10月10日の出雲駅伝は駒澤大が突っ走った。2区でトップに立つと、その後は一度も首位を譲らずに大会記録を更新。レース前は大混戦が予想されていたが、2位に52秒の差をつけて完勝した。 一方、2位以下は順位が大きく動き、フィニッシュ時では2位…

 10月10日の出雲駅伝は駒澤大が突っ走った。2区でトップに立つと、その後は一度も首位を譲らずに大会記録を更新。レース前は大混戦が予想されていたが、2位に52秒の差をつけて完勝した。

 一方、2位以下は順位が大きく動き、フィニッシュ時では2位から6位までの5校が1分28秒差のなかにひしめいた。今季は駒大、青山学院大、順天堂大、東京国際大の4校が「駅伝3冠」を目標に掲げており、当然、出雲でも優勝を狙っていた。しかし駒大以外は一度もトップに立てず、青学大は4位、順大は5位、東京国際大は8位に終わった。

そんな優勝を目指すチームを思い通りのレースで上回ったのが、國學院大と中央大だ。



中央大の1年・吉居駿恭(左)と、國學院大4年で主将の中西大翔

 まずは準優勝の國學院大。大会前日の会見で前田康弘監督は、「例年より3区にエース級が集まったという印象です。明日はコース特有の西風で4、5区が向かい風になるという予報が出ているので、そこが非常にポイントになってくるかなと思っています」と話していた。

 上位校の多くは気象予報会社と契約しており、大会当日の気象コンディションを考慮しながら区間配置を決めている。前田監督のいう「西風」は前半区間では追い風となるが、4区と5区では向かい風になる。レース当日、風は強く吹いていた。

 有力校の多くは1~3区に主力をつぎ込んできたが、國學院大はあえて4区を"攻撃区間"として組み立ててきた。4区(6.2km)は出雲6区間のなかで2区(5.8㎞)に次いで距離が短く、スピードランナーが集結する2区よりも"つなぎ"の印象が強い区間だ。そこに前田監督は、9月の日本インカレ5000mで2位に入っている主将・中西大翔(4年)を起用。勝てる区間を作る勝負に出た。

 中西は前回も4区を走って区間2位。5000mの自己ベストはチームトップの13分38秒45で向かい風にも強い選手だ。前田監督は「3区終了時までに30秒差以内なら(4区で)逆転できる」と読んでいた。3区を終えた時点でトップ駒大と52秒差の6位。そこから中西は、駒大の背中には届かなかったものの、32秒前にいた青学大も抜き去って2位まで急上昇した。

 國學院大は5区で中大に逆転を許すも、最終6区で伊地知賢造(3年)が再逆転。3年ぶりの優勝は逃したが、当初の目標である「3位以内」をクリアした。

 確実にレースを進めることを考えれば、中西と1区・青木瑠郁(1年)の区間を入れ替える戦略もあったはずだ。それでも、攻めのレースを決断した前田監督。青木も区間7位と好走したことで、全日本大学駅伝、箱根駅伝に向けての期待がさらに高まった。

 3位の中大は、実に9年ぶりの出場となった。就任7年目の藤原正和駅伝監督は「今年は箱根予選会がないので、2週間ぐらい強化をうしろにズラしました。出雲に100%合うようなことはまずないと思っています」と話していたものの、選手たちは直前のレースで好タイムを連発していた。

 9月中旬に行なわれた日本インカレ5000mで吉居駿恭(1年)が4位、溜池一太(1年)が9位に入ると、1500mでは千守倫央(4年)が2位に食い込んだ。夏合宿の疲労が残るなかで出場した10月1日の日本グランプリシリーズ新潟大会5000mでは、中野翔太(3年)が13分39秒94、吉居駿が13分40秒26、溜池が 13分46秒16の自己ベストをマークしている。

 一方、吉居駿の兄であるエース・吉居大和(3年)は、レース中盤に差し込み(脇腹痛)が出て振るわなかった。それでも「3位以内」を目指した出雲では、前回の箱根1区で驚異的な区間新記録を打ち立てたエースを1区に起用。夏に故障があった吉居大の状態は「7割ぐらい」(藤原監督)だったが、最初の1kmを2分37秒で突っ込むと、集団から抜け出す。中盤以降は苦しみながらも、後続を9秒以上引き離す区間トップで発進した。

 2区・千守は駒大の佐藤圭汰(1年)にかわされるも、区間3位(区間新)と好走。3区・中野は区間7位と苦しんだが3位でタスキをつなげ、4区・阿部陽樹(2年)は区間3位で順位をキープ。5区・溜池の区間2位の快走で2位に浮上した。

 オーソドックスにオーダーを考えると、「吉居兄弟」の区間を入れ替えてもよかった。ただ、兄・大和の状態が万全ではなかったため、弟・駿恭が6区にまわった。今回、1年生で最長区間のアンカーを務めたのは吉居駿ただひとり。國學院大の伊地知に抜かされたものの、区間4位でまとめている。目標の3位以内を達成しただけでなく、今後に向けて期待のルーキーが貴重な経験を積んだのは大きい。

「今回はチャレンジングな戦いをしました。そのなかで3番を確保してくれたのは、強さが備わってきているところかなと思っています」と藤原監督。絶対エースの状態が上がってくれば、全日本、箱根では出雲以上にトップ争いに食い込むことができるだろう。

 次なる決戦は11月6日の全日本大学駅伝。出雲でメダルを獲得した國學院大と中大は伊勢路でも"勝負ポイント"を設けてくる可能性が高い。どんなレースを仕掛けてくるのか注目したい。