ベルダスコを破って、2年ぶりの全仏オープンベスト8進出を決めた錦織圭 満身創痍の錦織圭が、どうにか準々決勝まで辿り着いた――。 ローランギャロス(全仏オープンテニス)4回戦で、第8シードの錦織圭(ATPランキング9位、5月29日付、以下…



ベルダスコを破って、2年ぶりの全仏オープンベスト8進出を決めた錦織圭 満身創痍の錦織圭が、どうにか準々決勝まで辿り着いた――。

 ローランギャロス(全仏オープンテニス)4回戦で、第8シードの錦織圭(ATPランキング9位、5月29日付、以下同)は、フェルナンド・ベルダスコ(37位、スペイン)を、0-6、6-4、6-4、6-0で破り、2015年以来2度目のベスト8進出を果たした。

 錦織のグランドスラムでの準々決勝進出は7度目となり、1930年代に活躍した佐藤次郎の6回を抜いて日本人男子選手では史上最多になった。

「(3回戦が2日越しで)3日連続だったので、もちろん疲れは溜まっています。それはみんなに言えることで相手もそうですし。タフな2試合を勝ち上がってこれたのはすごく自信になります。特に今日は長いラリーも多く、本当にクレーコーター(クレーが得意なベルダスコ選手)との試合だったので、この試合を勝てたのはすごく嬉しいですね」

 こう振り返った錦織を、ダンテ・ボッティーニコーチは「準々決勝に進めて、まずはよかったね」と労(ねぎら)った。

 4回戦は強い風が吹く中で、両者ともにボールをクリーンヒットすることができずゲームメイクに苦心した。

「1セット目は長いラリーを避けようとしてミスしていた部分もあって、ちょっと単調になり過ぎて、彼に(得意の)フォアを打たせてしまった」という錦織は、コートの両サイドへ振られると踏ん張りがきかず手打ちになり、第1セットだけで15本のミスを重ね、わずか28分でセットを失った。

「圭がスロースタートで、最初はベルダスコの動きがよかった。第2セット以降は、圭は深いボールを打って、よりアグレッシブなプレーをした。ベルダスコがナーバスになって、試合の流れが変わったね」

 ボッティーニコーチが指摘したように、第1セットを取ったのにもかかわらず、ベルダスコはメンタルがまったく安定せず、プレーのペースも乱れ始めた。

「第1セットの後、圭はミスが少なくなり、より深く打ち、オープンコートをつくった。僕は思うようにボールを打ち分けることができなくて、多くのミスをした。ボールが短くなり、圭にボールを支配させ、攻撃されてしまった。圭にいいきっかけと大きな自信を与えてしまったね」
 
 中盤以降、ベルダスコがミスを重ねる一方で、「1ポイントずつを戦うことを意識した。なるべく悔いを残してコートを去りたくなかった。今一番できる最大のテニスと努力をコート上で残して終わろうと2セット目から考えた」という錦織は、ベルダスコが見せた隙を見逃さず、随所で我慢強くいいプレーを見せる。特に第3セットの第7ゲームで、6回のデュースの末、5回目のブレークポイントを錦織がもぎ取ったプレーは、勝負の趨勢を決める見事なものだった。

 結局、ベルダスコはセカンドサーブでのポイント獲得率が37%にとどまり、ミスを43本も犯した。錦織はファーストサーブの確率こそ52%といまひとつだったが、ファーストサーブでのポイント獲得率は第1セット46%、第2セット59%、第3セット69%、第4セット88%。セットを重ねるごとに上がっていき、試合が進むにつれてベルダスコは、錦織からのプレッシャーを受け、自分のテニスを徐々に見失っていった。

 ただし、錦織にも46本ものミスがあり、次戦では必ず修正しなければならない。

 準々決勝では、昨年の全仏準優勝者で第1シードのアンディ・マリー(1位、イギリス)と対峙する。対戦成績は錦織の2勝8敗だが、昨年のUS(全米)オープン準々決勝では、劇的なフルセットの末、錦織がグランドスラムでマリーからの初勝利を挙げた。にもかかわらず、ベルダスコ戦の錦織は「自分の記憶が悪くて、(USオープンで)僕は勝ったの、負けたの? ごめんなさい。本当によく覚えていないんです」と”錦織ワールド”を笑いながら披露した。

 もちろん、マリーの方はニューヨークで負けたことを覚えていて、「圭にはUSオープンでは負けているからね。彼はクレーで明らかにいいプレーをする。両サイド(のストロークが)ともに危険で、動きがよくて速い」と警戒感を強める。

 今季不調のマリーはこの全仏で1、2回戦こそ1セットずつ失ったものの、3、4回戦はストレートで勝利を収め、7度目のベスト8に進出した。

「マリーはここ2試合で調子を上げてきています。タフな試合になるでしょうけど、圭がマリーに再び勝って準決勝に進めたらいいね」

ボッティーニコーチはそう期待を口にするが、錦織が自身初の全仏ベスト4に進出できるかどうかは、やはり彼のフィジカルコンディション次第といえるだろう。

「そんなにひどくないけど、少し痛みがある」という錦織は、どこが一番痛むかは語らなかったが、大会前から右手首に不安を抱え、大会中には右肩や腰の治療を受ける場面も見られ、4回戦の会見では、股関節をアイシングしていた。試合を重ねる度に満身創痍になっている錦織は、1日おいて準々決勝を戦うときに、どれだけ回復しているだろうか。錦織のパフォーマンスのカギになるのは間違いない。

「元には戻らないですけど、体をなるべくいい状態にしておきたい。(マリーは)メンタル的にもさらに整えておかないといけない相手。フリーポイントをくれないし、自分からポイントを取りにいかないと、ポイントもゲームも取れない」

 王者マリーに勝つのは、錦織が万全な状態だとしても決して簡単なことではない。厳しい状況ではあるが、グランドスラムの準々決勝で、どれだけ今持てる力を出し切ることができるか、錦織のトッププレーヤーとしての資質が最大限に問われる時を迎える。