正吾(2年・慶應)
「僕自身も本当に悔しいです。何とか早稲田に勝って明治神宮大会まで4年生たちと一緒に練習したかったですし、もっと一緒に野球をやりたかった。自分の打席も情けなかった。申し訳ないです。もう4年生と一緒に野球ができないということが信じられないですし、本当に悔しいです」