【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想! 』】 netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週…
【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想! 』】
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
◆人気薄の馬がほとんど上位に食い込めていない一戦
AIマスターM(以下、M) 先週は毎日王冠が行われ、単勝オッズ3.0倍(1番人気)のサリオスが優勝を果たしました。
伊吹 本命視しておいて言うのも何ですが、まさかこんな形で勝ち切るとは……。好スタートを決め、道中はインコースの6番手を追走。コースロスのない競馬ではあったものの、ゴール前の直線で馬群がバラけず、残り400mの地点を過ぎてもまだ「……これ、抜け出して来られるのかな? 」というポジションにいたのです。
しかし、ノースブリッジ(5着)とポタジェ(6着)に挟まれながらも脚を伸ばし、ダノンザキッド(3着)の後ろをついていった結果、残り200m地点のあたりでようやく突き抜けるための進路を確保。ここからまたダノンザキッドとジャスティンカフェ(2着)に挟まれたのですが、間を割って力強く抜け出しています。最後の最後まで冷静に捌き切った松山弘平騎手も、まったく怯むことなく鞍上の指示に従って伸びたサリオスも、お見事と言うほかありません。
M サリオスは2020年に続く自身2度目の毎日王冠制覇。勝ち時計の1分44秒1はコースレコードです。
伊吹 しばらく勝ち切れていなかったとはいえ、2020年のサウジアラビアRCで東京芝1600mの2歳コースレコードを叩き出している馬ですし、同年の朝日杯FSを勝った時の1分33秒0も当時のレースレコード。稍重くらいまでなら難なくこなせるタイプではあるものの、やはり本質的にはこれくらいの速い時計で決着するような馬場や展開が合うのでしょう。
M サリオスは前走の安田記念も勝ったソングラインとタイム差なしの3着でしたね。完全に復調したと見て良いのかもしれません。
伊吹 少なくとも、私はそう思っています。2020年のマイルCS(5着)から2021年のマイルCS(6着)まではどのレースもやや物足りない内容でしたが、4走前の香港マイル(3着)は日本調教馬の中で最先着だったわけですし、3走前の高松宮記念(15着)は好走馬の傾向からも苦戦が予想できたレース。今回が素晴らしい勝ちっぷりだった分、再び注目が集まってしまいそうな点は気になるものの、次走以降のビッグレースでも相応に高く評価したいところです。
M 今週の日曜阪神メインレースは、3歳牝馬三冠競走の最終関門、秋華賞。昨年は単勝オッズ8.9倍(4番人気)のアカイトリノムスメが優勝を果たしました。その2021年は単勝オッズ1.9倍(1番人気)のソダシこそ10着に敗れてしまいましたが、単勝2〜4番人気の3頭が1〜3着を占め、3連単の配当は2万6410円どまり。基本的には堅く収まりがちというイメージがあります。
伊吹 3連単の配当が10万円を超えたのは、現在のところ2013年(23万3560円)が最後ですからね。過去10年の単勝人気順別成績を見ても、人気薄の馬はほとんど上位に食い込めていません。
M 単勝1番人気馬10頭のうち5頭が4着以下に敗れているとはいえ、単勝2〜3番人気の馬や単勝4〜6番人気の馬はそれなりに健闘していますね。
伊吹 より詳しく見てみると、単勝5番人気以内の馬は2012年以降[10-9-4-27](3着内率46.0%)、単勝6〜10番人気の馬は2012年以降[0-1-5-44](3着内率12.0%)、単勝11番人気以下の馬は2012年以降[0-0-1-74](3着内率1.3%)となっていました。メンバー構成次第ではあるものの、極端に前評判の低い馬は疑ってかかるべきでしょう。
M そんな秋華賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、スターズオンアースです。
伊吹なるほど、そう来ましたか。Aiエスケープはどちらかと言うと“穴党”ですが、上位人気馬を推してくるケースもたまにあり、そういったレースは得てして堅く収まりがち。「狙い甲斐のある伏兵が見当たらない」という結論に達したのだと思います。
M ご存じの通り、スターズオンアースは今春の桜花賞とオークスを制している馬。オークス後に骨折が判明したこともあり、今回は“ぶっつけ本番”での参戦となるものの、さすがに妙味あるオッズがつくとは思えません。
伊吹 ただ、単勝人気順別成績の傾向を考えると、ギリギリのところまで絞った人気サイドの買い目で勝負するというのは、ひとつの手だと思うんですよね。Aiエスケープの見立てを踏まえたうえで、近年の秋華賞における上位入線馬の傾向から、スターズオンアースの好走確率を見積もっていきましょう。
M まずはどのあたりのポイントに注目すべきだと思いますか?
伊吹 直近のパフォーマンスですね。過去10年の連対馬すべて、さらに過去10年の3着以内馬30頭中28頭は、前走の着順が5着以内でした。
M 大敗直後の馬はほとんど好走例なし。このあたりが、堅く収まりがちな最大の理由かもしれませんね。
伊吹 おっしゃる通りだと思います。たとえ実績上位であっても、前哨戦で大きく崩れた馬は過信禁物と見るべきでしょう。
M 逆に、スターズオンアースのような、春先のビッグレースから直行してきた前走好走馬は信頼して良さそうです。
伊吹 あとは、上半期の実績も素直に評価したいところ。2017年以降の過去5年に限ると、オークスで上位に食い込んだ馬は堅実でした。
M こちらは3着内率に大きな差がついていますね。
伊吹 なお、オークスにおいて5着以内となった経験がない、かつ“同年8月以降、かつJRA、かつ芝1700m超、かつ2勝クラス以上のレース”において1着となった経験がない馬は2017年以降[0-0-1-57](3着内率1.7%)。いわゆる“上がり馬”を評価する際は、ここ2か月の戦績を重視するべきでしょう。
M 面白そうな“上がり馬”も何頭かいますが、スターズオンアースはオークスを完勝しているわけですし、無理に嫌うのは悪手かもしれません。
伊吹 さらに言うと、近年の秋華賞は先行馬が期待を裏切りがちでした。
M スターズオンアースはオークスの4コーナー通過順が8番手。こちらの条件も問題なくクリアしていますね。
伊吹 ちなみに、前走の4コーナー通過順が4番手以内、かつ父がディープインパクト以外の種牡馬だった馬は2017年以降[0-0-0-23](3着内率0.0%)。アートハウス・スタニングローズらがこの条件に引っ掛かっている点は気掛かりです。
M スターズオンアース自身が強調できるプロフィールの持ち主であるうえ、ライバルと目される馬たちに明確な不安要素があるとなると、逆らうメリットは皆無と見て良いのではないでしょうか。
伊吹 正直なところ、特別登録が発表された先週の段階で私もそう考えていました。そのうえAiエスケープも有力と見ているわけですから、もうこの馬の評価に時間をかける必要はないと思います。妙味ある対抗格を選ぶか、総点数を思い切り絞り込むかで、なんとか利益を捻り出したいです。