10月15日の箱根駅伝予選会。前評判では昨年に続いて1位通過の可能性も高いと見られていた明治大。2年連続で箱根を逃していた大東文化大に1分02秒遅れの10時間41分41秒で2位になり、1月の本戦通過を果たした。チームトップでゴールをした富…

 10月15日の箱根駅伝予選会。前評判では昨年に続いて1位通過の可能性も高いと見られていた明治大。2年連続で箱根を逃していた大東文化大に1分02秒遅れの10時間41分41秒で2位になり、1月の本戦通過を果たした。



チームトップでゴールをした富田峡平(左)だが、早大の井川龍人(右)に最後はかわされ、悔しさが残った

 だが結果発表の瞬間に、選手たちの歓声は聞こえなかった。その理由をチームトップとなった富田峡平(4年)は、「予選をとおらないといけないという思いが強かったですが、できるなら1位がいいと思っていたのでちょっと引っかかった結果でした。チーム内でも誤算はあったし、本来は全員がもっと強いはずなので、本戦に向けて修正していかなければいけないなと思います」と説明した。

 気温は20度を超え、湿度も74%と蒸し暑さもあるなかでのレース。例年のように留学生がスタートから飛び出すのではなく、最初の5kmを14分50秒と抑えめのペースで入り、そこから徐々に上げていくレース展開となった。明大は5km通過で、10人のタイム合計が2位に30秒差をつける1位。10kmではその差を51秒まで広げたが、15kmでは徐々にその差が縮まり41秒差。17.4km地点で早稲田大と大東文化大に逆転され、トップとは25秒差の3位に落ちていた。

「最後の5kmをしっかり上げていくというイメージだったので、5kmと10kmをうまく滑り出した時は、このまま後半もいけば、去年と同じ感じでうまくトップ通過できるかなと思っていました。でも10~15kmでだんだん落ちてきたので、うちの悪い傾向が出てきたかなと思い、ちょっとヒヤヒヤしながら見ていました。(タイムではなく)ゴールの10人目の通過が4番だったのを見た時は5~6位かなと思ったが、全体的によくなかったので。2位通過ができたのは、他の大学も同じように崩れたからだと思います」(山本佑樹駅伝監督)

 想定では主力グループが1時間2分30秒から3分。その次のグループが1時間3分30秒くらいで、第3グループが1時間4分30秒程度というゴールタイムを想定していた。だが結果は1時間2分台がふたりで、それ以降は9位までが4分台。10番目は1時間5分23秒と遅れた。

「想定から遅れる選手が、それぞれのグループからふたりずつくらい出ていた。ちょっと蒸していて後半はしんどかったなとは思うけど、チーム内の順位でも大きく遅れた選手もいるので、全体的にはよくなかった。夏合宿の疲れがある選手が多かったので、最後の調整でキレを出すためにちょっと軽く仕上げてしまい、前半動きすぎてしまったのは、僕の反省点です」(山本監督)

 2020年の箱根駅伝では6位という結果を残し、シード権を獲得。全日本大学駅伝で3位など、2021年の箱根駅伝でも上位を期待されたが、11位でシード権を逃した。そして予選会1位で臨んだ前回も、上位を狙ったものの14位と不本意な結果が続いた。今年は主将の小沢大輝(4年)などが中心になって生活の規律を重視し、朝練習を週2回はアップダウンの多いコースでやるなど、個々の選手が駅伝力をつけることを意識してきた。

 その手応えを感じていたからこそ今回の予選会は、その先も頭に入れて昨年までのようにグループごとに分けた集団走で記録を安定させるのではなく、個々の選手たちに設定記録を伝えるだけで、それぞれが思うように走ることを指示した。

「やっぱり本番では、自分が今どういう状態で、どのくらいの走りができているかを考えないとダメなので、そこを意識させようとしました。集団走を指示するとどうしても『集団の力を借りて』みたいになるので、個人でしっかり行かせたいと。僕がそういう決断をできたのも、選手たちの成長があったと思うし、それをきっかけに成長できる選手たちだという信頼もあったからです。今年は4年生を中心にして生活の規律作りなどもしっかりやっているので、結果を出せればそれがうちのチームカラーに定着しそうな雰囲気もあります」(山本監督)

 チーム上位2名は、1時間02分39秒で日本人3位の10位になった富田に続き、4秒差で11位の児玉真輝(3年)だった。

 富田は「日本人トップ集団で勝負したいと思っていましたが、序盤のペースが速くなかったので、(さらに前の)先頭集団で自分の走りやすいペースでいこうと切り替えました。監督からは集団を引っ張る必要はないとレース前に言われていましたが、自分は引っ張り続けることにも自信を持っていたので、日本人トップ集団になった時も『自分からいったほうが走りやすい』と思い、積極的にいきました。最後のゴールの手前で早稲田大の井川龍人選手にさされたのは詰めの甘さが出たと思いますが、レース展開を考えれば納得できる走りができました」と、地力で動いた走りを評価する。

「富田は3月の学生ハーフで、惜しいところでワールドユニバーシティゲームズの代表を逃す悔しい思いをしたので、日本人トップに対する思いは一番強かったと思います。児玉も箱根の2区が、実家の近くなのでどうしても走りたいと言うので、『2区を取るんだったらチームトップで走らないとないぞ』と話していました。そのふたりが意地を見せたと思います。

 想定外だったのは前回の箱根で9区を走った加藤大誠(4年)で、夏の練習の出来を見れば日本人トップ争いもできるかなと思っていましたが、後半に落ちてしまったので課題が残る走りでした。ただ、下のグループでも新谷紘ノ介(2年)など、大きいレースが初めての選手が頑張ったので、チームの底上げも少しはできているかと思います」

 チームの現状をそう評価する山本監督は、「昨年は予選会トップ通過で少しおごりもあったかなという感じもありましたが、今年は2位でも悔しいので、チームとしてはプラスになったかなと思います」とも言う。

 その思いは小沢主将も同じだ。

「これまでの明治は派手な活躍をする選手が多かったですが、今年は少しずつコツコツやっていくタイプが増えてきたと思う。去年はチームとしても『いけるぞ』という感覚が大きかったですが、今年はチームとしても課題が残る予選会になってしまい、『このままだとシード権を取れない』という危機感が大きくなったと思うので、これからの2カ月半を悔いが残らないようにしていきたい」

 すこし誤算となる予選会にはなってしまったが、逆に選手たちの気持ちは引き締まったようだ。次のレースは11月6日の全日本大学駅伝。そこでしっかり8位以内に入ってシード権を獲得し、勢いをつけるのが今の明大の目標になった。